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:0131 #凪組アンソロジー を20名ずつすべて読む ③池田竜男 さん 〜 瑠璃 さん 編

本気で100名の詩を読みます
「うたもも」として活動して2年ほどになります。そんな私からすると新鮮でない詩のほうが珍しいわけです。まだまだ詩世界を色鮮やかに捉えられる新人として、100名のすべての詩から楽しむ・学ぶことにしました。

読む計画

100名はこのように分割して紹介いたします。知識がないゆえに、ゲストとして寄稿してくださった渡辺めぐみさんと和田まさ子を除いて、どなたがどなたより詩人としての暦が長いなんて事情は詳細には把握しておりません。すべての方が人生の大先輩方(大雑把)です。失礼な表現がありましたら、申し訳ございません。

①渡辺めぐみ さん 〜 高平九 さん 編 (前々回)

②妻咲邦香 さん 〜 オリエンタル納言 さん 編 (前回)

③池田竜男 さん 〜 瑠璃 さん 編 (今回)

41.池田竜男 42.深月水月 43.平野 航 44.群青すい 45.広崎 46.よく冷えた沼 47.郡司乃梨 48.都 圭晴 49.日下捺稀 50.赤井紫蘇 51.楓の木 52.よこむつみ 53.ダブルート 54.高柴三聞 55.松嶋豊弐 56.ともみん 57. .kom 58.ぶるちゃん 59.夏宝 洛 60.瑠璃

④ yellow さん 〜 リウノタマシイ さん 編

⑤うたもも 〜 石川敬大さん 編



※プロフィールは常体にし、各名称の書き方を他の方と統一するために変更している箇所があります。


41.池田竜男 『交叉する馬』

『交叉する馬』
「懐かしいとうもろこしの芯だけが金棒になるように」の表現が好き。芯から黄色い実がなくなると、振り回すしかなくなるから。3つもある「一頭の黒馬〜」の部分は、トリックアートで有名なルネ・マグリット作の『白紙委任状』を思い出した。黒と黒が重なって白い光を発しているところも何かトリックがあるではないか。人間の体付きと馬の体付きを交互に想像した。馬は自身の陰茎も陰門も見れないんだった。兄弟がブリッジした姿は、馬をコンロで炙って反って収縮した姿とも言えるかもしれない。思い出せない母と思い出せた父。相反する要素であらゆる違いについて考えさせられる。

池田竜男 さんのプロフィール
短詩を書いている。メールアドレスはkafka.cactus@gmail.com。



42.深月水月 『エデン、その花のこと』

『エデン、その花のこと』
「(これは祈りではない)」とは、「わたし」はこの視点を押し付けようとも思っていないし不躾に扱われても「わたしの種子をお前が食して 満たされるものがあれば良い」と不満にも思っていない。労働を課さないエデンだ。冒頭の「向こう岸〜ならない」は共感性の暴走を抑え説いている。理不尽さに共感したから助けたいと思われるのは「わたし」にとっておせっかいだ。その花は無償の愛。何回生まれ変わっても花である。人間に生まれ変わって自由に動き回ろうなんて願望もない。

深月水月 さんのプロフィール
ぼちぼちと詩を書いている。note


43.平野 航 『荒野(あれの)に埋り』

『荒野(あれの)に埋り』
地球のあらゆる異常状態。自分は生命のバトンを繋げられない。人間はこの大地の気持ちは想像できない。『僕ら』は生きやすい環境であれとは期待せずに、叶えるために力や熱望を向けたほうがいいと。この考え方は、わたしの座右の銘の『他人に託しただけの夢は叶わない』と似ている。生まれた時から異常気象だと騒がれる世の中だったから、大地が荒みたくなるホルモンバランスなんだろうと、期待はしない。自らの遺体の野葬された先の想像は、全ては荒野に埋まらない。動物に食べられもする。一部だけ埋まるだろうと期待していないところが心地よい。

平野 航 さんのプロフィール
人類社会は暴走者出現防止システムを持てないので、脳細胞数二乗の進化型新人類の皆さんの超理性に期待している。旧型人のとある悩みを残す、日々は笑って生きている。ふと言葉が口をつき、書留めたい、人にみせたい、処女作が絶筆、冥土の土産、ところで、これ、詩?不安の中、機会をくださった方々に感謝。


