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今縫製工場にできること。

2つの使命

4月7日に経済産業省の方から僕に電話がきた。

「今医療の最前線でガウンが不足している、なんとか製造していただけないか?」

僕は即答でOKした。

布で作られたものが原因で医療崩壊を招くなんて、この業界に携わるものとしてあってはいけないことだと思ったからだ。

「医療の現場に不足しているガウンを届ける」

これは大きな使命であった、

しかし目を背けてはいけない、大切な使命がもう一つある。

それは止まっている経済を少しでも動かすことだ、

4月16日に安倍総理との会談があった、

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スカイプ会談ではあったが、直接思いを伝えることができた。

今日本中のあらゆる業界の仕事が止まっている、

縫製工場も例外でなく、独自にマスクを作るところはいくつかあったが正直売上の足しになるかならないかくらいだっただろう。

だから安倍総理がおっしゃった

「余った分は国が買い取るから思い切った増産をして欲しい」

ということばは100%確証があるわけではなかったが心強いものだった。

医療の現場に物資を届けることは最優先の目的だ、

しかし実際問題ただでさえ体力がない縫製工場の仕事が止まっているのだ、

弊社も5月は95%仕事が減ったいる状態だった、

弊社は毎年1.4倍くらいずつ売上が上がっているので、実質はもっと大きな損失だった。

だから国からの要請でガウンを作ることは経済を回す上でとても大きなことだったのだ、


医療の現場に不足している物資を届けること、

そして縫製業に仕事を回すこと、

これはとても有意義な取り組みなのだ。

だけど、

少し違和感があったんだ。


古い仕組みの繰り返し "またやってる"


マスクに続いて、

医療用ガウンはすぐに縫製業界のトレンドになった、

弊社に続いて多くの企業、団体が医療用ガウンの生産に名乗りをあげた、

そして情報合戦になった、

ありとあらゆる情報が行き交い、

資材は取り合いになった、

材料の価格は上がっていったのだ。

生産を依頼した工場の中には「他からも話が来ているからコストを上げてくれ」という話になる。

弊社は基本的に基準となる職人が実際に縫製を行なってかかる時間によって見積もりを出しているから適正価格と言い切ることができるのだが、

原価は上がり、売値は下がる。

結果として適正利益を取れないまま「国のため」という大義名分だけを残して

また消耗するだけの生産方法を繰り返していたのだ。

そして価格競争に敗れた企業は国への納入ができず仕事ももらえないような状態になる。

それを"企業努力の差"といえばそこまでかもしれないが、

国難に際して医療の現場に物資を届けること。

そして経済を回すという2つの使命があるにも関わらず、

縫製業の悪しき習慣のために適正利益を取れない下請けが多数出てくることになるのだ。

そして「ゼロよりはマシだ」といって今までと同じように運営することになる、

しかもこれは特需であるから少しするとまた仕事がなくなっていく、

とてもじゃないがサスティナブルとは呼べない代物だろう。


資本主義はそんなもんだ。

そいう言ってしまうことは簡単なのだ、

新型コロナウィルスによって今までの価値観が全てぶち壊されて、

大きな損害を受けて、それでもそれを教訓として新たな常識が生まれてこようとするこのタイミングで、

「またやってる」

になってしまったのだ。

予想はしていたが、こんなにも進歩がないまま業界が流されていくのか。

そう思うと悲しくなった。


生地の産地でも同じようなことが起こっている。

名前を出すと問題が出るので避けるがガウン関連の生地需要が高まると予想して大量に発注し、機屋が生産していたが別で確保ができたという理由で大量にキャンセルが起きていたり、

業界の悪いところがまた表に出ないまま、

しつこくこびりついている。

このままでは変わらない。

極論だが、ガウン生産で人が死ぬ。

そう思った。


僕たちのガウンはKazokuガウンだ。

想像してみて欲しい、

自分の子供が、縫製工場に勤めていたら?

自分の子供が機屋さんに勤めていたら?

そして自分がメーカーに、販売店に勤めていたら?


無理なコストでの生産を強いるだろうか?

赤字ギリギリでコストを調整し、働かせるだろうか?

