クリエイターと共に創る、顧客を熱狂・ワクワクさせる企画術とは ── ロッテ 本原正明さん×UUUM 市川義典
こんにちは!UUUM noteです。UUUMが開催する企業様向けセミナー「Influencer Marketing Day」vol.3(オンライン開催)にて、株式会社ロッテの本原 正明さん をお迎えして「クリエイターと共に創る、顧客を熱狂・ワクワクさせる企画術とは?」をテーマにお話しいただきました。今回は、本原さんとUUUM CMO 市川義典によるトークセッションのダイジェストをお届けします。
◇1 マーケティングプラン、コミュニケーションデザイン戦略で忘れてはいけないものとは
誰に何を伝えたいか、その目的が明確か
(市川)
このトークセッションでは、本原さんに質問させていただきながら、ディスカッション形式で進めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
最初の質問です。「マーケティングプラン、コミュニケーションデザインの戦略などの戦略を考えるとき、忘れてはいけないものとは何でしょう?」
ロッテさん全体というよりは、本原さんのお考えを聞かせてください。
(本原さん)
何を目的としてやっているのか、誰に伝えたいのか、が明確でない企画はたぶん伝わらないと思っていて、ここがすごく大事だと思います。「上層部から言われました」「他社さんの施策で話題になっているから、やってみたいです」というような、単に戦術的だったり最後のアウトプットだけを意識したものは、いい企画にならないと思います。そういう時は企画の中にお客さんがあまり存在していないと思っています。逆に、そこが明確だと、壁にぶつかった時に踏ん張れるんですね。
誰に何を伝えたいか、その目的が明確になっているかどうか、これがワクワクする企画を作ってヒットさせられるかの、ポイントだと思います。
いろんなメンバーによるアイデアの掛け算
(市川)
お菓子の企画の場合、10 代やさらに低年齢層のお客様に面白がってもらえるもの、楽しんでもらえるものを考えるわけですが、そこに限界はきませんか?
(本原さん)
そうですね、一人ではたぶん考えられないです。私自身5歳と3歳の子どもがいるので、その世代の子たちがどういうことが好きなのか、日々の生活の中で気づくこともあります。でも、小中高生が興味があることについては、自分から探しにいかないといけないですね。
そういう意味では、いろんな知見を持ったメンバーがいますし、幅広い世代の人がいます。そういうメンバーを入れて企画を作っていく方が面白くなるというのは実体験的にあります。いろんなメンバーが組み合わさることによる、アイデアの掛け算だと思っています。
◇2 マーケティングにおいてインフルエンサーが寄与できることとは
大好きという前提がある上での「ズレ」だから良い方向にいく
(市川)
続いてのお題です。マーケティングにおいてインフルエンサーはどんなことに寄与ができるとお考えでしょうか?
一例ですが、はじめしょちょーが「コアラのマーチ」のデザインをするという企画の中で、まさかのコアラではなくカンガルーを描いて、その時は弊社の担当も青ざめたと思いますが、むしろそれを企画に活かすことができたという事例がありましたね。
(本原さん)
はじめしゃちょーさんがもともと「コアラのマーチ」がお好きだということから起用していたので、その熱量が伝わってきました。だからクリエイターさんがあえて作ったズレというかオチがあの「カンガルーのマーチ」になったんだと感じました。もちろん「おいおい・・・」みたいな声もあったんですが 笑
私は、今の時代の購買は 認知から始まるのではなく、共感から始まると考えているので、はじめしゃちょーさんのもともとのキャラや「コアラのマーチ」を大好きという前提があった上での「ズレ」だからこそ、良い方向に行くんじゃないかと考えたんです。
一緒に創ることで共感を生み、売れることにつながる
(本原さん)
「カンガルーのマーチ」の全国流通はさすがに難しいので、オンラインストア限定でしたが、そうやって共感を生み出す方向にシフトしたことによって非常に反響ありました。「コアラのマーチ好きだからやっちゃったね」「ボツ案も商品化されるなんて、それだけ好きなのを認められてよかったね!」というようなポジティブな反響ですね。
そういう意味で、やっぱり「共感」が、インフルエンサーがマーケティングに寄与するところだと思います。
「YouTuberを起用したら売上が上がりますか」と聞かれたら、起用だけで上がるわけではないと思います。僕は、共創する部分や熱量、伝播する面白さというのをどれだけ創れるかが勝負の分かれ目だと思っています。
それを一緒に創ることでストーリーが生まれて、お客さんに伝わって、共感を生んで、売れることにつながると考えているんです。
ブランドに関わる方の理解を得られてこそ
(市川)
「共感」、そうですね。「共感マーケティング」という言葉も登場しましたし、僕らUUUMも、体験を重要視しましょうという意味で「エクスペリエンス」を掲げていた時期がありました。
そして、前回ワコールの池野さんに登壇いただいたときにも、社内で企画を通す労力についてお話しいただきましたけれども、偶然の産物で「カンガルーのマーチ」が出てきてしまったわけで、それを社内で通すために大変な思いをさせてしまったんじゃないかなと思ったんですけど、どうやって実現されたんですか?
