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【産業医からのメッセージ】2021年11月『働くこと、働き方を見直す』

精神科産業医 益子雅笛  with リフレクソロジスト 原三奈子
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今月は、

脳・心臓疾患の労災認定基準が改正されたことについてお話ししています。

過労死や過重労働は社会問題となっていますが、労働者が脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患や心筋梗塞などの心臓疾患を発症した場合に、それが労働災害に該当するかどうか認定基準が定められています。前回の改正から約20年が経過しており、最新の医学的知見をふまえて見直しが図られたようです。

改正のポイントは、

■長期間の過重業務の評価に当たり、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価して労災認定することを明確化

■長期間の過重業務、短期間の過重業務の労働時間以外の負荷要因を見直し

■短期間の過重業務、異常な出来事の業務と発症との関連性が強いと判断できる場合を明確化

■対象疾病に「重篤な心不全」を追加
<厚生労働省HPより(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21017.html)>

となっていますが、

これまで重要視されていた労働時間だけでなく、労働時間以外の負荷要因も含めて、総合評価してより柔軟に判断されることになること、が最も重要視されるポイントと思われます。

このように改正されたことの本質を考えると、
・会社は労働時間はもちろん、それ以外の負荷要因についても、しっかりと把握し、管理する必要があること
・会社のみならず、労働者一人ひとりが負荷要因となることについて理解し、意識をもつ必要があること
が大事であると思います。

11月は、「過労死等防止啓発月間」でもあります。
これからの働き方、自分の健康を大事にしながら働くということについて、
いま、このタイミングでしっかりと向き合ってみましょう。

今月のキーワードは 『働くこと、働き方を見直す』 です。


☆☆☆<文字版>☆☆☆

からだの広場
健康に関わる4名のナビゲーターが日替わりで15分の番組を皆様にお届けします。
毎月、月初にお送りする「産業医からのメッセージ」
パフォーマンスを上げて働くことをエンジョイできるよう、いま気を付けたいことについてお話しします。


【 益 】おはようございます。

【 原 】はい。おはようございます、益子さん。

【 益 】はい、原さん。

【 原 】お世話になっております。

【 益 】こちらこそ。よろしくお願いいたします。

【 原 】11月になりました。

【 益 】はい。

【 原 】七五三とかの季節かな。

【 益 】あっ、そうですね。
近くの神社にもたくさんいらっしゃってますね。

【 原 】宣言解けたから良かったなって感じですね。

【 益 】いいですね~本当ですね。

【 原 】こういった行事は、先延ばしできないじゃないですか。
やっぱりその時に祝ってあげるっていうのが思い出になっていくはずなのでね。

【 益 】はい、いい季節です。

【 原 】本当に。着飾ってお着物着てっていうのもいいですよね。

【 益 】あの~どんどんお着物着てもらいたいなと思います。

【 原 】そうですね。
着物、これ一つ自分の中でやりたいことのリストの中に入っていることなんですよ。
着物を着て気軽に外出するっていうのをいつかやってみたいなと思いつつ、結局何も出来ないまま今に至るっていう。

【 益 】着物はね~気慣れてないとなかなか身構えちゃう。

【 原 】そうなんですよね。
本当はもっと気楽にいけるはずなんですけどね。
是非そういうのもまだまだ人生長いので、楽しんでいきたいなと思います。

【 益 】そうですね。

【 原 】今月、産業医のメッセージとしては、どのようなことをお伝えされますか?

【 益 】はい。時期的にはもう涼しくなってきたし、宣言の解除があって動きだす時期にも入ってきましたけど。
9月にですね、労働災害~

【 原 】労働災害。

【 益 】働くことによる健康被害が出てしまうことを労働災害と言うんですけど、労働災害って認定されるためには基準があって、怪我とか病気とかした際に申請をして、その基準をもとに判断されて認定されるかどうかっていう仕組みなんですけれど。
この中で、脳疾患とか心臓疾患の労働災害の認定基準っていうのが今までもあったんですけど、これの一部改正が9月にあったんです。

【 原 】あぁ、そうなんですね。へぇ〜!

