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絶好調のチームが瓦解するとき

「瓦解」とは、まさにこういうことを言うのだろう。どれだけチーム作りがうまくいっても、たった1つの出来事からすべてが崩壊してしまう。それを見せつけるかのような出来事であった。

NFLのNFCカンファレンスチャンピオンシップ(CC)での話だ。PHI対SFの一戦は様々な面で注目されるものであった(ハズだった)。主なものをざっと挙げてみよう。

  • 攻守ともにリーグ屈指の成績を残したチーム同士の対戦である

  • 両チームの先発QB2名の年齢(24歳、23歳)の合計はCC史上最年少
    (しかも、大学時代に直接対戦経験もある)

  • SFのQB、Brock Purdyが勝てば史上初めてルーキーQBがスーパーボウルに先発出場する

しかし、試合開始早々にPurdyが怪我で離脱したことにより、先に挙げた注目点は崩壊してしまったと言っていい。第3QBまでが怪我で離脱したSFに残されたQBは12月に急遽契約したベテランQBのJosh Johnsonしか残っていなかった。Johnsonはベテランとはいえ、先発経験はほどんどなく、キャリアを通じて控えQBの座にある選手だ。今年も試合では3回しかパスを投げていない。Purdyの怪我によって、SFの今年は(実質的に)終わりを告げた。

それでも、かなり長い時間、選手たちは辛抱しており、PHIに食らいついていた。しかし、前半終了間際のJohnsonのミスからの失点、そのJohnsonまでもが第3Qに脳震とうで離脱するハメになると、万策尽きた。残されたQBは、試合序盤の怪我によりパスをまともに投げられないPurdyのみ。その後は乱闘騒ぎやラフプレーもあり、後味の悪さが残ってしまう試合となってしまった。

アメフトは全力で選手同士がぶつかり合う。ボールを持つ選手(QB、RB等)に対するタックルは特に激しい。レギュラーシーズン中は脳震とうや骨折の話題を聞かない週はない。それだけ怪我の多いスポーツである。とはいえ、攻撃の司令塔の担うQBが続々と離脱する状況も珍しい。それを耐えてきたSF(シーズン中にすで2人離脱していた中でも好成績を維持できたことそのものが、とてつもなく凄いこと)も、さすがに今回ばかりは限界であったようだ。

どれだけチームをいい形に作り上げられたとしても、たった1つの予想外の出来事(今回のケースではSF)で瓦解することがある。実際、スポーツに限らず、一般のビジネスでも中核を担う存在が急遽離脱すると、それまでの好調が嘘のように瓦解してしまうことは、ままある話だ。

チーム作りの面で中核を担う存在は重要だ。しかし同時に中核への依存度が高まるほど、中核の離脱はPurdy離脱後のSFのように、チームの瓦解に直結しやすくなる。中核の存在の重要性を感じるとともに、その離脱の恐ろしさを感じさせられるPurdyの離脱。だから、チーム作りは難しい。だが、難しいからこそ、探求の面白みがある。

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