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:0169 『La Blanche vol.0』『凪の小花』 感想 #文学フリマで買った本


La Blanche vol.0

この詩集は「詩と思想」「現代詩手帖」で入選した詩も収録されている。特に評判が良かった詩を集めたフリー冊子はわたしも作ってみたい。星々文芸博(2024.7.14)に間に合うように。

硝子ケースの中にはわたしの顔をした神がいた

「死者の書」の神がこちらを見ていることはないが、こちらを見ていたらどうなるのか。見られていたら「このニッポン」での人生にも向き合うしかない。博物館の展示物をなんだかきれいなものと感じるだけでなく、「展示物の〜足りない」と展示物になりきっている。ミイラを未来として視ている。


凪の小花

エンボス加工された紙だろうか。高そうなフリーペーパーだ。これで5人分の詩が記されている。文字数によって柔軟に文字のサイズが変わっている。「火球、その正体」は10級。「ほくろ」は11級。そのほかの詩は13級。

火球、その正体 / まほろばしじみ 石川敬大

合作か。もしかしたら、書きたい単語をお互いにまず出してから繋いでいった可能性もある。下揃えで詩全体が草叢のようだ。「火球」は流れ星だが、事件性もありそうなので車のヘッドライトとも考えられる。「セロリ色の死児」ってなんなんだ!

便器の臓器 / 草野理恵子

死んだ鳥、ネッカチーフと赤いものが次々に登場し、月経のようにも見えてくる。月経は小動物ぐらいの血塊が出るから、そこから 着想を得たのかもしれない。月経で排出されたものも、死んだ鳥も便器みたいに触れてはいけない。でも鳥の遺体を愛せないと、自身の月経も受け入れられないでしょうとでも言いたいような詩。

ぐー / 橘しのぶ

「ぐー」はじゃんけんの「ぐー」だけでなく、鎖を捩じ切る声も、ソの♯とラの♭の間にある音も「ぐー」なのだろうか。「ぐー」の力強さで「こぼれおちた」ものたち。「Xを開くと 知り合いの犬が」よりも、風呂当番の方が実生活では緊急性があり当事者性もある。共感性は「ぐー」で押される。

林檎 / 鈴木奥

与えられた能力を活かそうとしないひとが、その素晴らしさに気づかずに失ってしまった愚かな詩から始まる。耳も口もない林檎に転生したのだろうか。林檎としてなら最大限に生きられたのか、林檎になって耳や口がある素晴らしさに気づいたのか。

百合の名 / 鈴木奥

「母親」は任される役割が多すぎる。「白い百合の筒」までも母に見えるという。綺麗な着物を着こなしている母なのだろう。「麦わらの いっぽんいっぽんへ 母がいる」は、母の過剰なほどの気遣いが伺える。麦わら帽子の補修もしていたのだろう。

ほくろ / 鈴木奥

田舎町で相次ぐ人死。いわゆる因習村と呼ばれるような環境で、奇妙な黄泉がえり。田舎町の風習と学生時代の事件が入り混じり気持ち悪くなってくる。「死ね紙」で出来上がった男は、「私」にとっていい存在とはないはずなのに、手に届くものだけで幸福を再現しようとすればこうなることもある。


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