【 益 】内容は、もともと脳疾患~脳梗塞とか脳出血とか。

【 原 】すごいストレスかかってってイメージがありますが。

【 益 】あと心臓疾患だと心筋梗塞とか。もともと動脈硬化とか、血圧が高いとか、いろんな基礎疾患があって、そういうところに何らかの負荷がかかった時にそういう病気が発症しますよと言われているところなんですけど。
この、どんな負荷がかかったかっていうものがこの認定基準に入ってるんだけど、そこの一つが労働時間、いわゆる過重労働ってやつです。長時間労働ね。これが大きく負荷として、からだにかかった時に発症してしまうリスクが上がりますよということが言われていて、
時間でいうと1ヶ月で残業が100時間超えているか、あるいは過去2ヶ月から6ヶ月の平均が80時間を超えてるとか。

【 原 】80時間という数字はよく聞きますね。

【 益 】結構大きいんですよ。

【 原 】大きいですよね。

【 益 】これがあると、その時に起こった疾患、発症した要因の中に明らかにこの就労の負荷がかかってると評価されますよっていうのが今まで(もあって)。
あとは、もちろん労働時間以外の要因も、例えば出張が多いとか。

【 原 】結構多いですよね。単なる時間だけでなくて出てこないところって結構ありますよね。

【 益 】ありますね。

【 原 】結局 移動時間とかも~業務のために移動してるじゃないですか。

【 益 】拘束されてますからね。

【 原 】そうですね。
業種によっては、例えばコンサル業ですとか、あとは技術的なサービスを行うような業種だとその移動時間っていうのも対価として請求するっていう形にしているところもありますね。
そうすると当然勤務時間としてとられているところもあるかと思いますが。

【 益 】そうですね。
そういう勤務に要している時間も含めて、あとは就労時間以外、労働時間以外の要因も。

【 原 】そうですよね。

【 益 】ただ、時間が(負荷要因として)大きかったんです、今まで。

【 原 】なるほど、なるほど。

【 益 】明らかにね。

【 原 】その業務っていわれる時間のみっていう感じですよね。

【 益 】労働時間ね、残業もね。

【 原 】それに付帯する、さっきおっしゃったような移動時間とか、準備の時間ってあんまりカウントされなかったってことですよね。

【 益 】はい、そうです。
なんだけど、今回の改正で、時間はもちろん大事なんだけど、時間が100時間とか80時間じゃなくても、労働時間以外の要因も含めて総合的に判断されますっていうような主旨になったんです。
だから、必ずしも労働時間が長くなくても、残業時間が長くなくても、他の要因と絡んでいれば労災と認定されますよっていう流れに、内容が変わってきたんです。

【 原 】あぁ、なるほど。

【 益 】この労働時間以外の要因としては、例えば勤務と勤務の間、前の日夜遅くまで勤務しました。残業で終電になりました、まだ仕事が終わらないと言って朝早くから行きましたっていうと、その間の時間が少ないですよね。これも負荷要因として評価されることになったんです。

【 原 】なるほど。
当然、残業が多い業務の方はそういうことはよく起こりうることですし、あとシフト勤務の方も意外と、夜勤じゃないですけど次の日勤の間がこれしか空いてないの?っていうこと聞きますからね。

【 益 】そうなんです。

【 原 】これもやはり加味されるっていうことですね。

【 益 】いわゆるインターバルがどれぐらいっていうのが重要視されるようになってきました。

【 原 】大切なことだと思います、すごく。

【 益 】なので、そういういろんな労働時間以外の要因も含めて評価をされて、ちゃんとそういう部分も管理をして下さいね~法律が変わったということはそれがリスクになりますよっていう。
もうデータが出てきてるということと、あとはそういう管理をして下さいねっていうメッセージでもある訳ですよ、法律の改正って。

【 原 】これは、単に管理者として管理側が知ってることというよりかは、働いてる人も知っておかないといけないことですね。

【 益 】はい、おっしゃる通りなんです。
会社側はちゃんとそこまで管理をして見ておかなきゃいけないと同時に、働く方一人ひとりがそれをわかってないと。

【 原 】そうですよね。
そうしないと、結局ただ言われてるからはーいみたいな感じではなくて、こういう状況でさらに自分達が働きやすい環境を作っていくには、法律が変わったよ、さらに労働者に寄ったような法律の改正ということのようですから、そこを理解したうえで自分がこう働きたいっていうことを雇用主側に意見として言うっていうことも必要なんじゃないかしらって気がしてきました。

【 益 】そうですね、そうなんです。
だから、業務として、そういう業務がそもそも見直し(が必要で)、そういう働き方になっちゃうこと自体が何かあった時に大きな損失、それはまずご本人の健康という損失にもなるし、会社にとっても損失ですよね。

【 原 】そうですよね。長期的に見たら、本当にその通りだと思います。

【 益 】なので、皆がわかってないといけないっていうことと、そういう風に出てきたということは世の中がそういう風な流れに~働き方改革と言われてもう数年経ちますけれど、もう本格的にそういうことを見直して、
で、しかも今回コロナ禍があって、否が応でも皆さん自分のこと働くこと、働き方の変化を余儀なくされた方も多いと思うんです。
なので、こういう時にこういうことが起こったというのは、起こるべくして起こってきたことなのかなと、単純に内容だけの話じゃなくて思ったので。

