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日常の切り取り方

向田邦子、この人の中にはどういうフィルターがあったのだろう?

読書会では同著者の別の本、『女の人差し指』を紹介した。これらの本にまとめられたエッセイの数々は、読者を飽きさせない。

日常の些細な風景がこの人のフィルターを通すと、不思議なまでにおもしろおかしな世界に化けるのだ。

おっちょこちょい、注意力散漫、整理整頓できない…。自らの様々な特徴を示しつつ、自らの身の回りで起きた出来事、気にしていることをこれでもかと書き連ねられている。よくもまあ、これほどまでにネタが見つかるものだ、と言いたくなる。

エッセイを上手に書く人たちは、日常の光景を見事に切り出す。何となく、絵や写真等にも通じるところがあるようにも思える。あれやこれやと練りまわしたネタではなく、日常に転がっているネタを上手に切り取り、加工する。加工といっても、あれやこれやと手を加えるのではなく、ほんの一手間。その結果が素晴らしいものになる。

着眼点や直感、そういうものが少し違うだけで、こうもまあ違う風景が見える。違う光景を描ける。

そういうレンズが欲しいなと思いつつ、そのレンズを手にするには、たぶん色々とやってみる他あるまい。時には人に聴きつつ、時には滅茶苦茶ともいえる行動もしつつ。そして、時には「常識」をひっくり返しつつ。

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