見出し画像

決してもう戻らない、愛おしい日々。-産前産後と4カ月の育児休業期間の、男親になる中での学び-

僕に子供が生まれて今日で5か月、そして育児休業から復職して今日で1カ月が経ちました。

出産5日目から取得した約4カ月の育児休業の日々は、驚くほど刺激的で、時間の流れがとても早く感じました。当初の仮説と実際に手を動かして育児をするのとでは異なる部分が多々あり、一筋縄ではいかない日々でしたが、子どもにだけフォーカスを合わせて過ごす愛おしい日々は何にも代えがたく、その期間を終えてしまった事に、今は少し寂しさを感じています。(一方で、復帰後の1カ月は育児家事に加え、フルタイムの仕事を含めて家を回していく事に正直ヒィヒィでした。夜の寝起きやオムツ対応、日の出と共に起きる我が子のあやしをしながらのお仕事はとにかく眠い。)

今回は育休復帰から1カ月経過して生活のリズムも少し落ち着いたので、産前産後と4カ月の育児休業を通した学びを棚卸したいと考えています。特に、おなかを痛める側だけでなく、パートナーと2人で育児休業を取得する意義を、休業期間中に僕なりに考えていたので、その事を中心に振り返りたいと思います。

前書き

妊娠出産・育児休業合わせて、一旦僕と僕の家族は無事一区切りしたことで、今回はその詳細を多くの人の目に触れる形で書きましたが、当初からずっと迷いはありました。

妊娠を起点として出産・育児に至るまで多くの壁がある事。自分達以外の家族や友人等の人間関係、所属組織や同僚、地域や社会の制度などの環境面に依っても育児は家族だけではできない事。妊娠や出産という喜ばしい一方、時に悲しさや辛さを孕むデリケートな内容だからこそ、自分達の今いる現状に楽観的になりすぎず、話を聞くであろう人の置かれている様々な状況や環境、背景にまで想像力を以て配慮する事,,,他にも考える事はたくさんありました。

今回、僕らが妊娠から始まり出産(切迫早産はありましたが)、そして育児休業までを恙なく終えられたことは、僕の周囲で僕を支えてくれた人や幸運な環境のお陰で、それら全てに心の底から感謝しています。一方で、僕の家庭はたまたま切り抜けてこれたけど、未だ多くの方が妊娠や出産、育児における様々なステップの中で苦しんでいるのではないか、と感じています。もしかしたら、若年妊娠や望まない妊娠など、妊娠の時点でたくさんのしんどさを感じている方もいるかもしれないと、常々頭をよぎります。

だからこそ、様々なバックグラウンドから妊娠や出産、育児に課題を持つ多様な人々の存在に、常に想像力を広げて考えたいというスタンスで、育児や仕事、私生活に向き合いたいと考えています。

自分が育児休業取得に至るまでの考えと、過ごした期間を振り返る

取得の経緯と簡単な振り返り

小僧との初対面

僕と妻は結婚する前から、ジェンダーに関係なく、パートナーが相互にフラットな状態で育児家事に携わりたいという信念を互いが持っている事を常々話していました。おなかを痛める側だけが必然的に育児家事をやる事やキャリア断続を受け入れなくてはならない事が当たり前であることに居心地の悪さに、そうではないよねと日々考えていました。

また、産前産後共にお世話になったNPO法人マドレボニータの方々から教わった、交通事故と同等のダメージを受けた産後(特に産褥期)の妻の身体の回復を、自分こそが十分に後押しをしなければならないという自覚、そして仕事から離れてマインドシェアを全て子供に使える人生にまたとない機会に同席したいという強い思いから、育児休業取得を希望していました。

一方で、僕は今年で29になりますが、仕事におけるキャリア構築へ少し不安を感じていたのも事実です。そのため、育児休業もなるべく長く取得したいんだけど、一方で仕事にも早めに戻って、打席に立つ回数をもっと増やしたい!という要望を妻とも相談していました。
夫婦での合意形成の結果、僕が4カ月、妻は1年の育児休業期間を選択するに到りました。

