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いっしゅうき 2021.01②


2021.01.06 WED
29日目です。起きたら16時でした。なんで?

2021.01.07 THU
30日目です。めちゃくちゃ今更なんですけど、わたしずっと2021年のこと2020年って書いてませんでしたか? 前回のいっしゅうき、ぜんぶ2020年になってるよな? はちゃめちゃに恥ずかしいのでこっそり直しておきます。すみません。目元を隠しておられる有名なブロガーさんみたく2020年から出られなかったんだなと思っておいてください。ところでいま午前3時23分なんですが、明日10時くらいに起きて昼頃に出掛けるのってイケると思いますか? どうしても外せない用事なんですが。わたしは無理だと思います。昨日に引き続き今日も13時起きだったしな。でもこのマイナス3時間ペースでいけば10時起きできるんでしょうか。こんな生活習慣で人間として大丈夫なんでしょうか。もうなにもわかりませんね。

(後日追記:前回のいっしゅうきの日付を「2021年」に直してきました! いま見にいっても2020年はもう生き残っていません!! 次同じようなことをやっていたら優しくこっそり教えてください……)

2021.01.08 FRI
31日目です。もう1ヶ月以上ちまちまと取り組んできたやらなければならないことがようやく終わったので、自分への御褒美として某呪術漫画の最新巻を買って帰宅しました。読後の感想をひとことで表すとすれば、絶望です。うきうきしながら家路を急いでいたあのときの気持ちを返してくれ。どうしてこんなことに。もうおしまいです。この世のすべてが憎い。こうなったらわたしが味わった絶望嘆き憤り悲しみを、わたしの周囲にも等しくばらまかねば気が済みません。今年はできるだけ上質な鬱を含んだ作品をいっぱいつくって、読んでくださった方々に厭~な気持ちをお届けすることを抱負にしたいと思います。いっぱい生産するぞ~!!

憂鬱な作品をつくるにはまずインプットを、ということで、ヨルゴス・ランティモス監督『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(2017年、イギリス・アイルランド)を観ました。年が明けてから映画鑑賞もすっかり御無沙汰だったので、記念すべき新年初映画です。

お噂はかねがね……といったかんじで観るのを楽しみにしていたのですが、期待を裏切らないその不条理さにわくわくしてしまいました。筆者こういうの大好き! 鬱映画はこの世に憎しみが募ったときに観るには最高のヒーリングツールですね!(※個人の感想です)

(以下、ネタバレとまではいきませんが、映画の内容に触れています)
不条理のネタというか、根本が最後まで明らかにならないところに、一介の怪奇幻想ファンとして非常に好感が持てました。少年、おまえはいったい何者なんだ。そんな掴みどころのないところが好きだよ。でも絶対近くには寄ってこないでほしいよ。
PG12作品だそうなのですが、わりと性に関するドロッとした雰囲気が映画全体に纏わりついており(興奮を煽るよりは、嫌悪感をおぼえるような性というかんじです)、そのほかにも画面の色彩や登場人物の言動など、いたるところに漂う生理的嫌悪感が非常によい味を出していました。少なくとも筆者はかなり雰囲気が好きです。食べ物を美味しくなさそうに表現している作品は信頼できます(※個人の感想ですpart2)。

あらすじ等では「幸福な一家が少年の登場によって云々」と表現されているのをよく見たのですが、筆者個人の感覚だと、この家族が「こうなる」のは最初から決まっていた結末だったよなあ、と思ってしまいました。最初から家族としての絆はなかったよな、と。少年の手によって故意に急激かつ大きな「破滅」が与えられたけれど、それがなくともいずれは自壊していたのではないかと思うなどしました。
家族のメンバーそれぞれがなかなかに歪んでおり、その歪みが後半へ進むに従ってどんどん露出してくるのですが、その「人間の厭さ」の表現が絶妙でした。後半の没入感は圧倒的です。とある理由から父に対しどんどん媚を売っていく家族たちの姿はいっそ清々しいほどで、純粋ポジションとして描かれていたとあるメンバーも怪しく見えてくる始末です。こいつも結局は保身でやっていたんじゃ……いやしかし……という疑心暗鬼が楽しめます。単に筆者の性格が悪いせいかもしれませんが、まあそれが人間ってもんですから仕方がありませんね! 人間だもの!

考察が捗りそうな要素も各所に見られ、また「これ吹替だったらどんなふうに演技してるんだろう?」と気になる名シーンも散りばめられていたので(筆者は字幕で観ました)、ほんとうならあと2、3回観てもいいくらいなのですが、なにせ内容が内容なのでなかなか勇気がいります。ただ、少年の妙に焦点のぼけた台詞の数々がなんとも魅力的なのです! 考察を深めるのが好き、かつどんとこい鬱映画!という方にぜひ観ていただきたいです。筆者としては大好きな作品でした!

2021.01.09 SAT
32日目です。昨日からの流れで『ぼくらの』というアニメを観始めました。なんでも鬱アニメとして名高い作品だそうですが、勢いで4話まで観た現時点の感想を言うなら「鬱」です。まあ2話時点で石田彰ボイスが出てきたあたりでそういうシステムだろうなと分かってはいたんですが、詳細は省くとして展開としては「いやおまえ主人公ちゃうんか──い」という感じでして、くすりとも笑える場面がありません。表情筋がしにそうです。これをあと20話くらい観るんか? この作品をリアルタイムで追っていた人々の精神力に感服するばかりです。この高濃度の鬱を浴びるために一週間待機していたんですか? 正気か?

