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日本製の"強み"の再認識

前提条件。

これはとても大切だ、

どれだけいい戦略を打ったところで、

どれだけリソースを割いたとして、

どれだけ熱量を持って取り組んだとしても、

前提条件をクリアできていないと課題のクリアはありえない。

そんなことは当たり前だ、

例えば

世界一きれいな毛並みの犬を決める大会に猫がでても勝てないだろうし、

紙飛行機世界大会にエンジン付きのボーイング767を出したってルール違反だ、

こんなことは小学生でもわかるものだが意外とビジネスにおいての前提条件は無視されている傾向がある。

その原因となっているのが前提条件が時代によって変化し、それについていけていないというのが1つの原因だろう。


メイドインジャパンの前提条件

メイドインジャパンの商品を売り込む時の前提条件はどんなものがあるだろうか、

今までは"高品質"だとか"安心できる"などの付加価値イメージがエンドユーザーの中にあり、それが前提条件になっていた。

しかしそれは10年前の話だ。

現在は海外製品でも使用し一目で安物だとバレないためには十分なクオリティであるし、品質基準は年々厳しくなっているから海外製品であっても品質は十分に高い。

逆にアパレル業界において日本製だからといって必ずしも最高品質かというともちろんそうではない、

ロット的に日本で作らざるを得ない商品はたくさんあるし、大きなロットで生産した方が品質も上がっていくことは間違いない。


安心という部分に関してはどれだけ衣服は大切だと叫んだところで

「口に入れるものでもないし」

というエンドユーザーが大半だろう。


そして日本製が素晴らしいという概念がしっかりと日本人に根付いているのであれば、海外生産比率が97.6%になり、日本製が2.4%鹿内なんて悲惨な状態にならないだろう。

