経常収支から見た日本の競争力。あらためて今の日本の経済構造を確認する。
ついに日経平均が新高値を更新しましたが、日本経済の何が好調なのか実感できないという声も多く聞かれ、いくらインフレ社会だ、賃上げだとは言え、今後何が伸びるのか、自信を持てないのが実情です。
日本経済の好調が見えない原因。その一つは、今の日本経済は投資を起点に回り始めているからだと考えています。もちろん様々な要因はありますが、今の日本経済の構造を確認するため、以下に2023年の経常収支の内訳をまとめました。経常収支は、他国とのお金のやり取りを示しますので、日本が国際的に見て、どこで稼いでいるかが分かります。
日本の経常収支は、昨年20.6兆円の黒字でしたが、そのほとんどを稼いだのは、第一次所得収支でした。第一次所得収支とは、海外から受け取った利子・配当が中心です。日本が経常黒字でいられるのは、これまでに海外で投資した株や債券からの配当や利子のおかげです。このうち約20兆円が企業の海外子会社からの利益である直接投資収支で、約12兆円が外債などの利子が中心の証券投資収益となっています。
財貨サービスの項目を見ると、原油など資源高や円安の効果でモノの貿易は5年連続の赤字です。日本の製造業は工場の現地化を進めていますので、今後の為替や資源価格次第ですが、もう大きな黒字にはなる可能性は低そうです(2004年は10兆円の黒字)。また、その他サービスの赤字は、年々拡大しつつあります。中身はネットフリックスやスマホアプリなど海外製のソフトの使用など通信情報サービスや、研究開発や会計経営などコンサルティグサービスなどです。ここも、今後も赤字は拡大傾向になるでしょう。一方、財貨サービスの項目で、今後プラスを拡大する可能性があるのは旅行収支くらいです。
こうして見ると、日本経済をけん引しているのは、第一次所得収支です。冒頭で、日本経済が投資を起点に回り始めているというのは、このことです。日本は貿易立国と言われましたが、今や投資立国です。
自動車メーカーや大手商社は、日本のノウハウを生かして海外に投資してリターンを上げています。そうした企業の株価が評価されているのは、当然と言えば当然です。今後も、個人も企業も海外投資を進めていくべきですし、それが日本の経済力を維持する最大の原動力です。
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