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いっしゅうき 2021.10④

2021.10.20 WED
316日目です。下高井戸シネマにて、ロバート・エガース監督『ライトハウス』(2019年、アメリカ・ブラジル)を観ました。

初っ端から始終画面も雰囲気も暗く、大きな爆音SEがぶちかまされていて最高の気分でした。爆音の霧笛と波音最高。わたし爆音SEが大好物なんですよ。知らんがなといったところなんですけども。

「狂気に侵される恐怖」みたいな耳触りのよい(よいか?)ことをついったでは書きましたが、主演俳優おふたりのかなりネジの外れた名怪演に圧倒される約1時間半でした。ストーリーはまあ難解かもしれませんが、筆者はわりあい雰囲気とノリでフィクションを楽しめるタイプなので、画面のインパクトや大爆音のSEと罵り合いが堪能でき、個人的には満足度の高い一作でした。も~「かもめバンバン」が最高すぎてめちゃくちゃ興奮しました。実際のシーンはぜひご自分でご確認ください。ツボが特殊すぎて我ながら引いちゃうな。

ついったのとおり、筆者の観た回では町山智浩さんの解説がついておりまして、最近映画をよく観るようになった初心者としては大変勉強になりおもしろかったです。やっぱり知識のあるひとの解説は健康にいいですね。なんの健康なのかはよくわかりませんけども、町山さんの御著作はずいぶんまえに『トラウマ映画館』だけ拝読しましたが、どの作品も観たことないなりにそちらもすごく好きだったので、今回実際に動いて話しておられる姿が見られてちょっぴり感動しました。そういえば『マンディンゴ』についても書いてらした気がします。タイトルに反しない立派なトラウマ映画でした。とても好きな作品です。
解説動画についてはどこで観られるものなのかわからないのですが、もし機会があればぜひ。『ライトハウス』もうなにがなんやらさっぱりわからんかったじゃというかたにおすすめです。

今回が「下高井戸シネマ」初訪問だったのですが、駅と踏切の近く、閑静な住宅街、マンション?の2階という非常に味のある立地、かつ落ち着いていてどこか懐かしい雰囲気の館内ということで、すっかり推し映画館になりました。

同時に、『ライトハウス』を観終えたのが23時近くだったということもあって、道も電車もがらがらで、映画の得体の知れない余韻に浸ったまま何物にも邪魔されず帰路につけたため大満足の一日でした。人間がたくさんいる場所は得意ではないですが知らない場所にいくのは大好きなので、初めての場所でよい映画館を発掘し、がらがらの電車に揺られてのんびり帰るという行為には得も言われぬ魅力があります。余韻を楽しみたいあまり、普段ならイヤホンで音楽を聴きながら帰るところを、なんとなくなにも聴かず、電車の走る音をBGMに乗換駅まで乗りました。夜の静かな車内に昼間より大きな音で走駆音が響いており、これからなにかが起きる夢を見ているような、最高の心地でした。

2021.10.21 THU
317日目です。昨日に引き続き下高井戸シネマにて、ロベール・ブレッソン監督『田舎司祭の日記』(1951年、フランス)を観ました。

いやおまえなんぼ下高井戸シネマいくんじゃという幻聴が聞こえる気がしますが、筆者が気になっていた映画を同じ期間に複数本上映なさった下高井戸シネマさんがすべて悪いと思います。ありがとうございます。

以前早稲田松竹で『少女ムシェット』と『バルタザールどこへいく』を観て以来なんとなく気になっていた監督だったので、公開が決まった当初からずっと観よう観ようと思っていたのですが、いろいろな理由(主に上映館に辿り着けず迷子になったことなど)から、今回ようやく観ることができました。なんだかんだで結局観られず終わるんだろうな、となかば諦めていたので、こうして鑑賞することができて嬉しさとともに達成感をおぼえています。

