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フィンランドサウナ体験記

 「サウナ。昨今の目まぐるしい現代社会において、その時間はあまりに贅沢だ。」

ある飲食店で飯を食っていた時。
隣に座っている賢そうな大学生がそのように話していたのをフッと思い出した。

サウナという時間が贅沢だなんて思っても見なかったことだけど、確かにそうかもしれない。
時は金なりなんてことわざもあるくらい、現代人はとにかく時間に追われている。

はっきり言おう。
自分はそんな贅沢な時間を提供してくれるサウナが大好きだ。贅沢だと表現するなんてやっぱり日本人は狂っている。僕にとってはもはや生活の一部で、
呼吸するのとおんなじや。
というか現代人なら男女問わず人気があって、「サ活」などと称して社会ブームにもなっている。

こうやって何かを好きって声を大にして言うことは、時に相手に対して独占しているみたいに感じさせてしまうことがあるから難しい。

自分が好きなことを更に上回る熱量で覆い被さって来る人がいたら、その好きから一歩引いてしまう経験は自分にも当然あるし、相手が好き好きしているものなら尚更、後で自分も好きになりましたとは言い辛くなる。

多分これを読んだ人も、「よし!明日からサ活やってみっか!!」とは誰もならないだろう。

お互いが好きなことだからこその意見の相違もあり、そこにも知識マウントやオタクになることを求められることがあるので、そういうコミュニティにはあまり近づかないようにしている。

そんな妙に神経質でめんどくさがりなところもあって、趣味を共有できる人がほとんどなく、結局1人寂しく満喫することになるのだけれど。

しかし、やっぱり誰かとは共有したいという気持ちがどこか根底にあるのだろう。

そのためにSNSが存在しているんだろうけど、あの場は何を言っても自由かもしれないが、本当に何を言っても良いわけではない。

仕事や日常生活で嫌なことがあった直後に、人のそう言う好き好き投稿を見た時には、そっとミュートボタンに指が向かっているだろう。

自分も以前はストーリーにバンバン投稿していた。
ストーリーならいいねも載らないし、Twitter(今はXか)みたいに「FF外から失礼します」などといったクソリプがとんでくることもない。ただ好きなことや瞬間を載せてはすぐ消える。理想的なものだと思っていた。(最近はというか前から足跡機能がついたのは解せないけれど。あれ誰が見んねん。)

けれど前述した通り、自分の投稿がもう会ってもないどっかの誰かの機嫌に触れたりするのかなと、少しでも頭にチラつくと段々と億劫になっていく。

今はもう誰がいつ何時見てもいいように、犬の写真しかあげていない。これなら誰も不快にならないだろう(なんか失礼やな)

しかもそこで投稿していると、少し安っぽくなってしまうと言うか、やっぱり想いは語りたい。

そう考えて、こう言ったブログのような古い媒体で思う存分書くことにした。
ここならひっそりと熱く語れるし、誰かが見ても、その人の自己責任感が少しかかってくる。

(ここまで思い詰めてSNSやってる奴は多分いない)

話を元に戻す。
自分もずっとサウナが好きだったわけではない。
むしろ良さはあまりわからなかった派だ。
別にお風呂だけでええやん。

そんな僕がサウナの虜になった銭湯があります。
それが前職の研修期間中に住んでいた岐阜の銭湯
「恵の湯」

恵の湯

一般的な銭湯で、「この銭湯、めっちゃ良い匂いするやん!」となったことはあまりない。

けれどここの銭湯は珍しく?ハーブを自家製で栽培していて、薬膳として、食事としても販売しており、店内はその香りが充満している。
そしてその匂いは広いサウナの中にも漂っている。

ここのサウナがロウリュウの気持ちよさ・外気浴の気持ちよさを教えてくれた、いわば僕の原点となる銭湯だ。

と、恵みの湯の話をすると長くなるので割愛する。
タイトルでもあるように今回話したかったのは、約10日間のヨーロッパ旅行で念願のフィンランドサウナを体験したことだ。


フィンランド。

それはムーミンとマリメッコを生んだ国。

そして言わずもがな。サウナ発祥の地。
全サウナ―にとっては憧れの国。
そんな聖地で今回僕が訪れたサウナが

「Löyly Helsinki」 

(「サ道」風ナレーション)



Loyly helsinki ロウリュウ・ヘルシンキ
どうやら最近オープンしたサウナらしい。
外観はかなりシックでモダンな感じ。



ほとんど予備知識無しで予約だけして来たため、システムが全く分からず、前に歩いていた日本人らしきカップルの跡を追うようについて行く。

恐る恐る入店するとすぐにバーカウンターが待ち構えていて、店内はガヤガヤしていた。



受付に行き、チェックインをする。 
英語の説明はほとんど理解できなかったけれど、前の人達について行き、更衣室に入る。

フィンランドでは水着を着用して男女で入るのが一般的だ。
更衣室の先には別の扉がある。
ルールが分からないから、ついていった日本人の後を追う。

しかし先に入ったはずの日本人の男性の着替えが遅い。
僕は彼の後をついて行きたい。合わせるかのようにゆっくり着替える。

遅い、、 何をやってるんや、、

今思えば多分その人も初めて来てシステムがわからないため、僕が先に行くのを待っていたのかもしれない。
どう横目で見ても動作に迷いがありすぎる。

先陣を切って人を引っ張ると言った経験が人生で皆無の自分は、先に行くもんかと言わんばかりに、負けじとゆっくりと着替える。

その人がやっと先の扉に入った。
僕もようやく扉の向こうへ。するとシャワールームが広がってる。
なるほど。ここでシャワーを浴びてから行くのか。
その先にサウナがあるんだな。
ここでサウナまでのイメージが出来てようやく自信がつく。

入念に身体を洗っている先輩をそそくさと追い抜いて、さらに向こうへ。

まずは室内にサウナが一室。ウォーミングアップがてらに入ろう。

いざ本場のサウナへ。

室内は明るくて、おもったより温度が低い。そして階段があり、頭が天井に届きそうなくらいまで高い。

え、? こんなもん?!