結論から言えば、4カ月の期間で自分ができる事は最大限やりきったぞ!と感じながらも、感覚的には一瞬に近く、非常に短いものでした。産後1カ月は妻の身体の回復支援と育児家事のルーティンを確立する忙しさに記憶がほぼ喪失。2・3カ月は妻と共に育児家事の運用を効率的に回しつつ、日進月歩で成長する子どもにどう対応するかを日々模索していました。最後の1カ月である4カ月目は、来たる僕の職場復帰に合わせて、その後のルーティンを育児休業期間中に妻と共に作っていく期間となりました。

質的には、僕も妻もその濃度に関してお互いに満足しています。ただ、(仕事にも戻りたい!という熱意があったので、良し悪しの判断まではできませんが、)本当に最低限で終わってしまったという悔しさを感じています。また、もしここまで期間の短さに拘っていなければ?僕と妻の取得期間が逆でも良かったのでは?と、検討段階から男性である僕の方が短いという前提で話が進んでいた事に、フラットな視点が欠けていたかもしれない、と妻と振り返りをしました。

僕なりに考えた、パートナーが2人が育児休業を取る意義を最大限にするために

先では、育児休業取得までの経緯とその選択に対する振り返りをしていました。ここからは実際に妊娠・出産や育児休業を取得していた中で考えていた、パートナーと2人で育児休業を取る意義を最大限にするためにどうすればよいのか・よかったのかについて、考えた事をまとめます。

◆育児においてパートナーは同期-妊娠出産・育児におけるパートナー間の情報格差を埋める-

妊娠を境に、おなかを痛める側の女性は、メンタル・フィジカル共に大きな変化が見られます。月1回の生理が止まり、初期のつわりに始まって、自身の腹部が日を追うごとに大きく膨らんでいきます。自分だけの身体ではなくなるため、味の嗜好の変化や妊娠期間中の食べるべき物/NGな物に合わせて食事をし、日常の所作にも多くの注意を払うようになります。
(つわりの時は、おかゆと林檎しか食べれない毎日。出産までは生ものが食べれず、産後には寿司を浴びるように食べたいと強烈に欲していたのを横で見ていました。)

そして、自分自身の身体の変化であるからこそ、妻は日常的に情報を収集していました。妊娠中の食事に始まり、陣痛の進み方、沐浴や離乳食などの赤ちゃんのお世話など、現在だけでなく未来に起こる事柄までも解像度高く準備をしていました。

そんな産む側の女性の身体が変化する一方で、男性である僕はどうだったか。振り返ると、当初から「父親になるぞ!」という自覚と意気込みはありつつも、調べる・準備するの行動に伴わないものだったと振り返ります。

安定期も終わりに差し掛かった頃、妻に「分娩の時に男性ってどんなことするの?」と尋ねた際に、「質問しないで調べて。子育てにおいて私は先輩じゃない。私達夫婦は同期。同期の私に「どうすればいいの?」という質問をするのは理にかなっていないよね?」と返された事がありました。僕はこの日から積極的に情報を収集し、事前のアクションまでのイメージを(わからないなりに)作る様になりました。

身体の変化がない→準備のための情報収集しない→イメージできない→アクションができないでは、パートナーと2人でいる意味がない。仮に片方の調子が悪いいざという時に、安心して背中を預けられる関係が作れる事こそ2人で育児する意義だと思いますが、それを可能にするのは夫婦同士での妊娠出産育児に対する情報格差をなくすことに他ならないと考えます。


◆育児の責任を一人に押し付けない-ワンオペ育児の孤立を防ぐ-

出産に向けて準備をしていく中で、産後どのように育児家事の運用をしていくか、妻と相談をしてました。相談をする中で、この記事を見た事から、当初はシフト制を採用するに到りました。

最初の1カ月は、僕が日中育児家事(21:00-6:00就寝)、妻が深夜育児(日中+18:00-21:00就寝)で、体質上『完母』の妻は3時間おきに授乳を、その時間に合わせて昼の時間に夫婦共同で沐浴をしていました。

