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憧れのジャパニーズマッターホルンを目指して①

時は遡ること、2017年の9月27日。
ジャパニーズマッターホルンこと、《槍ヶ岳》を目指すべく中房温泉登山口へと向かう。
今回の行程は、中房温泉登山口から燕山荘を経由し大天荘で1泊し、東鎌尾根を通って槍ヶ岳ヒュッテに泊り、翌朝槍ヶ岳山頂を目指し、上高地まで下る2泊3日の旅だ。通称”表銀座縦走コース”とも言われている。
ポイントとしては、東鎌尾根は3段梯子や鎖場といった難所がある。また、槍ヶ岳山頂までの道のりは岩肌を登ったり垂直な階段を上がることになる。
私はこれまでの登山計画では、日本アルプス登山ルートガイドを参考にしながら危険個所のレベルを把握し段階的な山行を行ってきた。
今回、ソロでの縦走登山を行うにあたり、甲斐駒ヶ岳~黒戸尾根~を日帰りで登っている。

これで準備はバッチリだろう。
いや、一番搾り350mlがリュックに入らない。そのおかげで、乗りたかった電車には乗れずビールも車の中に置いていくことになった。
今回の山行では、食事は全て自炊で賄うことにした。リュックは50Ⅼ容量のものにした。また、車を停めた駐車場から電車乗り、帰りも電車で帰ってこられるようにルート設計をした。
なのに初っ端から予定外である。通勤・通学電車に揺られ、穂高駅に着く。
本来ならここからバスで中房温泉まで1700円行けるはずなのに、タクシーに7000円払うことになる。幸いにも山に詳しい運転手さんで、これから登る山のうんちくを教えてくれ、気持ちは上がりそうだ。

登山口である中房温泉から第1チェックポイントである燕山荘までは、北アルプス三大急登の1つである合戦尾根を通る。それ以前に出だしが辛い。
登山開始の高揚感とは裏腹に太ももと胸がくっつくほどの急な坂道を登らされる。50Lのリュックは頭上以上の高さがあり、重さにつられてバランスをとるのが難しかった。それでも電車に乗り遅れる失態を取り戻すべく、懸命に登る。確か、午後から天気が崩れる予報だった。

合戦尾根を通過している時、一人の女性と話す。
この方も槍ヶ岳に恋をして仲間を置いて一人で登ってきた方だったか、燕岳に惚れて一人でも登らずにはいられなかった方か忘れてしまったけど、一人でもどうしても山に登りたかった同士の一人だった。その頃、辺りはガスっていて秋の稜線を楽しむ状況ではなかった。でも、泊りだから天気が回復することを期待しながら歩き続けた。

燕山荘で昼食を摂り、大天荘を目指す。
今にも雨が降りそうな曇り空に紅葉が移る。よく分からないけど遠くに見えるのが大天井岳だと思い、沢山写真を撮った。はっきりしとした山で台形のような山容だった気がする。視界がある稜線歩きは気持ちが良い。

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そろそろ日が沈みそう頃、雨が降り始める。
大天荘の麓までやってくると、足元に小さな看板に1/10と書いてある。ここから急斜面になり、等間隔に記しがしてあった。まるで、天国の階段を上っているかのような感覚だった。朝早く家を出て、ハプニングにも見舞われながら慣れない重さのリュックを担ぎ、今どしゃぶりの中最後と思われる急斜面を登っている。そんなことを思いながら一歩一歩進み、今晩お世話になる大天荘に着く。

大天荘はロフトのような2段ベッドで3畳間に2人で使わせてもらった。
隣の方は、私より少し年上でT県から来た男性だった。歳が近かったこともあり、話しやすい方だった。話した内容は忘れてしまったけど、せっかくだから山で出会った人とお酒が飲めるようにウイスキー白州を持参していたのだけど、その方はお酒が飲めない方だった。なんなら、カフェでミルクココアを頼んでいて、私一人なんだか酔っぱらいそうだった。

この日の夜は雨と風が強く、建物の全体に音が響き渡っていた。


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