(本原さん)
「コアラのマーチ」ブランド担当や「コアラのマーチプロジェクト」に関わる外部の方の理解を得られてこそですので、そこは担当が結構頑張ってくれたと思います。それに、リスクマネジメントの観点もあって。その点、クイックにアジャイルで試せるオンラインストアというプラットフォームを選んだことも実現できた要因だと思います。
◇3 今後どんなインフルエンサーマーケティング、コンテンツマーケティングをしていきたいですか
できる理由をポジティブに考える
(市川)
さて、続いてのお題です。今後どんなインフルエンサーマーケティング、コンテンツマーケティングをしていきたいですか?
(本原さん)
UUUMさんとLOTTEというだけではなく、3社や4社5社が目的を明確にして、組んでいけると面白いかなと思っています。相乗効果が1+1が2ではなく、掛け算で10にも100にもなるようなを意識できるといいんじゃないかと。
(市川)
まったく偶然ですが、1回目のUSJ平山さんも、2回目のワコール池野さんも同じことを仰ったんです。複数のブランドを掛け合わせながら、面白いことをできると拡散につながるのではと。そういった複数ブランドでのコラボのハードルとして、どんなことが挙げられますか?
(本原さん)
私としては、ハードルはあまりないと思っています。もちろん、費用面や各ブランドの考え方の違いなど、調整が必要なこともたくさんあると思います。ただ、複数ブランドが掛け算すると、相乗効果でそれぞれを好きな人たちが入ってくるので魅力的だと思うんです。
できない理由を考える前に、できる理由をポジティブに考えていければ、実現できると思います。逆に言うと、一番のハードルというか実現できない要因があるとしたら、「できないんじゃないか」と決めてかかる自分自身だと思います。なので、僕は「絶対できると思うこと」は常に決めていますね。
距離感が離れているものは、面白い
(市川)
掛け合わせたら面白いと思う、業種とかサービス、プロダクトなど、考えていらっしゃるものはありますか?
(本原さん)
距離感が離れているものは、面白いと思いますね。たとえば、私が担当する「ビックリマン」が江ノ島水族館とコラボしたことがあって、めちゃくちゃおもしろいじゃないですか、と反響あったんです。
普通に考えたら水族館という選択肢はなかなかないと思います。ただ、江ノ島水族館には、30 代40代というビックリマンのターゲット層の方たちが家族、お子さんと来ているんですよ。親子でビックリマンを楽しんでもらうには水族館はいいんじゃないかと、お声がけさせていただいてコラボが実現しました。その距離感にびっくりしましたという反応が多かったですね。
自分たちお菓子メーカーから水族館って距離があるんですけど、エンターテイメントという意味では同じだと思うんですよね。一本筋が通っている中で、いかにちょっと距離があるところとやっていくかというのはすごく大事な気がしています
(市川)
「ビックリマン」はこれまでいろんなコラボをしてきたと思います。企業秘密かもしれないですけど、なぜコラボをしようと考え、実現されてきたのかを教えてください。
(本原さん)
ビックリマンのコアなファンは30-40代で熱狂的な方も多いですが、私が担当するようになった頃はファン層の固定化もありました。ファンのすそ野を広げなければ継続的なブランドの成長がないと考えて、入り口をたくさん作りたいという思いからコラボレーションをさせていただいています。
だから、アニメ、AKB、芸人さん、水族館、千葉ロッテマリーンズなど、いろんなコラボを通じて、興味の入り口をたくさん作ろうと。いかにタッチポイント、エントリーポイントを作るかということを意識しています。
◇4 UUUMの強みと改善点とは
あらゆる可能性を模索して、前向きに検討する
(市川)
次のお題です。我々UUUMの良いところと、改善点、もっとこういう風にしてほしいとか、こうしたらもっと面白いことができるじゃないかというよなご意見などあればぜひ伺いたいです。
(本原さん)
まずはUUUMさんの良いところ。担当のヨシイさんとはフランクなやりとりをさせていただいていますが、色々とやりたいことをぶつけたときに「できるかどうか確認してみます」とか「こういうことだったらできる可能性あります」と前向きに一緒に考えてくれるんですね。
だから、単なる仕事相手というより、企画を作り出すパートナーのイメージで信頼させていただいています。たぶん、UUUMさんにはそういう面白いパーソナリティを持った人が多いんじゃないかなと思っています。そこはUUUMさんの強みなんじゃないかと。
改善点は正直ないんですけども、ひとつ挙げるなら、施策動画の公開直後にクリエイター関係のトラブルが発生してしまったことがありまして。その時はもう、市川さんもすぐに代案など動いてくださいましたが、そういった事態を防止するリスクマネジメントに力を入れていただけると、もっと安心して取り組めるんじゃないかと感じました。
(市川)
ありがとうございます。そういうお話を直接伺えることが改善につながると思います。クリエイターやインフルエンサーにとっても、広告主から費用をいただいているという事実は大きいですし、その重要性はクリエイター向け研修でも、僕から話をさせていただいています。クライアント様からの生の声をクリエイターにお伝えできることは、僕らにとって良いことでもあり、より増やしていかなければと思っています。
◇5 アイデアはどのように生み出していますか?