話は変わりますが、ふと長野まゆみ作品を読みたくなり、近所の小さな図書館に行ってきました。あまり多くの本は置いていなかったのですが、そのなかに『レモンタルト』を見つけ、思わず借りてきてしまいました。


大好きな小説なのですが、実家に置いたまま上京してしまったせいで、ながらく読めていませんでした。簡単にまとめると、主人公の男性と、その義兄を巡る連作短編集です。義兄は主人公の姉の夫にあたるのですが、姉そのひとはすでに亡くなっています。姉亡き後も、ふたりは別の世帯という形でひとつ屋根の下に住み続けています。主人公は義兄に恋情を寄せているのですが、義兄に胸の裡を明かさず暮らしています。
長野さんの魅力である、どこか現実味のない淡々とした文章で綴られるので、読んでいるほうも静かな気持ちで主人公の暮らしを眺めていられるのですが、も~なんにしたってこの主人公が不幸体質すぎて! ろくなことがない! にもかかわらず、主人公本人はどこか諦念を漂わせたまま一切抵抗しないので、おまえ~! おまえおまえおまえ!!という気持ちになります。もうまわりのやつら一発ずつ順番に殴っちまえよ! ときどきぽろりと明かされる主人公の過去もなかなかに爛れており、おま、おまえ!!!!となります。諦めんなよ! もっと熱くなれよ!!!!

内容としては、よくよく考えるとわりと波乱万丈なのですが、前述の通り薄紙一枚隔てたような現実味のない文体なので、必要以上に心を乱されることなく読むことができます。主人公と義兄の穏やかな関係性と、主人公の置かれた切ない立場にえも言われぬ情緒があり、どこかあたたかみのある世界観とあいまって、読後いつまでも余韻の残る名品だと思います。ページ数もそう多くはないので、もし御興味ありましたらぜひぜひ。そこはかとない耽美がお好きな方には非常に刺さると思います。

2021.01.10 SUN
33日目です。諸事情ありまして寝起きに牛タン定食を摂取したんですが、すきっ腹に詰め込む白米と牛タンは最高ですね。少し胃もたれした気もしますが誤差の範疇です。気のせいです。年々内臓が弱っていく気配を感じますが自覚しなければノーカンなので問題ありません。まともに牛タンを食べたのは初めてだったので嬉しかったです。また食べたいな。

きょうはひさしぶりにゆっくり本を読んだり、ずっと観たかったドラマを一気見したりしました。

長い作品はどうしても観るまでにエネルギーチャージが必要なのですが、1話30分弱、全8話という構成なので軽々と完走できました。鈴木拡樹さん目当てでどんなもんかと観始めた作品でしたが、ストーリーのテンポがよく、頻繁に挟まれる小ネタにいちいち声を上げて笑ってしまいました。バイプレイヤーの皆さんの演技も非常に素敵なので、ビジュアル重視の作品なんじゃないの?という懸念をお持ちの方もストレスなく鑑賞できると思います。原作が成田良悟さんということで、成田さんファンにもおすすめです。筆者は成田さん作品には馴染みがないのですが、これを機になにか作品に触れてみようかと思いました。アホの子(褒めてる)な鈴木拡樹さんと、錆まみれのガッタガタなママチャリを走らせる清原翔さんをぜひ観てほしいです。

爽やかな読後感(?)の作品だったので、明日からまた鬱作品摂取に戻ると考えると憂鬱になります。このテンションから『ぼくらの』に戻るの? 大丈夫?(別に鬱作品縛りを課しているわけじゃないんだから普通に楽しいものを観ればいい話なのでは?)

2021.01.11 MON
34日目です。ゴミ出しのために8時に起きて、朝ごはんを食べながら映画でも観にいこっかな~と画策していたはずなんですが、気付いたらなぜか布団のなかにいて13時をまわっていたので、もうだめだと思いました。

2021.01.12 TUE
35日目です。引きこもりの社会不適合者らしいことをしようと思い、日も暮れ切らない夕方から飲酒しながら鬱映画鑑賞会を開催していました。楽しかったです。

先日観た『聖なる鹿殺し』がおもしろかったので、同監督の『籠の中の乙女』(2009年、ギリシャ)を観ました。

もう初っ端からモザイクシーンの連続で「わ~~~」という気持ちでしたが、『聖なる~』同様興奮を煽るようなつくりでは一切なく、また全体的に白っぽくシンプルな画面で構成されているので、不思議と清潔感すら感じました。ですが、その清潔感がテーマと相まって閉塞感を生み出しており、静かな世界のなかに唐突に挟み込まれる暴力的な描写のコントラストが強烈です。『聖なる~』は敢えてBGMで雰囲気を演出しているような印象を受けましたが、本作はほぼ環境音だけで構成されていたので、観ているこちらまで息を詰めながら最後まで観てしまいました。始終凪いだ気持ちで観ていられる不穏で厭な映画だと思います!
ちなみに、邦題はファンシーでメルヒェンなかんじですが、英題は”Dogtooth”だそうです。つまり「犬歯」ですね。ずいぶん雰囲気変わったね、という気持ちになりますが最後まで観るとその表題に一気に鬱が加速します。よく「冷蔵庫に入ると中からは開けられない」っていうよね。まあ関係ないんですけど……(鬱)

「父親」の果たす役割や、「均衡を保っていた家庭に他者が介入した結果、家庭が崩壊していく」という物語は、『聖なる鹿殺し』とよく似ているように思いました。表現の方法がそれぞれ異なっているので、もし御興味ありましたら両方を観て比較してみるとおもしろいかもしれません。ちなみに筆者は『籠の中の乙女』派です! リアリティや崩壊までの説得力がしっかりしており、また白身魚のような淡白な味わいが非常に好みでした。筆者は味噌ラーメンと塩ラーメンがあったら迷わず塩ラーメンを選ぶ人間です。比喩表現へたくそか?

ほんとうにありがとうございます。いただいたものは映画を観たり本を買ったりご飯を食べたりに使わせていただきます。