1カ月が終わりに差し掛かった際に、次の1カ月について話す中で、「『一人で育児をする』時間は重い」と妻から相談がありました。僕らは当初、それぞれがまとまった休憩時間を作れてよいのでは?と考えていましたが、担当パートの時間中、①当該時間の育児全てを自分が担っている責任感の重さ②当該時間の育児全てを自分一人で対応している孤立感(特に夜の対応)があったそうです。

この2点を解消すべく、2カ月目以降はシフト制は廃止し、深夜を含む3時間おきの授乳時も全て2人で対応する事にしました。もちろん、2人それぞれがまとまって取れる休憩時間は減り、2人とも常に眠いという状態が今も続いています。ただ、それ以上に孤立感や一人で向き合う重い責任感が減った事で、互いを労い合いながら育児ができていると実感しています。(今は、それぞれがしんどくなったら申告制で、労わり合って休憩を取っています。)


◆家の外に用を作る-家族一人一人の、社会からの孤立を防ぐ-

上記のワンオペ時に陥る孤立感と同様に僕ら夫婦が恐れていたのは、社会から家庭が孤立してしまう事です。

よく遊びに行った動物園の、面白い表情をするテナガザル

僕ら夫婦は、新たな土地に移住をして間もなく、妊娠・出産を経験しました。地縁コミュニティに属しておらず、また知り合いもいない状況に加え、コロナ禍という事で、産休・育休と同時に社会との接点を喪失する懸念、そして助けが呼べない状況の中で万が一が起こるかもしれない危機感を懸念していました。(このことを妻と振り返り、仕事は単なる労働ではなく、自分が貢献実感を持って、社会と接点が持てる場所だったよねと認識が変わりました。)

ご存じの通り、昨年日本では、世界で2番目に孤独孤立担当大臣なるポストが任命されましたが、多くの社会課題はコミュニティからの隔絶の末の孤独や孤立に端を発します。家庭内はブラックボックスであり、社会から孤立してしまった際には、閉ざされた環境でDVや虐待などが発生するケースもあります。

だからこそ、(凄く単純な発想ですが)頻度高く家の外に出る事や誰でもいいから外の人と繋がることを2人で意識しました。

育休期間中は、日中はなるべく家にいない事を2人で心掛けていました。市民価格で行ける近隣の動植物園や博物館に足繁く通う。買い物は細かく、頻度を多くする。産院近くのカフェの店主さんと仲良くなって育児の相談をする。マドレの産後ケアのオンライン教室に通って育児家事とは異なる自分を見つめる瞬間を作る。時に趣味の時間を確保し、それを共有できる友人らとの話に没頭する,,,等々。
あらゆる手を使って、外部との接点を構築し直し、自分達が実社会から孤立する事から身を守る事で、結果自分達が気持ちよく育児に向き合えたと感じています。同時に、子どもは僕らカップルだけで育てるものではなく、地域やコミュニティ、社会で育てていくものであるという考え方を、はっきりではありませんが、ジワジワと理解できた様な気がします。

ワンオペでは、外部接点を意図的に増やしたり、家の外へ高頻度で出る事は、リソース上の制約から物理的な難しさがあると思います。ただ、もしパートナーと2人で、共に育児休業を取得できているのであれば、互いに社会・外部との繋がりが健全に持てているかに気にかけてあげられる心の余裕を作ることができると感じました。

◆身体は資本-自分のため、家族のために体調を整える-

最後、少し尻すぼみな書き方にはなりますが、僕が2人で育児休業を取る人にとって重要だと感じた点なので書きます。

出産の時や育児をする中で、時間が無かったり切迫している中ではあると思いますが、必ず隙間を見つけて積極的に身体のケアをしておいて下さい。そのケアは、パートナーや子どもに返ってきます。

僕の妻は深夜2時に始まり、30時間に及ぶ陣痛の末に出産しました。妻が陣痛に耐える最中、同伴する夫ができる事はあまり多くありません。産院到着から分娩台移動迄のおよそ19時間、5分(最後は2-3分)に1回の波と共に現れる陣痛の苦しみを和らげるために様々な体勢になる妻の臀部に、体中の全精力を投じてテニスボールをねじ込む、"いきみ逃し"にとにかく尽力しました。

