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"日本最北端"への旅①―稚内への旅路―

人生初の北海道。メインの目的地は留萌・旭川であったので、旭川を拠点にして回ることを決めていた。

だが、せっかく、北海道へ行く以上、稚内・宗谷岬へ行っておきたい。その思いもあった。旭川滞在は3日間。先の2か所を巡り、残りの1日は富良野あたりを巡ろうとしていたが、思い切って稚内へ行くか、近場の富良野あたりを巡るかは、北海道へ行ってから決めることにして、北海道へ向かった。

旭川へ到着した日、改札口の近くにあった観光案内所へ行くと、道北の観光案内がたくさん並んでいた。さすが道北の玄関口、旭川。富良野などもあったのだろうが、道北の地名ばかりが目に入った。富良野に比べれば稚内は相当に遠い。しかし、やはり道北の地をしかと見ておきたい。というわけで、富良野プランは次回以降に回し、稚内へ行くことを決めた。

稚内へ行く日がきた。旭川9時00分発の宗谷1号に乗車し、現地へ向かった。稚内まで、宗谷本線で259.4km、到着時刻は12時40分。遠い。可能であればもっと早い時間帯に稚内に着きたかったのだが、特急は9時00発が1番列車であり、その前に普通列車で行こうものなら、旭川6時03分発に乗らなければならない。それでいながら、稚内は12時07分着。3時間早く出て30分しか早く着かないのでは、あまり意味をなさない。それで、9時00発の特急に乗ることにしたのである。

稚内へ行く道中、サロベツ原野の背後にそびえる利尻山(利尻富士)を見られるよう、稚内へ行くと決めた直後に進行方向左側の窓側座席の指定券を確保しておいた。当日乗ってみたら、乗車率が80%くらい。しかも、大半の乗客が稚内へ行く人たちであったので、進行方向左側の座席が取れたのは幸運であった。

旭川を出てしばらくすると、旭川の市街地を抜け、畑が広がるようになる。三浦綾子の小説『塩狩峠』の舞台にもなった塩狩峠を越えると和寒に着く。和寒の駅前はそれなりに市街地が出来上がっているものの、空が広い。各停しか止まらない駅でも高層マンションが駅前に当たり前のようにある都内とは大違いである。当然、町割りにゆとりがある。しかし、平日の午前中とはいえ、町に人がいないのはかなり気がかり。短時間の停車時間しかないので、当然丁寧に見ることはできないが、人口減少がかなり進んでいる印象を受けた。

その後、士別、名寄と停車する。ここまでの所要時間は約1時間。ここまではあまり原野という雰囲気はない。むしろ、広大な畑が広がる農作地帯と駅周辺に広がる集落や町の風景だ。町の風景はやはり和寒に近い。士別や名寄は和寒に比べるとかなり大きい町だが、それでも活気はあまり感じられなかった。降りる人もほとんどいなかった。

名寄を過ぎると少々雰囲気は変わる。天塩山地と北見山地の山並みが近づいてくる。線路と寄り添うように流れる天塩川もちょっと窮屈そうに見える。

そして、音威子府を過ぎると、風景は一変する。ここから先は畑が一気に減る。山が眼前にそびえている。進行方向右側も同様だ。谷筋を流れる天塩川に寄り添うように特急列車は走り続ける。谷を抜けると、原野や牧場が広がる。車窓から草を食む牛たちを見るのは初めてであった。北海道以外で列車に乗りながら、この光景を眼前にすることはないかもしれない。忘れたくない光景だ。しかし、稚内はまだまだ先。音威子府は10時41分発だ。稚内まであと2時間もある。稚内はどれだけ遠いのやら…。

南稚内の1つ前の停車駅、豊富付近まで来ると、進行方向左手に利尻富士が見えるようになる。海の向こうにそびえる一峰の火山。右手(北側)には礼文島も見える。いつか利尻島にも行ってみたい。その時は当然、礼文島にも。

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順当に列車は進み、最後の通過駅「抜海」を通過する。抜海は最北の秘境駅とも言われる駅であり、風情ある駅舎が特徴的だ。特急では一瞬しか見られない。しかし、その木造駅舎は雄信内と並んで印象に残るものであった。秋風が涼しい季節とはいえ、この2駅のホームには人がいた。地元の人なのか鉄道ファンなのかは、通過する列車からは判断がつかないが、ああいう駅舎が残っているのはいいなあ、なんて思う。

稚内の市街地が近づくと南稚内に到着する。この駅の周辺は結構ホテルが多く、利便性が高い。終着駅だったこともあれば、旧天北線との分岐駅でもあった南稚内。その歴史を感じさせる駅である。南稚内を出ると車内がざわざわしだす。長かった特急での移動も残り数分、稚内はもうすぐそこなのだ。

宗谷本線の起点旭川駅から259.4km走った列車は定刻通り稚内駅に到着した。1線しかない。稚内の知名度に比べるとあまりにも小さな駅・ホームである。それでも、ここは現日本最北端の駅なのだ。枕崎や西大山、東京、函館等からの距離(鉄道を使った場合)がホームの各所に掲げられている。観光客たちは鉄道ファンかどうかにかかわらず、写真撮影に夢中。そりゃそうだよね。なんて風に思いながら、改札を抜けた。

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