雑談からアイデアを考える
(市川)
では、次のお題です。企画のアイデアはどのように生み出していますか?
(本原さん)
私の場合は、アイデアを考えようと思ってアイデアを作っていることはあまりないんです。自分だけでは考えが凝り固まってしまうことがあるので、いろんな人との雑談の中で「こういうことを考えてるんだけど」と話してみると「こういう風にしたらもっと面白くない?」「あ、これいけるかもね」みたいな、面白い目線が出てくることが多いです。
(本原さん)
いろんな人の視点を入れることでアイデアをブラッシュアップしていくと面白くなるので、私自身、意識して他社の方と交流するようにしています。いろんな会社の方たちと雑談させていただきながら、自分自身を磨いていき、アイデアを作っています。
それから、多動力も大事ですね。いろんな仕事を一気に回していくと、いろんなところでいろんなアイデアが出てくるのでそれを掛け算します。アイデアの切り口の見せ方の違いがイノベーションになると思うんですが、そういうことを雑談から生み出しているというのが、私のアイデア術かもしれません。
ギブ & ギブ & テイクの精神で
(市川)
僕も、この前、本原さんと雑談させていただいて、気づきもありましたし、共通の知人がいることがわかったりして、一緒にお話しさせていただいたらまた新しいアイデアが生まれそうだと思いました。
(本原さん)
そうですよね。今日このセミナーの参加者の皆さんとも、なにかアイデア作りたいです。
(市川)
打ち合わせというより、リラックスした場の方が面白いアイデア生まれそうですよね。ああだこうだ、あれどうなってんだ、これどうなってたんだっていう、そういう場だからこそお話できることもあると思うので、我々も、クライアント様同士のそういう会は面白いのではと思うんです。
そういった交流の会というのは、本原さんはどのように開かれているんですか?
(本原さん)
僕自身は「この人とこの人を繋いだら結構面白そうだな」とか、共通の知り合いがいるのがわかったら「とりあえずご飯行きましょうか」と、損得ではなく、単純に面白いかどうかです。
大事なのは、ギブ アンド ギブ アンド テイクの精神だと思っているんです。与えて与えてそして最後自分に返ってきたらラッキーぐらいの、そんな精神でやっていたら報われるときがあるんじゃないか、報われるために自分も頑張れと。そこは自分の戒めにしながらですね。
いろんな人たちが繋がって、世の中をワクワクさせて日本が笑顔になればいいなという思いでいろんなことをやっています。
(市川)
ちょうど僕も先日、同業の方とご飯にいきまして。競合じゃないの?と言われそうなところですが、結果「市場としてこういうところを直していきたいよね」とか「インフルエンサーの価値を上げていきたいよね」という話をしました。今度、本原さんとも一緒に会話できたら、4個5個のコラボができるんじゃないかと思うんです。
(本原さん)
はい、ぜひぜひ!
(市川)
企業様同士、コミュニケーションを取ることがすごく重要と感じたこともありまして、今度、セミナーにご参加いただいた皆さまにお集まりいただき、ざっくばらんに会話できるような場を設けさせていただきます。リモート環境だと、なかなか掘り下げる会話がしづらいというような声もたくさん聞きますし。
(市川)
僕自身も、クライアントさんから生の声をいただけないとやっぱり戦略立てられないんですよね。ざっくばらんにお話できる方々といろんな事例を創出できていると思っています。広告主様が本当にどこを目指したいのか、なにを成し遂げたいのか、どういうコンセプトでいきたいのか、どういうストーリーでいきたいのかというのを、膝を突き合わせてお話させていただく方が、本当に良いコンテンツになると思っているんです。
そして、それをインフルエンサー、クリエイター側にインプットしたいんですよね。そうすることでクリエイターからも、もっとこうしたいという意見が出てきます。無理なこともあるでしょうけど、プラスに働くようなこともたくさん出てくると思います。ぜひ、そんなお仕事を皆様とご一緒できればと思いますので、よろしくお願いいたします。