44.群青すい 『哀しみについて』『杪夏』

『哀しみについて』
「けれど強烈に醒めているのがわかる。」の「けれど」はなぜ「けれど」か。「哀しい」は眠っているのか。「哀しいよ。」だけでは目覚めているとは認められない「哀しみ」。「このこころと〜めぐっている。」で紙人形のように薄っぺらくなった「自分」が縦に急上昇と急下降を繰り返されているように感じる。勢いよく飛ばされながら、そのレーンから外れることはない。「ちいさなホタル」を「羽虫」とも表現している。この世界と対峙すれば、綺麗な存在というよりもすぐ踏み潰される存在なんだと言い換えられていてより思う。

『杪夏』
名残惜しい夏。秋の金木犀の芳しさでも忘れ去れぬ。「そんなにすきじゃなくてもいいでしょう、生きること。」生きるとは夏が秋に移りゆくこと。「曼珠沙華」は死のイメージがある。彼岸の季節の花でもある。「星はひとつもみつからない」けれど、絶望とも違う。「まなうらに咲いた曼珠沙華」が眠るときによくある憧れだ。眠るときの楽しみが書かれているから「灰になる」のも悪くないと思う。2段目は「眼を閉じてぼくは灰になる」だけで虚しい静的な空間が見える。

群青すい さんのプロフィール
読むことも、書くことも、「現実より離れ、なお現実を生きること」。noteにて作品を公開。


45.広崎 

『秤りにことば』
身体障害者目線の詩だとすると、「たとえば何か振り替えて」とは何だろうか。人生が始まる前に、これから体験する人生のスペックを振り直しているのか。「ひとしく重い言葉の話」で終わる。スペックが少数派の状態というよりも、障害者という名称に重心がある。「努力や期待を」「配慮も躊躇も」も秤りに乗せられた「ことば」だろうか。自分で頑張ることと相手に頑張ってもらうことも秤りに乗って実際にできることかどうか判断される。五体満足を「目指す姿」として、素直に努力し続ける。

『褪色と俯瞰』
雨空は「僕の人生を超えず 僕以外の人生を追えず」と、人間が空を追うのではなく、空が人間を追っている俯瞰した世界観。青空であれば、「僕」の人生を超えて「僕以外」の人生を追うこともできる。「口角の傾斜」は上がっていないことだけはわかる。「白に戻れない空」も「僕」と同化して憂鬱。そういえば、憂鬱なときの口角は意識したことがなかった。−10度ぐらいか。「それが示した未来へと」は一般的には明るい意味で使われることが多い。ぶつんと褪色のまま現在と変わらない未来。いつかはきっと晴れるなんて言わない詩。

『看板猫』
こだわりある店の風景。「その隙間に」をそれぞれ形容する「堂々と鳴る」「狭しと並ぶ」「旅の途中の」。音と視覚と時間で補われる隙間情報。『看板猫』

広崎 さんのプロフィール
2023年5月よりX(旧Twitter)にて詩作開始。日陰にも詩がある。


46.よく冷えた沼 『しねない兎としなない牛』『しなない兎としねない牛』

『しねない兎としなない牛』『しなない兎としねない牛』
連作のようなのでまとめた感想にする。兎と牛が「しねない」と「しなない」を交換して担うタイトル。前編では、牛が変化に戸惑い、兎は微動だにしない。後編では牛=私の視点になる。後編の「予言」は「この世の終わり」で、「魂を無くす」ことだろうか。この世が終わっても停止しているだけだから「とこしえの命を得る」ことはできている。「充分に飲み食いし笑ったその後で」と、牛と兎の日常が急に終わってしまった。兎が動じていないように見えていても「前歯が折れる程歪む口」と兎にも「恐れ」はあった。"全て"が停止し「しなない」兎と、兎を想い「しねない」牛。「電子海岸」「低解像度」「ブロックノイズ」など動物の詩の中でコンピューターを感じる言葉も好き。