【 原 】はい、そうですね。

【 益 】これを機会に、皆さんお一人おひとりが「働くことって何なんだろう」「自分にとって、自分の生活 あるいは人生にとって働くことってどんなことなんだろう」「自分の大事にしたいもののためにとはいえ、やっぱり働いていかなきゃいけないとすれば、どうやったら気持ちよく働けるだろうか」「自分が選んだ仕事に対して、限られたいろんな制約がある中で、自分のからだを守りながらどうやって働いていくのがいいんだろうか」って、いま一度、ちょうどこの動き出した時だからこそ、今、考えておく必要があるかなと。

【 原 】そうですね。
これは、結構大きな変化ではないかなという気はしますけどね。

【 益 】はい。

【 原 】今まではサービス残業じゃないですけど、さっきの移動の時間とか、そこはカウントされてないような感じがありましたけど、そこも加味されるっていうところは大きいですし。

【 益 】そうですね。

【 原 】皆さんがそこを意識しつつ、より生産性が上がる働き方~生産性が上がるっていうと、なんていうんでしょう、すごく雇い主側の金とるぞみたいな風にしかとれないんだけど、でも生産性が上がるって幸福度が上がることとちょっと近いと思うんですよ、実は。

【 益 】そうですね、そうですね。

【 原 】達成感もあると思うし。

【 益 】はい、おっしゃる通りだと思います。

【 原 】そういう風に皆さん理解をして、それで じゃあ幸せ度を上げるためには、働く環境を今まで個人が努力すればなんとかなるっていう風に頑張ってたところを、個人のレベルじゃなくて皆で無理しないやり方を見つけようっていう、それぞれまた新しい知恵を出し合ってやっていければいいかなという感じはしますけどね。対話も生まれるしね、それでね。

【 益 】うん、そうです。
その仕事ってその方が一番よくわかってる訳じゃないですか、現場で働いていればね。意外と会社って、業務として与えていても、本当に働いているのはその方だから。
その方が、働いていることによってどんなことが良くてどんな不都合があってって、どんどん挙げていく必要があるし。
とはいえ、全部が認められるかどうかってまた別の話なんだけど。
ただ、これからは会社が例えば100のものを社員さん100人いたら1ずつですっていうベクトルの向きだったものが、今は皆さんの1があって まとまって100 、そういう時に2の人も3の人もいるかもしれないし。そういうものが全部まとまって会社がいくつだっていうような、向きが逆になってくると思うんですね、考え方として。

【 原 】なるほど、なるほど。
会社が分配して分け与えるっていう考え方もありだけど、そうじゃなくて皆から持ち寄って、あっこんなすごいのが出来ちゃったねっていう感覚がより出てくるといいかなという。
だから、今回の法改正はひょっとしたら それをサポートしてくれるような改正かもしれませんね。

【 益 】単純にそういうことが起こらないようにっていうだけの見方もできるんだけど、でもそれだけではなくて、じゃあこのタイミングでこれが起こったっていうことは、もうちょっと本質的に見た時に、どんなこと大事にしていくといいんだろう、なぜこんな風に法律の改正をせざるを得なくなったんだろうっていうところまで深く皆さんが感じていただいて、そのうえでご自分が気持ちよく働けるためのいろんなことを、この機会に、ちょうどいい機会だと思うので、考えていただけたらなぁと思いました。

【 原 】いいですね~じゃあ、今日のワード。

【 益 】そこで 今月のキーワードですね。
『働くこと、働き方を見直す』というキーワードにしたいと思います。
是非このキーワードで、1 ヶ月、皆さんいま一度。

【 原 】そうですね。
この、テレワークが増えたりとかして働き方を見直すっていうことがたくさん、皆さんそういう局面に何度も何度もこの2年間ぐらいで接してらっしゃると思うので、
さらに そこに踏み込んだ形になってきている改正ですから、これを機会によく皆さんで話し合いをされるのが一番いいんじゃないですかね。

【 益 】はい。
是非皆さんが感じたことを職場で出せる、語り合える場があるといいなぁと思っています。

【 原 】そうですね。

【 益 】そういう機会がね。アンケートでもいいし。

【 原 】衛生委員会でも、これをきっかけに皆さんとの対話をやっていただけるといいかなという気はしますね。

【 益 】そうですね。
そういうことをしていただけるといいのではないかと思っています。

【 原 】はい、ありがとうございます。

【 益 】ありがとうございます。

【 原 】
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【 益 】はい、お待ちしてます。

【 益 】からだは丈夫でキレイに。

【 原 】こころは豊かで穏やかに。

【 益 】そして自分らしく輝くように。

【 原 】今日も笑顔で良い一日を。

【 益 】ご安全に!

【 益 】【 原 】行ってらっしゃ〜い!

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