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【創作エッセイ】アイドルになれたら②
※作中に登場する団体や固有名詞等は、現実とは一切関係ありません。全て「うゆ」の夢をもとに書かれたフィクションです。
油にはじかれた水は、どこに行くと思う?
遠く遠く、どこまでも遠く。
元々私はK-POPが好きなただの高校生だった。
周りに同じ趣味の子がおらず、いつも1人でスマホの画面と向き合ってた。
好きなものを好きと確信できるなら、たとえ友達がいなくても幸せだと思ってた。
でも、友達ができたらもっと楽しくなった。それがルイだった。
ルイ「ダンスチャレンジ一緒にやってくれない?」
ショートカットにジャージ姿の、いかにも踊れますって感じのオーラを放ってた。第一印象は、陽の人間。
私はもちろんダンスは未経験で、足も遅い。おまけに顔面偏差値も普通。
これといった取り柄もないのに、なんで私を誘ってくれたんだろう。
そんな疑いの目を向けた私を、ルイは笑いと共に一蹴した。
ルイ「やったことないならいい機会じゃん。意外とハマるかもよ?」
以前から「踊ってみた」動画をSNSに投稿していたらしいルイには、フォローが500人もいた。
ルイ「この曲なんだけど…」
そう言って見せてくれたのは、私も大好きな男性グループ「U-MELLOD」(ユーメロディ)の日本オリジナル曲「雨上がりに」。ハモリや掛け合いが美しいミディアムバラードで、「どんな雨にも終わりはある 雨が上がれば青空が見えるよ」というメッセージが込められた応援ソング。
タイトル曲でもないのに知ってるなんて、もしかして…。
うゆ「ユメロ…好きなの?」
ルイ「うん、来月スタジアムライブ行くんだ~」
うゆ「えっ、いいなぁ…誰推し?」
ルイ「ジョンソクとジヒョン」
うゆ「えっ、私もジョンジ好きなんだけど」
ルイ「えっ、マジで?!」
うゆ「マジ」
「言葉は素っ気なかったけど、顔はめちゃくちゃ嬉しそうだったよ」と今でも言われる、ルイと私が初めて意気投合した瞬間だった。
ルイ「この曲、まだダンスがないんだよね~だから、取り急ぎ振り作っちゃった」
振りを、作ったって????
自主制作するオタクを目の当たりにしたのが初めてだったので、何度も聞き返した。その度に「そんなに驚くことじゃない」って言われた。
全ての芸術は、誰かが生み出したから存在している。それを享受して楽しんでるのが私たちファン。そのありがたみは誰よりも感じている。
それをまさか、こんなに近くで目撃するなんて思わなかった。
ルイ「じゃあまず右手で敬礼して…次は左手も同じね?それから~…」
ルイの振付は単純ながらもキャッチーで真似しやすく、何より曲の世界観を邪魔しないシンプルで可愛いものだった。同い年でこんな才能を持った子がいるなんて、世間は広いなって思った。
それと同時に、何故か「負けたくない」という気持ちが強くなった。
うゆ「ねえ、ルイ。私も何か作ってみたい」
ルイ「いいじゃん!じゃあさ、なんか短い曲作ってみてよ!」
うゆ「曲?私、作曲なんてやったことないよ」
そう言うと、ルイはあっけらかんと言った。
ルイ「やったことないならいい機会じゃん。意外な才能が開花するかもよ?」
ハッとした。さっきも同じくだりがあった。
この子は挑戦を恐れてない。むしろポジティブに捉えてる。私とは全然違う。
このときに悟ったよね、自分って本当に無知だなって。
そして同時に、変わりたいと強く思った。
うゆ「…頑張ってみる」
ルイ「うん!完成したら一緒に踊ろ~」
そうやって見よう見まねで始めた作曲も、最初は全くできなくて泣きたくなった。普段大好きで聴いてる曲がどんな音で構成されているのか、知識が全くなかったから。
でも、できないって決めつけて諦めるのはやめた。わからなければ調べたらいいし、やったことなければやってみたらいい。失敗しても学びだと捉えて試行錯誤したらいい。
ルイが教えてくれた挑戦への姿勢が、自分も知らない自分を呼び覚ましていった。
その後、オリジナル曲のダンス動画が20本を超えたあたりで会社の人の目に留まり、紆余曲折を経て今に至る。
今でもあの頃の話をしては懐かしい気持ちになる。
うゆ「なんであの時声かけてくれたの?」
ルイ「え~なんか自分の殻に閉じこもってる雰囲気が自分を見てるみたいだったから」
きっとあの頃から全て繋がってたんだ。
ルイ「ちょうどあの頃SNSが先生に見つかって怒られちゃってさ、クラスの子たちからも白い目で見られてたからもうやめなきゃって思ってたの。でもさ、いざうゆの曲で踊ってみたら楽しいのなんのって。だからもう絶対やめないって決めた」
ルイのまっすぐな言葉は、今も昔も変わらずに私を突き動かす。
うゆ「私たちさ、油に混ざれなかった水よね」
ルイ「マジそれ」
うゆ「でもさ、水って油よりも相性いいもの多いんだよね」
ルイ「なんでも巻き込むし浸み込めるし」
うゆ「万能よね」
ルイ「まさに私らみたいな?」
昔の自分なら絶対に肯定出来なかったけど、今は自信満々に頷ける。
うゆ「私ら以外いないでしょ?」
油にはじかれた水は、どこに行くと思う?
遠く遠く、どこまでも遠く。
そして自分が輝く場所を見つけるの。
この世には油だけじゃない、いろんな食材があるから。
キャプション
「U-MELLOD」(ユーメロディ)
由来:「君(U)に向けて(-)音楽(MELLOD)を届ける」という意味を持つ5人組ボーイズグループ。
どんなコンセプトも消化するため、天才アイドル集団という異名を持つ。
ファンダム名は「U-HALMONY」(ユーハーモニー、通称ユハモニ)。
・ジュンホ:95年生まれ。長男。メインラッパー。
・シウ:98年生まれ。リードボーカル。
・ジョンソク:99年生まれ。リーダー。メインボーカル。
・ジヒョン:00年生まれ。メインダンサー。
・チャンミ:01年生まれ。サブラッパー、ビジュアル担当。愛称はローズ。
「WellBee」(ウェルビー)
由来:「音楽を通じて”自分らしい豊かな生き方”(=ウェルビーイング)を実現する」「全てをこなすオールラウンダー集団になる(doing WELL + BEcomE)」の意味が込められた5人組のガールズグループ。
現実に少しだけ幻想が混ざったような世界観を得意としており、ダイナミックなダンスと繊細かつ緩急の効いた歌声に定評がある。
ファンダム名は「WeBelieve」(ウィービリー)。
・レミ:99年生まれ。長女兼リーダー。ビジュアル担当。リードダンサー。
・うゆ:01年生まれ。WellBeeの音楽PD。リードボーカル。
・ルイ:02年生まれの01Line(早生まれ)。メインダンサー兼サブラッパー。
・カヤ:04年生まれの03Line(早生まれ)。メインラッパー。
・ヒヨ:04年生まれ。マンネ。メインボーカル。
©2023 うゆ <https://note.com/uyu_toxic0v0/>
Graphic powered by Canva
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