よく冷えた沼 さんのプロフィール
不定創作団。人を定めず所属せず、詠み人知らずな創作を。沼底に揺蕩う藻のように軽やかに。


47.郡司乃梨 『六月の眠れる夜に しあわせ』『六月の眠れる夜に あんしん』

『六月の眠れる夜に しあわせ』『六月の眠れる夜に あんしん』
これも連作のようなのでまとめた感想にする。「しあわせ」では「Rさん」と「Kさん」の理想的な親子関係が描かれる。「私」と「我が子」の関係よりは良好そうだ。「あんしん」の方を読むと、「私」と私の「母」の関係は暴力的で「しあわせ」ではない。他所の家庭を見てやっと「しあわせ」な家庭を学習できたのだろう。「しあわせ」を手にいれる前に、自身の「あんしん」を確保する段階がある。「私」の夜に爪を切っていい「あんしん」は「Rさん」と「Kさん」のようにSNSで外に見えるものではない。「しゅかたんかたん」で一人っきりの追憶が途切れる「しあわせ」がある。

郡司乃梨 さんのプロフィール
槇晧志氏に師事。「抗」詩文会に参加していた。埼玉文学賞詩部門 準賞」を受賞。佳作は4回。「さいたま文藝家協会賞 準賞」を受賞。「文芸埼玉 小説・随筆・評論・児童文学部門」選考委員。


48.都 圭晴 『詩が生産される未来で』

『詩が生産される未来で』
生成AIが急成長し、いつか人間の喜びや苦しみに押し出されて生まれる詩はなくなってしまうかもしれない。心が揺れたものについてうまく言葉にできなかった。「約束された詩なんてない 約束すらされないから愛おしい」とある。生成AIに頼めば何らかの詩が出てくるがそんな簡単に出てくる詩は愛おしくないのだろう。
生成AIが詩を生産するために蓄えたのは、 言葉 だけである。その言葉になる前の 風景 を見たときの気持ちは学習できていない。人間讃歌。

都 圭晴 さんのプロフィール
自由な詩、が欲しい。「おもしろきこともなき世をおもしろく」が苦手な迷える人間。「組香」代表。「Wonder」に参加。「関西詩人協会」会員。


49.日下捺稀 『花に嵐の例えもあるぞサヨナラだけが人生だ』『午後の五月雨』

『花に嵐の例えもあるぞサヨナラだけが人生だ』
武隆が記した漢詩の『勧酒』を井伏鱒二が訳したときに出てきた言葉。リスペクトを感じる二次創作。外郎売ぐらい声に出して読むのが楽しい。「ん。」に持っていける「じ」の言葉を探し出してきたところがすごい。「羅刹(らせつ)」「小夜啼鳥(さよなきどり)」など日本の伝承がかなり好きな方。わたしは怖い話好きで元々興味はあったのでかなり勉強になる。ここまで文字数を揃えられるところにも驚く。「羅刹の業で有りましょう」ともあるように視点が天からのように感じる。主人公がいるいないを考えるのは野暮。

『午後の五月雨』
大雨を降らすと言われる「蛟」が通ったところには苔が生す。その真っ直ぐな経路が爽やか。先程の『花に嵐の〜』の詩を踏まえると、はっきりとあいうえお作文の形式を決めてから合いそうな言葉を探す形式だろう。にしては、景色に余計な描写がない。「龍神」と出した後で龍によく似たシルエットの「蛟」を出して神秘的なものへの解像度や接近度が上がっているとわかる。「濁流」「苔生す」で自然の何もかも巻き込む理不尽な力とその後にある恵みまで描かれていて7行なのに壮大な「午後」。

日下捺稀 さんのプロフィール
山梨県出身。東京都三鷹市在住。「折り句クラブ」「宮沢賢治学会イーハトーブセンター」「日本英文学会」会員。文学修士。書籍は蝶尾出版社と文芸社より出版。折り句が専門。


50.赤井紫蘇 『その棘』

『その棘』
「結局のところ〜でした」で最初に結末がやってきたかのような文章。「ボットン便所」の「真っ黒な穴」に落ちれなかったのに、とっくに「真っ黒な穴」にいる。最初の結末はフェイクだった。映画『未来世紀ブラジル』のように、分かりやすく読者の前に置かれた結末をひっくり返していく。「便所の国」「瓶ビール」「心は下剤」「脳味噌に到達しビクビクと死ぬ」など汚い生活の表現が「真っ黒な穴」へとコロコロ転がしていく。それらの言葉は、『その棘』を抜くために必要だった。「真っ黒な穴」の中でも生きられる。

