『Another アナザー/綾辻行人(角川書店)』を読んで(2020年10月25日)
皆様、こんにちは。森貴史です。
いつも「スキ」をくれたり、コメントをして頂ける皆様、本当にありがとうございます。
本日は、「僕の好きな本トップ10」の中でも特に大好きな一冊をご紹介します。
といっても、今作は界隈の中では知らぬ者はいない程の名作。
果たして僕がレビューを書いていいのか……と思いましたが、勇気を出してみました(笑)
読むキッカケになってくれたら、嬉しいです!
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僕が本書と出会ったのは、高校生のとき。
当時は読書にそこまで強いこだわりもなく、単純に「分厚い本だな」と月並みな印象しか抱いておらず、
「時間がかかりそうだし、読むことはないだろうな。でも部屋に飾ってあったらオシャレでカッコいいかも」
程度にしか思っていませんでした。
それがいまでは、
〈僕の好きな本〉……いや。
〈推理小説の価値観を変えてくれた本〉の
一冊として、自宅に〝読む用〟〝貸す用〟
〝保存用〟の三冊が自宅に保管してあります。
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病気療養のため、亡き母の実家に移り夜見山北中学に転入してきた榊原恒一は、不思議な存在感を持つクラスメイト・見崎鳴に惹かれると同時に、三年三組が醸し出す奇妙な違和感を覚えていた。
そんなある日、クラスメイトの一人が凄惨な死を遂げると、その教室で起きていた「厄災」の正体を知ることになるーー。
というお話。
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2010年版『このミステリーがすごい!』国内編で三位にランクイン。
本作を原作にした漫画作品、アニメ化、さらには実写映画化。その四年後には続編となる「Another エピソードS」が発売されるという歴史が物語るように、
今作は本格派推理小説作家・綾辻行人先生の代表作となりました。
今でも、
「ホラーミステリーといえば?」
「ティーン作品で、ちょっぴりグロテスクな作品といえば?」
「美少女探偵が活躍する推理小説といえば?」
という問いに対して、本作があげられることも多いのではないでしょうか。
一体この話の何が、読者を魅了するのか。
その謎は、大きく分けて二つあると考えています。
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一つは【ミステリー小説としては珍しい、〝とある〟謎解き】
推理小説といえば、警察沙汰もしくは登場人物を悩ませる大小関係無しで事件が発生し、それを解決するために、主要の探偵(役)がそれを解決するために奮闘する。
それを読者は、〈神の視点〉でワクワクしながらあくまで傍観者として楽しむ。もしくは登場人物に自分を投影させ、その事件の真相究明をエンタメ的に楽しむ。
今作も例に漏れず、事件が発生し、その謎を解くため主人公達が知恵をふるわすのですが、従来の推理モノとは違い、
《クラスの中に紛れ込んだ〝死者〟を探す》
というものだから、興味深い。
まだ読んでない人のためにこれ以上は割愛するが、作品を読み進めれば読み進める程、
「主人公は、その〝犯人〟を見つけたとき、どうやって決着をつけるのか?」
と、結末への期待がドンドン高まっていくのです。
そしてもう一つ、これこそが今作の醍醐味。
【ここまで切ない〝叙述トリック〟があったのだろうか?】
すなわち読者の先入観や思い込みを利用して、一部作中の描写を曖昧にすることで読者がミスリードしてしまう。いわゆる「信頼できない語り手」というヤツです。
〝映像であれば一目瞭然の情報を、文字にすることで読者を上手に騙した作品〟に触れたのは初めてだったので……見事に僕も騙されてしまいました。
その結果、この作品は印象に強く残っているし、結末を知っていてもあの心にズシンとくる感覚を何度も味わいたくて読み返してしまうのです。
(アニメ化すると聞いたとき、不安でしたね)
是非皆様、一読してみて下さい。
ページ数が多過ぎるなんて、途中から思わなくなります。むしろ「足りない」なんて、ありえない言葉が口から漏れ出してしまうかもです。