UXマンがUXの仕事をやめて、事業会社を始めました。
UXの仕事だけをやってきた
ここ数年、UXデザイン・リサーチだけやってきました。
SNS上でもUXマンを名乗り、個人でのUXデザイン・リサーチの仕事をクライアント企業相手に行い、登壇し、記事を書き、時にはイベントの主催もしました。
また、デザラボというフリーのUXデザインチームとしてのお仕事も行っていました。
ユーザーと触れ合ったり調査したり観察したり...といったUXデザイン・リサーチのお仕事はとても楽しいものであり、課題や価値を見出しソリューションを導く、クリエイティブな仕事でした。今も変わらず好きです。
しかし今後は、後述の理由から、今お受けしているクライアントを最後に、UXのお仕事を引き受けるのをやめます。
UXデザインのスキルを他人のために使うことに飽きた
UXデザイン・リサーチの仕事は好きなのですが、このスキルを他人のプロジェクトのために使うことに飽きている自分がいました(身も蓋もないですね)。
具体的には、リサーチにしてもデザインにしても、自分の中で結論が出てしまうと、継続してチームに貢献する意欲を失うことが頻発したのです。自分にとって受託は、どう足掻いても他人のプロジェクトのための仕事でした。
また、国内のUX界隈はとても活況に見えますが、実のところ国際的にレベルが高いとは言い難く、狭く小さいものです。
国内でのUXのお仕事はもうある程度やり切ったように感じており、これまでと同じように仕事をしていても、スキル・キャリア両面からこれ以上は面白くならなさそうな市場に見えました。
これらの理由から、今後しばらく、公にはUXのお仕事を一度すべて打ち切ります(友だち等からの依頼で非公式にちょいちょいやることはあると思います)。
より直接的なきっかけは事業売却
UXのお仕事をやめるもう1つの理由として、自分のUXデザイン・リサーチへの感覚とはまた別の事件もありました。
それは、自分が個人でチームを作り開発・運用していたプロダクトに、M&Aの話が上がったことです。
9月後半にオファーを頂き、11月に話がまとまりました。去年末に事業譲渡を終えています。
株式会社エイシス、ASMR好きのための動画アプリ「ZOWA」を事業譲受
事業会社を設立しました
そして、この売却の母体として会社を1つ設立しました。
名前は、株式会社SUIHEI。
社名は、尊敬する故・横井軍平さんの「枯れた技術の水平思考」から。
M&Aの話は自分たちにとって降って湧いた話。当然、会社設立も周到に計画されたものではありません。
もともと設立の予定があったにはあったのですが、開発していたプロダクトのUXと数値を高めること、そして資金調達のための投資家回りが優先でした。
ちなみに売却に際してはポジティブな思いもネガティブな思いも様々あったのですが、ここでは割愛。いつか話すことにしましょう。
UXマンのまま連続起業家になる
UXデザイン・リサーチの受託をやめた後に自分がやることは、既に明確に決まっています。
それはSUIHEI社で連続して複数の事業を起こし、それぞれを満足するまでやり切ること。いわゆる連続起業です。
SUIHEIはたびたび一緒に仕事をしてきた相手でもあり友人でもある谷口くんと共同創業したのですが、彼とも設立時に同じ話をしました。SUIHEIは、新しい事業を起こす器となる、と。
そして彼とともにSUIHEI社では既に複数の事業を立ち上げ、成功と失敗を繰り返しています。
例えばSUIHEI社として最初に立ち上げた事業 タトゥーシールブランドのsuhadaは順調にブランドとして成長しつつあり、メンバー数も直近拡大中。現在も採用活動を行っています。
UXマンであり続ける
suhadaのように、今後SUIHEI社では事業を作り続け、自分はそれに集中していきます。
ただ、UXの受託をやめるといっても、UXデザインそのものをやめるわけではありません。
培ったデザイン・リサーチの技術はほぼ全てのケースで役に立つものなので、今後も継続してUXの仕事をし続けるでしょう。ただその対象は、ほとんど自社の事業のみになります。
会社を成長させる戦略的な意思
自分はいま、SUIHEI社の成長を願っています。連続起業家、つまり経営者としては当たり前のことです。
しかし、自分が経営するのであればその成長は「よい会社・よいチーム」であることで実現したいと考えています。
自分は、UXデザインの仕事を通して、様々な人のことを共感的な視点・メタ的な視点で見てきました。その姿、その行動、その心を見てきました。あるいは、様々なデスクリサーチから、人や会社にまつわる多くの調査結果やレポート、データを噛み砕き、解釈してきました。
その中で得た、経営に関するとてもシンプルな結論が2つあります。
それは、
① 一生懸命コミットする人が多ければ大体の会社は成長する
ということ。そして、
② コミットによって生まれた会社としての潜在的・顕在的な能力の総和が最も成長に寄与する
ということです。
①をエンゲージメント、②をケイパビリティと呼び、
自分はこの2つを、社内に向けて行うUXデザインで構成された「UXマンらしい」チームビルディングによって達成することを目指しています。
特にケイパビリティは、会社の地力と言うこともできるでしょう。これは市場規模やポジショニングといった小手先の論理の約3倍の寄与度を持つと言われ、場合によっては「運」よりも強い寄与度を持っています。
このことはアカデミックなレベルで歴史的に決着が付いているようで、そのことを知った時は驚きました。一方、自分の感覚とも合致しているため受け入れやすいものでもありました。
スキルを水平思考できる幸運。チームビルディングでチームのExperienceを高める。
チームビルディングという新たな仕事を見つけられたことは、自分にとって幸運でした。
なぜなら、UXのスキルを活かせることであり、個人的な関心が高いことでもあり、そして経営に求められることでもあるからです。
この3要素が揃った仕事を、人は天職と呼ぶのだと思います。自分はUXに続き、新たに天職を見つけることが出来ました。とても幸運なことです。
ちなみに、UXデザインやサービスデザインの思想が組織のデザインに派生することは珍しくありません。
例えばHR領域ではしばらく前からEmployee Experienceという言葉が生まれていて、User Experience、Customer Experienceから連綿と続くUXの息吹が感じられます。このEmployee Experienceは、その良し悪しが企業の成長率と相関することが、複数のリサーチによって明らかになっています。
また、国内ではUXデザイン出身者がデザイン組織のリードや開発組織のリードを行い、細かな言葉の違いはあれどチームビルディングをデザインと解釈しておられるケースも見られます。
一見そう見えないかもしれませんが、個人的には、UXという分野で再度、最前線に舞い戻ってきた感覚です(実のところ、飽きていたことでUXの前線からは心が離れていました)。
SUIHEI社の仲間を募集しています
SUIHEIでは既に複数の事業を運営していますが、まだまだ満足していません。もっともっと挑戦し、作っては壊すサイクルを早く・たくさん回したいと思っています。
具体的には、事業売却で生まれた資金を1年間で全て使い切りたいと思っています。
ここまで読んでくれた人の中にもしこんな人がいたならば、ぜひ声をかけてください。
・世の中に新しい事業を生み、育てたいという人
・立ち上がった事業の1→10をやりたい人
・予算を自由に使って事業を成長させたい人
事業アイデアなんかはあっても無くても構いません。給料だって株式だって、欲しいだけ充分渡しましょう。
ツイッターでいつでも待ってます。
── それでは。
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