赤井紫蘇 さんのプロフィール
2022年より詩作開始。主に詩誌への投稿やX(旧Twitter)、noteなどに誌を掲載。赤い紫蘇でジュースを作るのが好き。


51.楓の木 『八月』

『八月』
「ベランダ〜部分」は自宅だろうか。その後の「続く」は何にかかっているか考えた。掌で握りつぶした棗の糖の香りがまだ続いているようにも感じるし、埼京線が終点まで長いこと続いているようにも感じる。「続く」は、前の文章も後の文章も修飾している。 「偉人の手形」にも棗の果肉がくっつく。 「偉人の手形」から公共の場を感じさせる。寄居虫は元々はベランダ=水路で生きていたが、埼京線に寄り道していたのか。蔦があるベランダは水路だったのか。好きな『八月』を蛇行する。

楓の木 さんのプロフィール
「詩と思想」入選。


52.よこむつみ 『七さいのひろしま』

『七さいのひろしま』
「七さい」は当時の「ばあちゃん」ではなく、その「ばあちゃん」の孫のこと。苦しい時代の話はよくわからないけれど、「ばあちゃん」と共に過ごせる時間は大好きな孫。平和に決まった形はないから、みんなで想像して同じ方向を向いて目指すことは難しいとよく言われる。この孫は具体的に平和を想像できている。戦争の恐ろしさはよく報じられるが、ではどこに向かいたいのだろうか。迎え入れたいのは何か。悲しいや恐ろしいといった気持ちがわかるくらいで、戦争から遠ざかれない。具体的に想像せよ。

よこむつみ さんのプロフィール
1978年広島生まれ。旅をしながら、X(旧Twitter)中心に詩のようなひとりごとをつぶやく。大阪文学学校に出入り。「詩客」「Lyric Jungle」に掲載。平居謙氏に師事。


53.ダブルート 『つまさきに海』

『つまさきに海』
詩のタイトルを素直に解釈すると、冒頭の「陽炎にとろける太陽が水面に月を描き出す」をそのままタイトルの持ってきたのだと思う。水面に足が浸かっていれば『つまさきに海』になる。「罪深きふたり」が「ひとつ」になる侵食し合う関係も示している。詩は全体的に赤くなりゆく。最初は青かったが、愛を重ねて海は赤くなる。もしかしたら、つま先の爪が剥がれているぐらい赤い。「星になんてなれやしない」「愛を敷き詰めてゆくの」はただ「堕ちる」よりも彼らなりの愛の触れ方が表れていていい。

ダブルート さんのプロフィール
石川県金沢市出身。「ココア共和国」傑作・佳作。


54.高柴三聞 『島の暮らし』

『島の暮らし』
沖縄の人ならではの不満。アメリカの軍用機も低所得も県外からのあっけらかんとした印象も人道を無視した開発も、聞いたことはある。それらが全て繋がった実情。全国紙の投稿欄に掲載されていてもいい。沖縄だから低所得でも楽しく華やかに暮らせると思っている人もいるだろう。開発されてもまだまだ綺麗な海はあり、軍用機は夜は休んでいるだろうと。9割の不満に目を瞑る「何だか〜この島の暮らし」。ピザ生地は愛していても、トッピングされたチーズやサラミやトマトペーストは美味しくないようだ。

高柴三聞 さんのプロフィール
「第十二回おきなわ文学賞詩部門」佳作。「KAMA」「コールサック」に参加。代表作は『ガジュマルの木から降ってきた』。


55.松嶋豊弐 『血潮』

『血潮』
「欺きの呪い」とは何だろうか。「古うに愛しい絆」を蔑み、「か細い花に恋い焦がれる」とある。けじめをつけないことが「呪い」であり、ならば暴力でけじめをつけてやろう=「肉」ということか。「益荒男ぶりつつ〜呆れ果てた」から、映画『マッドマックス』のフュリオサのような力強い女性像を感じる。「侍と侍」に「もののふ もののふ」とふりがなが振られてスペースの関係上ぶつかり合っているのが意図していないかもしれないが、戦闘に燃える詩に合っている。調べてわかったが、「せなんだ」は絶滅しかけている関西弁のようだ。意味はわかるが、古めに感じる不思議な言葉だと思う。

