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【創作エッセイ】アイドルになれたら⑩

※作中に登場する団体や固有名詞等は、現実とは一切関係ありません。全て「うゆ」の夢をもとに書かれたフィクションです。


夢なら覚めないで。


緊張と疲れで泥のように眠り、予定より1時間早く目が覚めた。
昨夜のことは全部夢だったのだろうか。いや、確かにジヒョンは「明日の夜、迎えに行く」と言った。

寝ぼけまなこでスマホのトークルームを開くと、ジヒョンからメッセージが来ていた。

『明日は動きやすい服で来てください!色は黒です!』
『あと、20時にホテルの前で待っていてください』

やはりそうだ。決戦は今夜。

今日は午前中に店舗での撮影、午後はカフェに行くか展示を見に行くかと思っていたので、白いブラウスとベージュのスラックスしかない。

うゆ「とりあえず午後はお洋服買いに行こ…」

『承知しました。では20時によろしくお願いいたします。』

そう打って画面を閉じた。


目まぐるしく時間が過ぎ、日が暮れる。沈んでいく太陽と薄暗くなっていく空に、静かに心を落ち着かせる。

服装はかなり悩んだ結果、黒のリブタンクトップに黒のジーンズ、グレーのシャツを合わせ、ぺたんこ靴を履いた。髪はお団子にして、ジヒョンに貰ったヘアピンとピアスをつけた。
せっかく本人に会うのだから、実際に付けたところを見せるのが礼儀だろう。そう思ったからだ。

下心では一切なく、2人で過ごせる時間があるうちに少しでも多く好印象を植え付けたいのが本心。これまで散々虜にさせられたので、ここからは自分のターンにしたい。その一心で入念に準備した。

しばらくしてホテルのエントランスにタクシーが停まり、車内から黒いパーカーとジーンズ姿のジヒョンが顔を出した。

ジヒョン「うゆさん、お待たせしました。乗ってください」

うゆ「ありがとうございます」

ドアを閉めるとすぐに発車した。慌ててシートベルトを締め、荷物を膝の上に置き直す。

ジヒョン「大丈夫ですか?韓国のタクシーは忙しないですよね」

うゆ「そうですね…お気遣いありがとうございます」

ジヒョン「あ、ヘアピンとピアス似合ってますね。可愛い」

うゆ「あ、ありがとうございます」

至近距離で「可愛い」と言われ、一気に緊張感が高まる。

うゆ「せっかくいただいたので、ジヒョンさんに見ていただきたくて」

ジヒョン「嬉しいです。特別な予定のときに身につけるって言ってましたもんね」

うゆ「あ…」

しまった。自分が言ったことなのにすっかり忘れていた。

ジヒョン「それって、僕とのお出かけが”特別なイベント”ってことですか…?」

うゆ「そう…なりますね」

ドギマギしていると、ジヒョンは微笑んで私の頭をそっと撫でた。

ジヒョン「うゆさんも楽しみにしてくれて嬉しいです。僕も楽しみにしてました」

フードからのぞく青い前髪と、すっぴんなのに血色の良い肌、光を宿した瞳が至近距離まで迫る。

不意打ちの連続で既にキャパオーバーな私とは違い、ジヒョンは到着までマイペースに話を続けた。


キャプション

「U-MELLOD」(ユーメロディ)
由来:「君(U)に向けて(-)音楽(MELLOD)を届ける」という意味を持つ5人組ボーイズグループ。
どんなコンセプトも消化するため、天才アイドル集団という異名を持つ。
ファンダム名は「U-HALMONY」(ユーハーモニー、通称ユハモニ)。
・ジュンホ:95年生まれ。長男。メインラッパー。
・シウ:98年生まれ。リードボーカル。
・ジョンソク:99年生まれ。リーダー。メインボーカル。
・ジヒョン:00年生まれ。メインダンサー。
・チャンミ:01年生まれ。サブラッパー、ビジュアル担当。愛称はローズ。

「WellBee」(ウェルビー)
由来:「音楽を通じて”自分らしい豊かな生き方”(=ウェルビーイング)を実現する」「全てをこなすオールラウンダー集団になる(doing WELL + BEcomE)」の意味が込められた5人組のガールズグループ。
現実に少しだけ幻想が混ざったような世界観を得意としており、ダイナミックなダンスと繊細かつ緩急の効いた歌声に定評がある。
ファンダム名は「WeBelieve」(ウィービリー)。
・レミ:99年生まれ。長女兼リーダー。ビジュアル担当。リードダンサー。
・うゆ:01年生まれ。WellBeeの音楽PD。リードボーカル。
・ルイ:02年生まれの01Line(早生まれ)。メインダンサー兼サブラッパー。
・カヤ:04年生まれの03Line(早生まれ)。メインラッパー。
・ヒヨ:04年生まれ。マンネ。メインボーカル。

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