アパレル業界においてすでに"日本製"という前提条件は変わっているのだ。


提供する本質的な価値

すでにアパレル業界において"日本製"の前提条件が変わっているにもかかわらず、

業界人のほとんどはまだその明確な打開策を見つけていない。

それは今まで"メイドインジャパン"という特殊な魅力を持つ言葉に身を任せ、この業界の中をうまく生きてきたからだろう。

しかしこれからの時代はその魔法の言葉を使わずして、商品を販売してファンをつけ生き残っていかなくてはいけないのだ。

メイドインジャパンそのものの価値が0になるわけではない、しかしあくまでもそれは「付加価値」であり、そのプロダクトが持つ本来の価値ではないのだ。

メイドインジャパンだから売れるのではなく、売れているものが"何かしらの理由"があってメイドインジャパンなのだ。


だからこれからブランドは高品質、低価格という大きな敵に"何かしらの理由"をつけて勝って行かなくてはいけないのだ。


メイドインジャパンの強みについて

ではメイドインジャパンの強みとはなんだろうか、

答えは多岐に渡るし決まったものはない。

しかしブランドを運営する人や、物づくりに関わる人は自分なりのその答えを明確に持っている必要がある。

その解を導くためにあるのは2つの考え方だと思っている。


1.日本製だからこそ経済的な合理性がある商品

2.日本製だからこそ"圧倒的な価値"を発揮する商品


1.日本製だからこと経済的な合理性がある商品

例えば小ロット生産の洋服だ、

30着しか作らない商品があるとする、それをわざわざ海外でサンプルを作って、

生地を海外に送って海外で生産する。

そうするとコスト的に圧倒的に高くなるだろう。

小ロットという"希少価値 "を売るのであれば国産は価値のあるモノだと言えるだろう。

ヴァレイが小ロットに特化した工場なのもこの理由だ。

しかしここには大きな落とし穴があり、それはブランド力がある程度高くないと"希少価値"自体が生まれないなどだ。


別の例では

大量生産には難しいこだわりにこだわり抜いた圧倒的な高品質商品だ、

例えば

100年着れるコートや何度も家で洗えるスーツ、

何度でもお直しできる洋服などだ。

購入する時は高いが、メンテナンスを考えると最終的にコスパが良い、

そんな提案もすることができるかもしれない。


また別の例では

必要な時にすぐ供給できる体制が必要な商品も解になるだろう。

今弊社で作っている医療用のガウンは国産の生地を使用し、国内で生産しているからこれからどれだけ不足が続いても安定的に商品を供給できる体制を作っている。

またコスト的には海外製に負けるが、何度も洗えるようにして使用コストで言うと海外製品とあまり変わらないようになっている、

付加価値として洗える業者を一緒に紹介しパッケージ販売を行うことで「国内での調達が必要」な業界には非常に喜んでもらっている。


このように経済的な合理性がある商品は間違いなく強い。


2.日本製だからこそ"圧倒的な価値"を発揮する商品

上で書かせてもらったことだけを聞くと

「ファッションの世界にいるんだからコスパのことばかり言うな!ファッションは機能性だけじゃない!」などと言う声も聞こえてきそうだ。

僕もそう思う、

圧倒的に「格好いい」と思わせるデザインがあればそれでいい。

だがそれを言い出すともともこもないので、メイドインジャパンの話に戻す。


日本製だからこそ"圧倒的な価値”を発揮する商品とはどんなものだろう?

そもそも"圧倒的な価値"とはなんだろう。


例えば着物を使った商品だ、

着物はどう考えたって日本のイメージだし、それを日本人がリメイクし日本人が着ると言う事は"日本"と言うイメージを使った圧倒的な価値だと思う。

着物という使う事でコスパは悪くなるし、洗濯はしづらいし、コスパは正直最悪だ。

だから"ちょっと可愛い"ではなく、"圧倒的に"価値を提供するのだ、

そうする事でコスパはある程度無視することができる。


日本という国をデザインし直し圧倒的なデザインに落とし込むのである。


素晴らしい成功例は多くの人がすでに知っているであろう

renacnatta

keniamarilia

ではないだろうか、


これらのブランドの特徴は見た目のデザインだけではなく"仕組み"をデザインしていることにある。

そしてたくさんの人を巻き込みブランドの"共犯者"にしている。

両ブランドともに着物を使用しているが、それに限らず"仕組み"をデザインし商品の価値にしているブランドは強いと感じるのだ。


仕組みのデザイン

例えばrenacnattaではデザイナーの大河内さんのご実家がイタリアにあることを活かして現地のデッドストックになっているシルクなどを使い、日本の着物の生地などと合わせたリバーシブルの巻きスカートを販売している。

イメージとして"イタリアのデッドストックシルク"というだけでワクワクするのに、それが日本の着物と出会ってしまう。。。

そのワクワクに加えて、巻きスカートというある程度体系を選ばないアイテムに落とし込むことで圧倒的な価値を作り出した。


そこから派生して西陣織を使ったマスクや一生着られるウェディングドレス、

金彩を使ったイアアクセなど大人気商品を生み出し続けている。


きちんと日本の職人にフィーチャーしSNSでも頻繁に工場や職人が登場し "共犯者"を増やしている。

そう思うのだ。

そしてそのコンセプトが

「文化を纏う」

とたった5文字で商品の説明、仕組みの説明をうまくまとめているのだ。


僕が出会った"ブランド"の中でこんなにも完璧に仕組み、デザイン、コンセプトをまとめた例は少ない。


これが"圧倒的"に日本製だから売れる理由だと感じるのだ。

これが同じコンセプトでも海外製だったら売れないだろう。

日本製の強みは仕組みのデザインとブランドである

僕が考える日本製の価値とは、

"日本で作る理由"をデザインすることで生まれると思うのだ。

それはコストパフォーマンスでももちろんいいが、

ファッションにおいてはそれ以外の価値を推したいところである。

renacnattaのように衰退している着物という文化を別の形で表現しつつ、

他国への憧れや、素晴らしい文化を纏えるようにするであるとか、

keniamariliaのように圧倒的な「日本愛」をデザインに落とし込み、SNSを通じて日本愛を語り深めるのも良い。


日本に他にもたくさんの文化があり、日本人が愛してやまないものがたくさんあるだろう。

僕はその文化の"仕組み"をデザインすることで表現し、プロダクトにすることで日本製の新たな価値を作ることができるのではないかと感じている。



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