【創作エッセイ】アイドルになれたら⑧
※作中に登場する団体や固有名詞等は、現実とは一切関係ありません。全て「うゆ」の夢をもとに書かれたフィクションです。
憧れが、愛に変わるほんの少し前に。
ごはんを食べてしばらく談笑した後、ホテルまで送ってもらった。
ジヒョン「気をつけて戻ってくださいね」
うゆ「ありがとうございます。ジヒョンさんと社長さんもお気をつけて」
ソン社長「〔ありがとうございました~楽しかったですね~!あ、これよかったらもらってください〕」
酔っぱらった社長が、小さな袋を手渡してきた。
ジヒョン「〔ちょっと社長、何渡してるんですか〕」
ソン社長「〔ちょっとした手土産だよ。あんまり多いと荷物になるからね〕」
うゆ「〔ありがとうございます。頂戴します〕」
ソン社長「〔気にくわなかったら処分していいからね~こっちのお節介だから〕」
うゆ「〔??承知しました…〕」
いたずらっぽく笑った社長の顔と困惑するジヒョンを後目に、私は車をあとにした。
ホテルの部屋に戻り、袋を開ける。
そこには何やら名刺サイズの紙の束と、細長い小さな箱が3つ入っていた。
一番上のメモらしき紙を見ると、ボールペンでこう書いてあった。
「うゆさんへ またお会いしたいです!」
筆跡的にジヒョンだろう。外国人らしからぬ美しい癖字が、冷めない彼の学習意欲を表しているように見えた。
名刺サイズの紙たちを見ると、最初期から今までの特典トレカやチェキが大量に入っていた。
そして一番最後には今回の撮影の未公開チェキ。
うゆ「宝の山じゃん...」
驚いて目を見張ったと同時に、ふとあのときの彼の表情を思い出す。
なるほど。あのときジヒョンが柄になく焦っていたのは、自分で渡すには恥ずかしいものを社長に託したはいいものの、実際に私の手に渡るところを見て更に恥ずかしくなったからか。
そう思うと、彼がより愛らしく思えてきた。
うゆ「明日トレカファイル調達しなきゃ…」
そう、この時の私は、自分の体裁など全く気に留めていなかった。
続いて小さな箱を取り出すと、ハイブランドのヘアクリップとピアスが出てきた。
うゆ「えっ、BakedChouChou…!」
マーメイドモチーフで有名なブランドで、ヘアクリップ1つで8万は下らない超ラグジュアリー価格だ。
夏限定コレクションのヘアクリップは、波打つ表面に本物の貝殻の欠片が埋め込まれており、アイボリーにオーロラの輝きが反射する。縁取る金色の線と、雫モチーフのブランドマークが優雅な一品だ。
ピアスも夏限定コレクションで、ヘアクリップと同じ素材と形のパーツにパールが添えられている。
BakedChouChouには、一度ファッション誌の撮影でドレスを着用してから、その世界観の美しさに惚れこんでいたのは事実。けれどもメンバー以外にその話はしていない。
偶然にしてはあまりにも運命的で、目の前の虹色が撮影で使った花束を連想させた。少しくすぐったいような、甘くて爽やかなジヒョンの香水を思い出す。
うゆ「…何をお返ししたらいいんだろう」
悶々としながらも、とりあえずお礼の連絡をしようと意を決してジヒョンのトークルームを開いた。
キャプション
「U-MELLOD」(ユーメロディ)
由来:「君(U)に向けて(-)音楽(MELLOD)を届ける」という意味を持つ5人組ボーイズグループ。
どんなコンセプトも消化するため、天才アイドル集団という異名を持つ。
ファンダム名は「U-HALMONY」(ユーハーモニー、通称ユハモニ)。
・ジュンホ:95年生まれ。長男。メインラッパー。
・シウ:98年生まれ。リードボーカル。
・ジョンソク:99年生まれ。リーダー。メインボーカル。
・ジヒョン:00年生まれ。メインダンサー。
・チャンミ:01年生まれ。サブラッパー、ビジュアル担当。愛称はローズ。
「WellBee」(ウェルビー)
由来:「音楽を通じて”自分らしい豊かな生き方”(=ウェルビーイング)を実現する」「全てをこなすオールラウンダー集団になる(doing WELL + BEcomE)」の意味が込められた5人組のガールズグループ。
現実に少しだけ幻想が混ざったような世界観を得意としており、ダイナミックなダンスと繊細かつ緩急の効いた歌声に定評がある。
ファンダム名は「WeBelieve」(ウィービリー)。
・レミ:99年生まれ。長女兼リーダー。ビジュアル担当。リードダンサー。
・うゆ:01年生まれ。WellBeeの音楽PD。リードボーカル。
・ルイ:02年生まれの01Line(早生まれ)。メインダンサー兼サブラッパー。
・カヤ:04年生まれの03Line(早生まれ)。メインラッパー。
・ヒヨ:04年生まれ。マンネ。メインボーカル。
「BakedChouChou」(ベイクドシュシュ)
100年以上続く欧州の高級ブランド。雫を模したジュエリーや、オーガンジー素材を使用したマーメイドコンセプトのアパレルを得意とする。看板商品である「人魚の涙」という名前の鞄は非常に入手困難であるため、「幻の涙」と呼ばれている。
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