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スターがいなくなった【6/15日記】

コービーブライアントの死を追悼する式典で、シャッキー・オニールがスピーチをした。僕はその動画を見てスターの死がもたらした悲しみに打ちひしがれた。それからシャックの格好良さに惚れた。二人の間にある物語がシャックの言葉を通して鮮やかに蘇り、その記憶が悲しみと少しのユーモアと共に世界中に共有されたからである。これはコービーと深く関わり合ったシャックにしかできない、最高に粋な追悼であった。

https://www.youtube.com/watch?v=b0qbXx5OsyI

二人の選手時代の関係性は複雑なものだった。戦術や哲学の違いでたびたび衝突があったと本人も様々な場所で告白している。このスピーチの中でも言っていた。エゴイストと称されるほど貪欲なコービーに対して、チームへの貢献に重きを置くシャック。チームの3連覇に貢献した後、二人の関係性が冷え切っていた時期もあったらしい。しかしお互いへの尊敬が損なわれることはなく、時間の経過とともに認め合う仲になっていった。二人ががオールスターのMVPを受賞したとき、コービーがシャックにトロフィーを譲ったというエピソードもある。コービーの引退試合にはシャックが応援に駆け付けた。紆余曲折を経て育まれた二人の友情は、もはや誰にも邪魔されることのない強固なものだろう。

そんな相棒が、突然死んだのである。どれほどの衝撃と悲しみに襲われたのだろう。僕らにはとても計り知れない。スピーチの途中でシャックが時折沈黙し、呼吸を整える瞬間がとても苦しかった。しかし、彼は何度もジョークを飛ばし、自虐し、時に揶揄いながらコービーとの思い出を振り返っている。会場に充満する悲哀と笑いの融合した独特の空気が、スマホの画面越しに伝わってきた。シャックの言葉はコービーの生きた軌跡を輝かせ、人々の記憶に焼き付けるものであった。


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人は死んだら終わりだという人がいる。そうなのかもしれない。死んだあとに何かできるとは思えない。けれど、どこまでそう言い切れるのだろうと疑問に思う自分がいる。例えば死者との関係性は、死と共に消滅するのだろうか。死を受け止めるために、死別の悲しみを乗り越えるために、死者との関係性を断ち切り、死者の存在なしで新しい世界を生きろと言われて、僕たちは普通に生きれるのだろうか。

やっぱり僕は、人との関わりは死後も継続するだろうと思う。僕たちは大切な人を亡くした後も死者との関係性感覚をどこかで持つ続けている。死んでもなお僕たちの生き方に影響を与え、その死の意味を自分の中で再構築していく過程が存在する。そうして死の悲しみと向き合い、それを抱えながら前を向いて新しい一歩を踏み出していくのだと思う。そうした意味で、人との関わりは死後も形を変えて継続されていくのではないだろうか。

一人のバスケットボール選手の死は、様々な形で僕らと関わりを持ち続け、人生に影響を与え続け、そして新しい世界を再び構築する上で重要な意味づけをするのだろう。


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