内容としては、個人の感想としては『~ムシェット』と『バルタザール~』と比べると、難解というか馴染みがないというか、純粋にストーリーや映像、構成等を楽しむには筆者の教養が足りなかったな、という気持ちです。
ほんのりと悲惨で、一部を取り上げてみればなかなか救いのない物語ではありますが(筆者はなぜか太宰治の『人間失格』や藤澤清造の『根津権現裏』を読んだときのことを思い出しました。『根津権現裏』懐かしいな。なぜかとっても好きだったんですよね)、しかし絶望に染まりきって終わるというわけではなく、どこか他者へ一抹の救いを遺すような希望も見えるのかなとも感じます。キリスト教教義や司祭について知識があれば彼の生き様をもう少ししっかり理解できたんだろうか。他文化の真の意味での理解というのはなかなかに難しいなと思います。

2021.10.22 FRI

どうも、プロのツイッタラーです。起きてついったを見たらスペースなるものができるようになっていて「おー」と思いました。今のところ開催の予定はありません。

2021.10.23 SAT
なぜ人間は労働しなければならないのでしょうか。

2021.10.24 SUN
320日目です。ひさしぶりに小説をまるごと一冊読了できました。

京極夏彦『旧談』(角川文庫、2016年)です。買ったのがいったいいつのことだったのか、まったくおぼえていません。たしか地元のスーパーに入ってたくまざわ書店だった気がする。違うかもしれんけど。

ついったに書いたとおり、根岸鎮衛の『耳嚢』という江戸期の随筆をもとにして、収録作から厳選したお話を京極夏彦テイストにリライトしたという、おもしろい趣向の一冊です。怖い話・怪談の好きなかたにとっては、木原浩勝・中村市朗『新耳袋』シリーズなどの影響もあってなんとなく名前を聞いたことのある随筆だと思いますが、実際に原典を読んだ・具体的な中身を知っているというかたは意外に少ないのではないかと思います(かくいう筆者もそのくちなので)。本作はリライト元の『耳嚢』本文も載せられているので、京極版との読み比べができてたいへんおもしろかったです。いやあ江戸随筆おもしれえな。最近本業の関係で『日本随筆大成』なる大作を読み続けているので(きついです)、なんだかリンクするところがあって楽しめました。江戸随筆、おすすめです。上代や中古の文学に比べるとだいぶん読みやすい古文ですので、古典文学になじみのないかたでも楽しめるのではないかなあと思います。
また、いわばネタ帳的な簡単な文章で書かれた『耳嚢』を、実話怪談風にリライトするにあたりどのように「料理」するか、という点について、プロ小説家がどのような手法を取っているのかを勉強する、たいっへん、非常にためになる一冊でした。ほんとうにめちゃくちゃ勉強になりました。『耳嚢』ではオチもヤマもなく、さらりと描かれている話でも、主人公となる人間を変えたり、話の順序を変えるだけでこんなにおもしろくなるものか、と思いました。大きな変更を加えるわけでもないのに、見せ方を工夫するだけで「物語」ってこんなに変わるものなんですね。怪談師さんの語りなんかにも通ずる部分があるのではないでしょうか。物語系の創作をなさっている方にぜひともおすすめしたい一冊でした。

2021.10.25 MON
321日目です。昼間からけっこう遅い時間まで図書館に籠もったりなんだりしながら作業を終わらせてきました。もしかして自分、めちゃくちゃえらいのでは?

2021.10.26 TUE
322日目です。『旧談』を読破できたことで調子に乗って、買ったきり本棚の肥しになっていた小説たちを少しずつ読み進めています。今日も一冊読了できたのでご報告です。

エリック・マコーマック、増田まもる・訳『隠し部屋を査察して』(創元推理文庫、2006年、2020年再版)です。ずっと気になっていて、購入したきり本棚の肥しになっていた一冊でしたが、いろいろなところで目にする評価にたがわずとっても楽しい読書体験ができました。
ついったでわりあいしっかり書いたのでご参照いただきたいのですが、たくさんの奇想・幻視が溢れていて個人的にはめちゃくちゃ当たりの作品集でした。どれも短いので飽きることなくどんどん読めますし(気分はわんこ蕎麦です)、どんなアイデアでも小説って書いていいんだな、となんとなく勇気をもらえました。これは筆者が小説書きに行き詰まってる趣味創作人だからだと思いますが。わたしもなんでもいいからなんか書いてみよ。あと、同じ作者さんの他作品もぜひ読んでみたいと思います。


ほんとうにありがとうございます。いただいたものは映画を観たり本を買ったりご飯を食べたりに使わせていただきます。