川崎FとETU①〜中村憲剛と村越茂幸〜

天皇杯優勝。
2021年元旦をもって、中村憲剛というミスター川崎フロンターレのプロサッカー選手人生が幕を閉じた。

J1リーグ優勝、天皇杯優勝の2冠。
サッカー人生最後の試合が決勝戦。

できすぎだと言われた選手人生。
良いことばかりではなかったけれど、信じたことを続けてきた。
続けることはやめなかった。

「気づかない間に こんな大きな木が育ったんだろう」(天才の種)

元旦、ベンチから見ていて、きっと後輩たちにも同じことを思ったのではないだろうか。

〜中村憲剛と村越茂幸〜
ジャイアントキリングを読んでいて、以前から川崎フロンターレと重ね合わせるところがあった。
今回はその一つ、中村憲剛と村越茂幸のミスターワンクラブマンを。

中村憲剛は川崎フロンターレひと筋。
引退発表にともなって、様々なところで取り上げられているので割愛。

村越茂幸も浅草のクラブETUひと筋。
達海移籍後、低迷したクラブをキャプテンとして引っ張り続けた自負があった。
チームメイトからもサポーターからもETUの顔は村越であると自他ともに認められ、愛された選手であった。

所詮、現実世界と漫画の世界。
しかし面白いのは、漫画よりも先に、漫画のような現実が生まれるところである。

マイアミの奇跡、レスターの優勝、バーディのシンデレラストーリー、そしてフロンターレ悲願の初優勝、、、など挙げればキリがない。

「事実は小説より奇なり」
時折、信じられないようなストーリーが生まれるから人生は素晴らしいのだ。

村越は、海外帰りの鹿島ワンダラーズの五味と自分を比べていた。

「ETUと鹿島の間にあった…大きな差は、俺が五味に感じた……選手としての差そのものなんじゃないのか…!?」

村越は自分がキャプテンとして引っ張ってきたこれまでが間違っていたのではないかと、自分が悪かったのではないかと自責の念をもった。

似たような言葉を思い浮かべるのは、川崎フロンターレサポーターの証拠だろう。

「タイトルを獲れない最大の原因は自分にある。」

川崎フロンターレのレジェンド中村憲剛が初優勝するまでの思いと重なる。
キャプテンとして色々なものを背負い、先頭に立ち、クラブもチームも引っ張り続けてきた。

ピッチの外でも、クラブのためにできることはなんでもした。
着実にファンも増え、実力もつけて優勝争いのできるチームへ育っていった。


しかし、勝てない。


ホイッスルが鳴り響く空を仰ぐ。

小説であれば曇り空であろう。
しかしそこは現実。

情景描写のない青空を曇った心で見つめる。
膝から崩れ落ちる者も涙を流す者もいる。

「このままタイトルを獲れずに辞めていくんじゃないか。」

常勝軍団 鹿島アントラーズには小笠原満男がいた。
同じく鹿島のレジェンドでチームを引っ張る存在。海外を経験して帰ってきたあたり、五味と重なる。


そんな小笠原満男を見て、憲剛は村越と同じように自分と比べたに違いない。

自分になくて小笠原にあるものは何なのか。
どうしたら追いつけるのか。

2017ルヴァン決勝後の「正直、わからないです。」の言葉に全てが詰まっていたように思う。

2017.12.02 大宮アルディージャ戦
奇跡が起きた。

いや、奇跡という言葉でまとめてはいけないのかもしれない。

最終節に逆転優勝。
しかも、あの常勝軍団 鹿島から。

幾度となく天を仰いだ。
背中を見続けた。
どうしたら追いつけるのかと悩み続けた。

自分のせいにし続けた。
もう無理なのかと諦めかけた。

しかし、勝てた。

天は見てくれていたと、仰ぎ続けた天に感謝するほどの悲願の優勝だった。

もし小説であれば、どんな空だろうか。
感動の涙で雨空だろうか。
シルバーコレクターの曇り空から金の日差しが垣間見える空だろうか。

これは小説でも漫画でもない。
小説よりも感動的な、奇なる現実だった。

川崎フロンターレと中村憲剛の物語の一編である。

そんなドラマチックな物語を紡いできた川崎フロンターレと中村憲剛の物語。

漫画よりも先に中村憲剛が引退を迎えた。
果たして、ETUと村越茂幸はどんなストーリーを紡いでいくのか。

不思議なことに漫画が後から現実を追う。
勝手に重ね合わせたからこそ、二次元のレジェンドにも花道があることを祈ってしまう。


※この記事はフィクションが大半を占めています。
※愛しているからこその勝手な妄想投稿です。ジャイアントキリング作者様、中村憲剛様の本当のところは分かりません。
※敬称略

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