見出し画像

自分の中の別人について

 解離性同一性障害。いわゆる多重人格。というものではなくて、どちらかという「天使と悪魔の囁き」とか「もうひとりの自分」とか「本当の自分」といった表現が近い、ああいうの。
 一体、どれくらいの人がそういう自分の中の別人がいるのだろう。と、そういう疑問。


 別人といっても、タイプがある。

 前述のように、自分の中にある良心と悪い心を外在化させるべく創られる天使と悪魔や、精神の防御機能としての別人格。たとえば、怒りや哀しみなどの強い感情を担当させるとかいうのがあると思う。あとは、ペルソナと言われるような自分の別の側面を人格として形成したり、自分の中での思索をまとめるにあたって、感情的な自分や論理的な自分をベースにして架空人物を作って整理しやすくするといったものもある。
 いや、心理学等を学んだわけではないので適当なんだけど、大体伝わると思う。

 どういったものであれ、共通するのはその人格が主人格である「わたし」とは別の意思があるという漠然とした感覚ではなかろうか。ところが完全に別では、これが成立しないはずなのだ。
 極端なはなし、頭の中でその人格が喋るその言葉は全て主人格である「わたし」が紡ぐことの出来る言葉でなくてはならない。自分が理解できない言葉を別人格たちは喋ることはないと考えられる。

 そして、その人格たちが喋るその理由は主人格の「わたし」の思索の補佐や補完。あるいは、高度に形成された人格ならば、自動化された思考プロセスのベルトコンベアにスイッチを入れるかのように、自動的に結論を導き出せるようにもなっているのかもしれない。

 ちょっとまとめよう。

 別人格の形成は主人格の思考の補佐。そして、自分が理解できる言葉で、多くの場合は会話形式でその別人格を認識している。ということは、その別人格がもたらす役割というのは下記のように分類できる。

・権限委譲タイプ
 多重人格
・相談タイプ
 天使や悪魔
・客観視点タイプ
 キャラクター、思考や感情の概念化


 権限委譲タイプは、精神の防御に相当する行為と思われる。適応しがたいストレスにさらされたときに、その後の思考や行動は「わたし」の本心ではなく別人格がコントロールしたこと。と、予防線をはっているのに近い。「わたし」ではアンコントローラブルだから別人格に託して、自分の心を守りたい。あの人格が出てしまったなら、こういう結末になるのは仕方ない。というように考える余地を作るのだ。


 相談タイプは、もう少し自分というものがある。多くの場合は二元論的に、行動や思考の方向性を決めていて、その方向性で問題がないかを検討している段階だ。正直、自問自答に近いので、これをわざわざ別人格とする必要があるかは分からないが、この感覚がある人は多そうだ。


 最後に、客観視点タイプ。
 例えば、自分が感情をベースに物事を決めるクセがあったとして、それでは困る場面では論理的思考が得意なキャラクターに判断を仰ぐといったケース。これは、自分の中の論理的思考を意識してその部分についてのみコントロールを与えているという状況だ。余計な感情に引っ張られること無く結論を導いてくれる。ただし、その結論に従うかどうかは強制されない。ときに、複数のキャラクターを作り出し、議題に沿って自由に議論させたりもする。これができるのは、自分を客観的に見て、その要素を分離して把握しているということだ。


 天使と悪魔の囁きの描写というのは小説なんかでも多いし、それを受け容れられる傾向にあることから、多くの人がこの別人を持っていたり意識自体はしていなくてもそういう傾向は観念できるということなのだろう。つまり、別人を持っている人はそこそこいると考えられる。
 ただ、それが冒頭でも出した多重人格とかいうものにまで”洗練”された人はそう多くないのかもしれない。自動的に違う人格が出てきてしまう場合は別だが、自在にコントロール出来る人というのは、自分自身を客観的に見ることが出来るということなので、ある程度賢くなくてはいけないし、最終的には主人格の「わたし」に内包されるわけなので、意思決定力も持ち合わせているということだ。(そうでなければ、他人に判断を仰いで他人に意思決定させたほうが合理的だし、負担も少ないはずなのだから。)


 このnoteもそうだが、ネット上などの生身の身体と隔絶された世界ではそういった「別人」が登場しているという人も多いのだろう。私が好んで読んでいる方にも、そういった傾向が認められる人がいる。私も含めて、だ。
 そういった人に触れるのは楽しい。いや、その人に「別人」がいるかや、note上で表出しているのが主人格か「別人」かどうかは私が判断出来ることではないのだけれど、私がそう感じたらそれでいいのだ。私の中では。

 つまり、その人の色んな側面が垣間見れるnoteは楽しいってこと。結論はこれだけさ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?