松嶋豊弐 さんのプロフィール
兵庫県宝塚市出身。大阪市在住。京都市や岡山市にも居住経験あり。大学でフランス語を専攻。短歌を中心に散文詩や短編小説を作っている。X(旧Twitter)やMastodon(Fedibird)をしている。


56.ともみん 『なぜ生きているの』『どんぐり』

『なぜ生きているの』
神と言っても最初は「無」。神は生きる意味を探す「命」から感情を学んでいるのではないか。偉い存在というよりも、最初から存在していただけの存在ではないか。この詩は実際どうなのかよりも、感情の詩。自分の感情を讃歌すればいいだけ。全ての命が当てはまる「君」。「臓器は動く生きるをやめられない」とあるように、臓器が動く限り、生きる意味を探して何かに成る。誰かに与えられた意味通りに生きるなら、輝くとは言えない。この自由を愛せないからひたすら問うばかりな「君」もいるのだろう。

『どんぐり』
秋の公園で、人差し指と中指の指先にどんぐりの傘を乗せて遊んでいそうな詩。同じ手にある人差し指と中指の結婚式だから「いつまでも離れない」。フィンガークロスもしていると思う。人間二人の結婚式だとしても、どんぐりが落ちているアラカシの木の下のしゃがんで遊べるのはかなり仲がいい。神父も神職もいない。強いて言えばアラカシが神父。「風が落とす どんぐり奏でるミュージック」の心地よさ。どんぐりが身体スレスレのところに落ちてきておっと驚く声も収録されているのではないか。

ともみん さんのプロフィール
「詩と思想」「シナプスの笑い」に掲載。2023年12月に文芸社より『時の箱の中へ』を出版。

57.  .kom 『めぐる季節「夏」「秋」「冬」「春」』

『めぐる季節「夏」「秋」「冬」「春」』
連作のようなのでまとめた感想にする。夏の「作品」秋の「小さな約束」冬の「いじけた心」春の「スタートライン」。ここから推測すると、君の作品に感銘を受けた夏。君のように素晴らしい作品を作れないからと辞めようとしたが、一緒に頑張ろうねと約束したことで辞めることはやめた秋。君に背中を押されてまた歩き始めた冬。休んでいた時期を取り戻した春。恋愛だけでなく同じ目標に対して切磋琢磨している友愛要素もあるふたり。「どうなるかは何も決まっていない」とあるように恋愛の詩に見えて恋愛とは断定せずに曖昧さを認めている。

.kom さんのプロフィール
X(旧Twitter)とnoteで恋愛詩を中心に投稿。分かりやすい言葉で紡ぐ。「一かけらの今」と、詩の投稿コンテスト第7回「空」で準大賞を受賞。


58.ぶるちゃん 『星屑』『天空の虹』『循環する愛』『希望』

『星屑』
涙が「心に留まり 肺に止まり 息も出来ず 歌うことも出来ない」とても苦しそうだ。人魚姫のようだ。元々が海の人魚姫だと仮定したら、空の星になれば地上の「貴方」にずっと見られるのではないか。

『天空の虹』
「週末」お経でいうと末法に虹を架けようとする。「小さな〜宿るのか」が現状、「歩み寄り〜」は希望。世界に与えられるのを待つのではなく、与える側になる誇り。「力を削ぎ合わず」とあるように、他者の意欲を削がなければいいのにってことはある。

『循環する愛』
気の流れが良い。勇気・情熱を「貰えるだろう」と与えられる側をの話をしてから、愛を「届けられます様に」に転換している。上の世代が 俺も若い頃はこうやって奢られてきたんだから と奢っているような温かさがある。

『希望』
「相反するものを 十時に組め」がお互いを受け入れられず反発するエネルギーを利用している理科の実験のようで面白い。「回転させるのだ 無から有を産む」はどこかのメーカーのPVのキャッチコピーでもいい。