<質問コーナー>
Q. コロナの影響でマーケティングに自信がなくなったときはありましたか?
(市川)
続いて、参加者の皆さまからのご質問をコメント欄でいただきます。
まず、ひとつめの質問ですね「コロナの影響でマーケティングに自信がなくなったときはありましたか?」
(本原さん)
このご質問は良く知っている方からなので「自信満々ですよ」とお伝えしておきます 笑
どれだけ時代に合わせてマーケティングを変えていけるかだと思うんですよね。時代に合わせてマーケティングは変わっていかないといけないと思っていて、それができないと自信を失うことになると思うんですけど、そこをアジャストしていくということだと思います。売れる仕組みづくりも変えていくことも含め大事ですね。
Q. LOTTEフェスの準備期間はどれくらいでしたか
(市川)
次のご質問ですね。「LOTTEフェスの準備期間はどれくらいでしたか」。
とてもダイレクトなご質問をありがとうございます。
(本原さん)
そうですね 笑 2021年6月発売で前年8月9月頃から動いていたので、8か月ぐらいでしょうか。多くの食品メーカーさんも一緒だと思いますが、流通の商談などもあるので、時間的にはかかるんですね。8か月から10か月ぐらいかかることもあります。
(市川)
大成功ですか?というご質問もきましたね。
(本原さん)
大成功ですよ!本当に新しい風を切り開いたのではないかと思います。
しかし、本当にLINEのように質問がきますね 笑
(市川)
ちなみにヨシイ君(UUUM ロッテさん担当営業)は、本原さんからLOTTEフェスのお声がけはどれくれらいの時期にいただいたんですか。
(ヨシイ)
半年以上前くらいにいただいたと思います。
(本原さん)
そうですね、たぶん10月あたりですね。まず、社内で企画をどういう目的でどういう形にするのかプランニングした上で相談しなきゃならなかったので。僕が一番心配していたのは、動画を作らずにビックリマンができるのかですね。「きびしいです、でも調整します」と前向きな回答をいただいて「前例がなかったら作りましょう」と話した記憶もあります 笑 そうやってご協力いただいて実現しました。ありがとうございました!
Q. 代理店はあまり利用していないですか?目的や手段によって利用しているのでしょうか
(市川)
では続いての質問。「今日のセミナーで紹介いただいたような企画は、代理店を通さないことによって成立したとのことですが、現在も代理店はあまり利用していないのでしょうか。目的や手段によって利用していたりするのでしょうか」
(本原さん)
広告代理店さんは、ロッテとしては非常に使っています。私自身の企画はあまり使うことはないんですけど。今日ご紹介したケースは代理店さんを使っていないというだけで、代理店さんしかできない領域もたくさんありますので、そういうところではお世話になっているという感じです。
(市川)
ありがとうございます、ちょっとここで宣伝させていただきます(笑)僕らUUUMも総合代理店としてより多くのお客様とお付き合いさせていただきたいと考えております。UUUM所属クリエイターはもちろんプッシュで提案させていただきますが、所属外のクリエイターさん、タレントさん、モデルさん、芸人さんなどもキャスティングし、広告として展開していくような事例もかなり出てきました。そのような、インフルエンサー全般のご提案ができますので、ぜひよろしくお願いいたします。
(本原さん)
それはすごいですね。色々やりたいことがあったら、IMC(Integrated Marketing Communication)的な統合型の提案をいただけるということですよね。UUUMさんには、それを一緒に作れるようなメンバーもたくさんいるので、共創したら面白いかもしれないですね。
(市川)
ありがとうございます。今、掛け合わせのお取組みやお問合せは多いですね。「UUUMクリエイターと外部の誰かの共演で、この商材を紹介してほしい」とか、テレビCMなどの広告でご一緒させていただくとか。
各社様、決まった代理店さんもいらっしゃると思いますが、そういった広告会社さんとUUUMでご一緒してマーケティングプランをご提出するなど、柔軟に対応させていただいております。よろしくお願いいたします。
僕たちUUUMは、経営戦略として「もっとアソビナカマを」というワードを掲げています。企業の皆さま、クリエイターさんインフルエンサーさん、消費者の方々やファンの皆さん、社員のみんな、という四つのカテゴリーのアソビナカマが増えれば増えるほど、市場が拡大していくという考えです。
さきほど本原さんがUUUMを「パートナー」と仰ってくださって、とてもありがたかったです。今日はぴったりのお話をありがとうございました!
今回も UUUM note を読んでいただきありがとうございました。よろしければフォロー&スキ(ハート)をいただけると嬉しいです。フォローしていなくてもスキは押せますのでぜひぜひ!