逆に工場も平気で納期を送れたり、曖昧な品質で出荷するだろうか?


僕は川上から川下まで、全て一貫して、

生地から販売まで責任を取れる状態。

まるで全員が家族のように生産を行うしかないと思う。

だから僕たちの商品はKazoku"家族"という名前にしているのだ。

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僕たちのガウンは福井県の生地を使っている、

適正な価格で買っている。

6月の生産分からは機屋さんと直接生地を仕入れることになった、責任持って作ってもらう、そしてしっかり儲けてもらう。


職人たちは子育てや廃業、介護など様々な理由で働けなくなった"元"職人たちが自宅で縫っている。

しっかり自分の時間を確保しながら、自宅で8時間縫っていただけると12,000円の日当を確保してもらえる加工賃に設定している。

そして販売は弊社、もしくは代理店を通じて直接、もしくはそれに近い環境で販売を行なっていく。


まさに生地の生産から販売まで一切のコストを不明にせず、

全員がきちんと利益を取れる形で販売している。


民間に今ガウンを売る理由

今民間にガウンを売る理由は明確だ、

それは国に納めるガウンが適切に全ての必要な方々に届くかわからないからだ、

国を批判しているわけでは全くなくて、

まずは新型コロナで戦う最前線の病院に厚生労働省を通じてガウンが提供されるだろう。

その後比較的大きな民間の病院に配られれていくだろう。

それを考えると民間の中小病院にガウンが届けられるにはかなり時間がかかると思うのだ、

そして問題は関係する病院だけではない。

例えば医師会を通じて病院に配られるとすると、医師会に入っていない病院には届けられないことになる。

そして全体的なガウン不足によって歯科、眼科、整形外科、など別の病院でもガウンが不足する。

歯医者がガウンがないがために病院を閉めた場合、そこで働く人たちの経済、そして極論だが虫歯でも人は死ぬのだ。

地方レベルでガウン不足が原因で重症化しなくていい病気が重症化することになるのだ。

さらに、

介護施設、児童養護施設、訪問介護様々な病院以外の施設でもガウン需要がある。

もし入居者が感染し、軽症の場合はその施設内でケアしなければいけなくなる。

そうなると現場でガウンが必要だがもちろん民間のガウンはおろか、

国からのガウンは病院ではない施設に届けられないのだ。


だから僕は民間でガウンを作って、病院以外の施設にも届けることにした。

それが僕たちが独自で行っている

Valley ガウンプロジェクトである。

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今縫製工場がやるべきこと

今縫製工場がやるべきことはなんだ?

それは自分たちで作って販売までやることだ、

販売が苦手なら代理店をしてくれる人を探すことだ、

個別に病院に対応していると手が回らなくなる。

だから代理店を立てること、そして自分たちで生地を調達し今すぐガウンを作ることだ。

今、皆さんの技術は、

インスタグラマーに写真を見せられて「この形のブラウスを作って」と言われて作るためにあるのではない、

僕が今貼っている写真を見て型紙をおこして、すぐにガウンを作るためにある。

そして販売して、皆さんの周りの施設にガウンを届けること、

これからはガウン以外にもシューズカバーも不足すると言われている。

だから今必要なものを作って、売ること。

だと思う。


もちろん苦手な人たちもいるだろう、

だから僕は来週から東北の復興支援として、

そして産地支援として、

宮城、福井県でノウハウ提供を行って現地で地産地消モデルの構築を行うことになるだろう。

現在デロイトトーマツさんと一緒に実現に向けて動いている。

海外製のガウンは確かに安い、だがものを"安定して届ける"ということが必要な今、地産地消モデルこそが今必要なのだ。

だから、

僕は縫製業を通じた地産地消モデルの伝道師、仕掛け人として日本中にこのノウハウを伝えに回る。

今こそ縫製業が重い腰をあげて、

「またやってる」

を終わらせる時なのだ。


全ての方のお問い合わせには現状返信ができる状態ではないですが、

少しでも時間ができたらお伝えできることはできる限りお伝えしようと思います。


ぜひお気軽にお問い合わせください。

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