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読書会レポート”好きだけど人には紹介しづらい本”を紹介し合う

先週末、いつもの通り、月に一回の読書会が開かれた。テーマは「好きだけど人には紹介しづらい本」であった。

このテーマ、なかなかに選書が難しい。好きな本、というのはわかる。ここに「紹介しづらい」が入った途端、急にハードルが上がるのだ。「紹介しづらい」理由とは?ジャンルの面で紹介しづらい?そもそも、誰にも教えたくない?どういう理由が出てくるのか、全く予想だにできないまま当日を迎えた。

当日はさっそく予想外の展開が発生。フリートークしながらメンバーを待っていたのだが、どうもしゅろ氏が来ない。特に連絡もないまま待っているのも何なので主催の竜王に確認してみると、別件により不参加であるという。「その話、わかっているなら先に話しなさいよ!」なんてツッコミつつ、本番開始。


1人目。

紹介しづらい理由:エロ・グロ要素がままある

好きなラノベであり、以前から読んでいる好きなシリーズであるという。しかし、エロ・グロ要素があり、好き嫌いが大きく分かれるであろうということであった。それでも20冊を超えるシリーズになっているというから、中心を成す物語は結構魅力的なものなのだろう。


2人目。

紹介しづらい理由:参加者から総スカン食らいそう…

自己啓発本好きな参加者からの紹介。本人自身が実践してみた結果、入りたい会社にも入れたということもあり、その考え方を知ってほしいということであった。確かにこの読書会のメンバーは比較的自己啓発本を読まない人が多い。その中でもかなり挑戦的な本を紹介してきた。もっとも、毎回似たような本が紹介されている気もするので、本人は「炎上歓迎」なのかもしれない。


3人目。

紹介しづらい理由:デスタムーア誕生シーン以外、紹介する要素に欠ける
         シリーズ通じては尻すぼみ感が強い

私の紹介本である。好きなマンガの1つではある。しかし、先に述べた通り、かなり尻すぼみ感が強い。ドラゴンクエストVIのゲームでの流れを漫画化して描いているのだが、ゲーム中の最初の1/5くらいに5冊かけ、残り4/5くらいは5冊に「まとめた」というようなストーリー展開なのだ。なので、このゲームの世界観を知るにはこのマンガでは明らかに不十分な本だ。

しかし、私が紹介したのは最終巻である。ここではラスボス・デスタムーア戦が描かれている。このデスタムーアが語る自身の誕生シーンは、かなり興味深い。ある意味では「唯一神がいて、その神が人間のような感情を持つ存在であるとしたとき、その唯一神が誕生した後の感情を描いている」かのように感じるのだ。自らしかいない世界、何を思おうが何をしようが、それを共有できるような存在が皆無である世界、そこにある孤独。

そのシーン自体がある種哲学的である。しかし、物語全体を通じて感じるのは、先に述べた通り、「尻すぼみ」なのだ。デスタムーア誕生シーン以外紹介する要素に欠けるのだ。面白いシリーズではあるが、どうしてもいつものテンションで紹介するには力不足の本である。


4人目。

紹介しづらい理由:"舞台"を知っている方が楽しめる
         主人公とモデルのギャップ

菌類額、とくにキノコについて楽しみながら学べるアカデミック・コミックであるという。単純に面白そうに思える。

この本は紹介者によると、この本はこの物語の舞台となっている大学を知っている方が楽しめる、そのような身内ネタが各所に埋め込まれているという。確かに、身内ネタのようなものは紹介しづらい。そのネタで盛り上がろうにも、一方通行的なものとなってしまうのだ。

とはいえ、この本は楽しく学びながら読める、ここについては、誰しもが経験できる部分であるという。ちょっと読んでみようかな。なんて思う一冊だ。

それにしても、表紙に描かれている主人公の姿は”漱石”にしか見えない。


5人目。

紹介しづらい理由:ミステリーなのに、読後モヤモヤ感が残る

最近、花粉症様の症状が出続けているという、ひじき氏の紹介である。まだ、解消とまではいかない様子であった。

この本は青春ストーリーとミステリーを合わせた小説であるという。省エネをモットーとする主人公が、姉の勧めにより入部した古典部。そこで出会った少女える。彼女の伯父が関係しているという事件の真相を探る物語であるという。

この「事件」を解いていくのはいいものの、その過程で新たに「闇」が見えてくるという。その闇はこの作中で解決することはないそうだ。その意味で、「謎は解けても、すっきりできない」というモヤモヤ感が残る。sのため、紹介しづらいという。

シリーズ本のミステリーは「謎は解けても、すっきりできない」要素を持たせていることが多い。『名探偵コナン』『金田一少年の事件簿』はマンガではあるものの、この手の要素を持っている。その感覚があるのが、ある意味当たり前になっていた私にとって、この理由はなかなかに衝撃的であった。

また、ひじき氏はもう1冊投下した。

紹介しづらい理由:主人公がストーカー気質
         描写の生々しさ

氏の敬愛する森見登美彦のデビュー作であるという。その中でも好きな方に含まれる本であるという。もっとも、中には嫌いな本もあるそうだが。

クサれ大学生の七転八倒な生活を描いている面白さがある反面、主人公にはストーカー気質な面があるという。主人公は片思いをしているヒロインの研究資料を作成しているそうで、相当リアルに描いているそうだ。それが紹介しづらい理由であるという。

主人公の特性と描写のリアリティが織りなす「紹介しづらさ」。いやはや、一本取られました。


一通り紹介してきた。エロ・グロ系や誰得、こういうネタに限られそうな気がしていたが、それ以外の理由で紹介される本の方が多かった印象である。

次回はミヒャエル・エンデ『モモ』。少年少女文学の世界的傑作の1つであるとともに、学術やビジネスの世界でも引き合いに出されることの多い物語りである。さて、どういう感想・意見が出てくるのだろうか。すべては当日のお楽しみである。

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