テニスボール

一般的に初産の場合は陣痛開始から12~15時間と言われていた一方で、一向に降りてこない中で、「どうすれば今すぐに妻を分娩台へ移動させてもらえるのか」を延々と考えていた気がします。(記憶が朦朧とする中なので定かではなく?)結果、無事出産に至りましたが、僕の人生で比類ないほどの眠気と疲労感と筋肉痛を感じました。(もちろん、僕が感じていたものに加えて、それ以上の産みの苦しみに耐えた妻に頭は上がりません。)

別の話になりますが、産後9割方は僕が子どものオムツ替えを担当していました。(男性である以上授乳はできない事から、特にオムツ替えは自分の領域と言わんばかりにやっていました。)通常オムツ替えは、自分の立つ位置よりも低い位置で腰を曲げ、身体を屈ませて作業をするんですね。この際に、すべての負担は腰にかかるため、激しい腰痛を引き起こします。
これは苦しかった。子供を抱いていても、キッチンで料理を作っていても、掃除機でソファー下のゴミを吸い取る際に屈む時も、僕の腰は悲鳴を上げていました。

通説や計画通りいかない事が起こりうる出産、真面目に取り組めば知らず知らずに身体に負担が溜まっていく育児。おなかを痛めた側じゃないから身体に負担はないとは思わず、常に身体のケアに気にかけて置くことこそ、2人で育児をするパートナーに何か起きた際にすぐにでも対応できる体制を整える事となります。

夫婦で妊娠・出産、育児休業に取り組む意義とそれから

パートナーと共に2人で妊娠出産に臨む事や育児休業を取得する意義とは、2人いるからこそ大変な時に背中を預けられる点、お互いに身体や心に少し余裕がある状態だからこそ(キャパシティギリギリでないからこそ)、子どもに全ての愛情を以て育児に向き合える点だと考えています。

子どもの出産に立ち会えた事。恐る恐る抱いて沐浴した事。不定期に夜泣きする子どもをあやした事。沢山おそとに連れて行った事。そんな中で、動きを認識し、笑い、手を動かし、指をしゃぶり、寝返りができ、奇声を上げて笑う様になった事。成長や変化が最も著しい時期に、パートナーと2人で立ち会えた事は、この上ない喜びです。

一方で、僕たちにこれができたのも、2人で育休を取得できたからに他なりません。2021年現在、育児休業の取得率は、女性8割に対して、男性は12%にとどまっています。ここ数年で増えたと言え、同じ育児を担うカップル同士であるはずが、まだまだ低い。そして、単に”取得”という表面上の尺度のみならず、期間を問わずその質・その意義が重視されることが、次のステップです。

ただ、もしパートナーと2人で育児休業を取得でき、共に真摯に育児家事に取り組むむ事が叶うのであれば、お互いに心にも身体に少し余裕ができるはずです。僕自身、育児休業期間は忙しかったなとは思いつつも、とにかく寝る間も無く大変だったわけではなく、気持ち60%負荷一定くらいの感覚でした。余白の部分は心や身体の余裕に繋がり、自身がより健全に育児に取り組める家庭環境ができるのではないでしょうか。

今年の4月1日から順次施行される育児・介護休業法改正に伴って、男性の育児休業を取得する環境が改善され、よりフレキシブルに取得しやすくなっていく社会の動きがあります。

子供を迎えるより多くの家庭が、身体と心に余裕を持って育児に取り組めるように、僕が感じた事が少しでも次の育児休業取得者に、そしてその同僚や上長に届き、役に立つ事を祈っています。

また、今回の文章では掬いきれませんでしたが、妊娠・出産の壁に悩む方や、1人で育児に向き合わなくてはならないワンオペ育児のしんどさを感じられている方もいらっしゃると思います。男性育休のトピックに限らず、翻って社会が、それを構成する僕らがどの様にあれば、1人ないしは2人でするものと認識される育児を、心に余裕を持って取り組める環境にできるのか。読んで下さった方が、自分の周りにいる誰かの顔を思い浮かべながら、今一度考える機会となればと思っています。


ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?