拍子抜けした。
何より日本人の団体が多すぎる。室内はほとんど日本語が交わされていた。
ここはあれか、観光客用に作られたフィンランド風サウナなん?

しょっぱなから出鼻をくじかれた気分だった。
現地人らしき人が出ていく。まだそう決めつけるのは早い。
そう考えながらついていこうする。天井が低いため頭を打つ。

「いたい!!」
情けない声を上げ、標準語の日本人の方に「大丈夫ですか?」
とクスクス笑われる。小声ですみませんといい室内を後に、外に出る。

-15℃の寒波にさらされながら外のサウナへ入る。
すると小さい小屋に大きいロウリュウスペースが。
そしてガラス越しには圧巻の景色が待ち構えていた。

ようやく心が躍りだした。
フィンランド人が桶から水をたっぷりと汲む。

さあ、来い。

心の中で呟く。
でかいサウナストーンに水がジュワッとかかる。
するとその瞬間、ぬるい室内に熱波が一気に充満する。

日本のサウナに慣れていたせいか、最初はカルチャーショックを受けていただけだったんだ。
外の絶景と相まって、それまでの懸念が全部吹き飛ぶ。

ロウリュ後、現地人が俺に話しかける。

「お前もやってみ。」

直訳するとそういわれただけなのに、

「日本人流のロウリュ、俺らにみせてみ」

勝手に自分の中で超訳をする。
サウナの聖地、そしてそこに住む本物から直々に挑戦状をたたきつけれた気分だった。(痛すぎ)

ここで不慣れなロウリュをしたら、絶対に舐められる。
なにが「サ活」だ。望むところだ。
その瞬間だけは日本代表になった。

自分も桶からたっぷりと水を汲む。
この時に水を慣らすために、汲んでは捨てるを2~3度繰り返す。
意味は多分ない。こうすることでガチ感がでる。

そしてその後、サウナストーンと少し距離をあけながら、ゆっくりと水を円を描くように灌ぐ。

また蒸気が室内に行き渡る。
現地人が目を閉じ、その瞬間を堪能しているのが見えた。

しかしここで終わらない。というか終わらせない。
既に十分なほど熱い室内に、僕はあろうことかもう一度同じことを行ったのだ。

普段超がつくほど人の目を気にして生きている自分が、その時は周りのことなど一切考えず、ただ自分の欲を満たすため、行動していた。

当然室内は異常なくらいに熱かった。息をするだけでのどが焼けそうなくらい。
現地人は鼻を閉じて、荒い呼吸をする。

その後僕に、「フィンランドはこれでいい」とクールにいう。

熱気で写真が撮れない(携帯持ち込み可)

僕はほんもんに認められた気がして、うれしすぎて、更にもう一回ロウリュをしてしまった(バカ)(多分誰にでも言ってる)

計3回のロウリュ。ちょっとした火事だ。
みんなが一斉に外に避難する。
マイナス気温ですら心地よいほど、身体は熱気に包まれていた。
そして現地人と共に真冬の湖へダイブ。

ギア2を発動したくらい、背中から湯気が

日本みたいにまず水をかけろだ、頭はつけるななどうるさいことは言われない。
天然の湖にめいいっぱい飛び込む。

冷たすぎる、、
けど、天にも昇る気分だ。
来てよかった。心からそう思えた瞬間だった。

その後も現地人についていき、ほかのサウナでもロウリュウをしてもらった。
たまに拙い英語で話す。どうやらその人は日本に旅行したことがあったみたいだ。

繰り返すうちに違和感みたいなものがこみ上げる。
まず「楽しい」という感情だ。

サウナに入っていて楽しいなんて、日本では感じたこともなかった。
そもそも黙って入り、耐え忍んだ先に「整い」を目指すものがサウナだと思っていたから。

けれどこちらの国で「整い」を感じたことは一度もなかった。
フィンランド人はサウナ内でもバンバン会話をするし、外気浴の時間に普通にお酒を飲んでまた話す。
そもそもサウナハットを被ってるのなんて日本人くらいだ。
サウナ動線なんてめちゃくちゃ。

それらが段々と心地よくなってくる。

「本場の整い」を求めてきたつもりが、そんなのそっちのけで
「めっちゃ楽しい」という感情に満たされたのは個人的にはかなり衝撃的だった。

日本にいるだけじゃ絶対に気づかなかった。
新たな境地が開いた感覚。
常識なんて、ほんとうにTPOで形が変わる。

旅はこれがあるから面白い。

そんな感情を抱きながら、サウナ後のバーカウンターでビールを飲んでいた。


日本に帰国して、時差ボケで夜中に起きて寝れなくなったから書いてみた。
また次回はイングランド・リバプールを訪れたことについて、熱く語っていこうと思う


最高でした


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