ぶるちゃん さんのプロフィール
2021年に「僕等は愛の言葉を必要としているんだ」に参加。今は「カモンFM」で月に1度読んでいる。


59.夏宝 洛 『月泥棒』『さよならホームラン』

『月泥棒』
月にある極楽浄土のような場所。「宇宙飛行士」は語らない「娯楽」。「月の砂時計は〜風紋の雲」と大きな衛星から見たかのような天候の流れ。「竹藪の奥あたり」はかぐや姫だろうか。「砂時計」はかぐや姫が月に戻るまでのタイムリミットを測っているのか。「象徴であるための雨 有限に枯れてしまうのです」とは。太陽が当たらない夜になると、地表が崩れると、飾りの雨がしばらくは枯れてしまう。「楼閣」「客船」に影響が出てしまう。宇宙飛行士は月で風光明媚なものを保護しようのような気持ちはそういえばない。国旗を刺したり。宇宙飛行士が泥棒?

『さよならホームラン』
野球のルールがわからなすぎて調べながら読んだ。ここでは絶対にスリーアウトで攻守交代にしようというところで、4点取られてしまう。「夏休みだというのに僕はマウンドにいる」とあるように、甲子園に行くような真剣な野球少年ではないようだ。甲子園に行くぞと意気込んでいれば、夏休みのマウンドに「だというのに」なんて言わない。「ときに悔しさがないと未来が老いぼれてしまうぞ」という無理矢理ポジティブ。だが、確かに調子に乗ってばかりであれば痛々しい大人になってしまう。いい経験だ。

夏宝 洛 さんのプロフィール
15歳から詩作開始。大阪市大正区出身。物理が好きで現代国語は大の苦手。「第三回ステキブンゲイ大賞」にSF小説で三次選考通過。詩賞入選歴あり。朱夏の都市で宝探し、これが筆名の由来。

60.瑠璃 『天使たちが』『ルフラン』『星空』

『天使たちが』
「指骨」で「ゆび」と読ませると、「指」よりゴツゴツした感触がする。第二関節がグッと曲がって交わって。「しじま」は「沈黙」と同じような意味ではあるが、「マンドラ」との発音の相性を考えると「しじま」の方がいい。「流浪の相似を暴く空間」とは。例えば、リモートワークで真面目に働いているひととサボっているひとをいざ暴こうのようなものか。これは天使の詩だから、善き天使かどうか暴く空間。「冥界に天を開いていく」は、冥界から天界への階段を登ったということか。力強くて頼もしい表現。

『ルフラン』
きょうの繰り返し。毎日「空は自らを狂わせて」みたがる。確かお経では、この世界は末期には空が真っ赤になると書かれているという。夕刻は空が赤くなる。狂っている。世界の末期に一時的に近づく。そんな危うさだけではなくて「ルビーやトパアズの色」などキラキラとしている。「草笛」「笹舟」とそれぞれ元々は同じものを違うものとして加工している風景が好き。それぞれの「さよなら」の形がある。同じように見える毎日も捉え方次第。「おとぎ話のルフラン」とあるように、この風景はいつまでも繰り返していい。

『星空』
これがプロフィールに書いてあった内面を書いた詩か。序盤は「わたし」「あなた」を結ぶ線はふわふわしていたが、「明日は夫の大切な仕事」「老いて子供のようになって」で親と確定した。「かつて」でもわかるひともいると思うが。「星たち」はあの世側で、「あなた」がどう最期を迎えるのか見守っていたのか。詩の終わりのプリクラ写真サイズの絵か写真は、「小さな窓の向こう四角く切り取られた星空」にいる「あなた」への返信としての「小さな窓」ではないか。新しい画像の使い方を学んだ。

瑠璃 さんのプロフィール
主に楽しみのために詩を書いている。X(旧Twitter)にはあまり自己の内面が出ている詩は載せていないが今回は久しぶりに内面を書いた詩も作ってみた。


お知らせ

わたしは個人で文学フリマ東京38に『この紫陽花が、うまい!』という出店名で参加させていただきます。この凪組Anthology2024に参加した詩人のどなたかにはお会いしたいです。それまではどなたの詩も拝読しておりますので何かしらお話はできると思います。

新刊 『詩集 作品は生命より重い! 美高美大の異常に平常な日常』の表紙です。
詩集の内容はこのようなイメージです。


今回から東京会場ではチケットが必要です。お忘れなく。



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