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政府が26兆円の経済対策で日本のインバウンドはどう変わる? 週刊インバウンドニュースマガジン12月2週号

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政府が26兆円の経済対策を決定。インバウンド関連の予算は? 使いみちは?

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12月5日、政府は26兆円規模の経済対策を閣議決定しました。

「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」について
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/1205/20191205_taisaku.pdf

消費増税、米中貿易戦争などの影響による景気冷え込みを克服する目的で、以下の3つの方向性を柱に税制支出を行います。

1.災害からの復旧・復興と安全・安心の確保
2.経済の下振れリスクを乗り越えようとする者への重点支援
3.未来への投資と東京オリンピック・パラリンピック後も見据えた経済活力の維持・向上

インバウンドに関しては、「3.未来への投資と東京オリンピック・パラリンピック後も見据えた経済活力の維持・向上」の中に「外国人観光客 6,000 万人時代を見据えた基盤整備」が含まれています。 (上記の内閣府資料31P-32P)

首都圏空港の機能強化などのインフラ整備、各種プロモーションのほか、先日起きた首里城の火災を受けて、沖縄の観光振興や文化財の防火・防災対策が含まれている点も注目です。

今後の日本のインバウンドのトレンドにも影響しますので、インバウンドに関わる方は隅々まで目を通されることをオススメします。

そしてもうひとつ。こちらの経済対策に関連し、先週は以下のニュースがインバウンド関係者以外にも話題でした。

菅官房長官が視察先の熊本県益城町で記者団に対し、「世界レベルのホテルを50箇所新設する」方針を述べました。

日本における富裕層向けの宿泊施設の不足は以前から課題視されていたため、国をあげて課題に取り組むという意味では歓迎すべきことだと思います。また、先週のメルマガでご紹介したスノーリゾート支援も、メインターゲットはドイツなどを始めとする欧米系富裕層だと推測されるため、2つの方針には関連性・一貫性が見て取れます。

一方で懸念もあります。ひとつは国が宿泊施設づくりに関わることで、逆に訪日客にとって良質な施設が出来ないのではないかということ。もうひとつは、宿泊施設の飽和です。

前者については、国が宿泊施設を直接作るのではなく、民間への財政投融資を活用するとのことで、ぜひマーケットニーズを把握した優秀な企業にこのチャンスを掴んで頂きたいと考えています。

施設の飽和については、昨今供給過剰気味になっているのが宿泊特化型など比較的安価な宿泊施設であることから、富裕層向けホテルについてはそれほど問題視する必要はないかもしれません。

東京都の訪日観光データが発表。インバウンドの経済波及効果を読み解く

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11月26日、東京都産業労働局が、2018年に東京を訪れた旅行者による経済波及効果を発表しました。

※上記資料のうち、「2調査結果 5経済波及効果の推計」が新規公開部分であり、それ以外は今年5月30日に発表済です。

資料によると、2018年1月〜12月の間に東京都を訪れた旅行者が都内で消費した金額(観光消費額)は約6.0兆円(前年比3.3%増)であり、観光消費額が都内経済に及ぼす生産波及効果は約11.8兆円(同4.1%増)であることがわかりました。

そのうち訪日旅行者の消費額は約1.2兆円(同5.4%増)、生産波及効果は約2.3兆円に及びます。

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東京都の観光消費額を、都内在住者、東京都以外の道府県在住者、外国在住者に分けて分類した図。平成30年東京都観光客数等実態調査 より

図を見ると、外国在住者(訪日客)の伸び率(前年比5.4%増)が最も高い一方、都内在住者の観光消費額も同水準(同4.1%増)である点が興味深いです。

東京ではここ数年訪日客が急速に増加した印象が強いですが、同時に東京内での旅行・観光も活発になっているようです。

インバウンドの盛り上がりが街を活性化させ、域内の観光にもつながっているのでしょうか? 因果関係は不明ですが、面白い傾向だと思います。

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観光消費が及ぼす経済波及効果の推計。生産波及効果の伸び率以上に雇用効果の伸び率のほうが高い。平成30年東京都観光客数等実態調査 より。

こちらは経済波及効果の推計です。

生産波及効果の伸び率(前年比4.1%増)を、雇用効果の伸び率(同14.3%増)が大幅に上回っている点に注目です。

観光客が地域を訪れ経済活動を行えば、それ以上の雇用効果が地域にはもたらされるのです。人口減や雇用不足でお悩みの地域・企業は。インバウンドを含めた観光産業の促進をオススメします。

2025年に向け、関空が国際線重視の計画発表

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本メルマガでは過去数回、羽田・成田の発着便増に関する計画・ニュースを取り上げて来ましたが、今回は関西国際空港に関するニュースです。

関西国際空港を運営する関西エアポートが、ターミナル改修を含む事業計画を発表しました。

計画の方向性は明らかな「国際線重視」です。出発エリアの面積は60%増え、スマートレーンの導入で出国手続き時間の短縮化を目指します。

ターミナルの改修により、受け入れ能力を7割増の約4000万人にまで引き上げるそうです。

目標時期は万博の開催される2025年。東京やその他の地域が2020年のオリンピックに焦点を当てている一方、特に関西地域では2025年もひとつの目標として十分に意識されている点を興味深く感じました。

2020年で燃え尽きないよう、その他の地域でもその先の計画を考える時期が迫っています。

JR東がQR決済の改札を導入検討+免税対応の自販機が誕生?

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最後に決済関係のニュースを2つまとめて紹介します。

JR東日本が新設する山手線高輪ゲートウェイ駅改札に、試験的にQRコード改札を導入することを発表しました。

訪日客の利便性向上を目的としており、決済用のQRコードを訪日前に絵画で印刷するケースも想定しているとのことです。

一方で記事でも言及されていますが、QRコード決済はSuicaなどのICカード決済に比べるとどうしても決済スピードが遅くなってしまいます。決済方法とスピードのどちらが訪日客に選ばれるのか、実施後の行方は要注目です。

また、高輪ゲートウェイ駅では同時に、Suicaを活用した無人店舗の同様も計画されています。訪日客にとって最も便利な決済体験は何なのかは、引き続き検討と研究が必要になってくるでしょう。

訪日客の消費拡大にとても重要な免税品購入にも、テクノロジーの導入が進んでいます。

政府は12月2日に、訪日客向け免税品販売を自動販売機で実施することを認める方針を固めました。

パスポートの確認などこれまで対面で対応していた作業をカメラ・通信を利用して実施。人手不足解消効果が期待されています。

訪日客受け入れのためには、最新の技術導入が欠かせません。とはいえ、決済手段や旅行行動は地域・訪日客の国籍・旅の目的によっても変化するでしょう。

すべての手段を取り入れていては、予算がいくらあっても足りません。まずは自地域・企業のターゲットを明確に定め、そのための手段導入を実施しましょう。

楽しんで学べるインバウンドクイズ!

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インバウンドの知識は、わかっているようでいざ聞かれてみると意外と抜け落ちているもの。このコーナーでは毎週1問、インバウンド担当者ならぜひとも知っておきたいインバウンドの基本知識を出題します。

回答は翌週のマガジンでご紹介しますので、ぜひチャレンジしてみてください!

質問:上記のグラフは東アジア4カ国(中・台・韓・香港)の2019年の月ごとの訪日客数の推移です。A〜D番の組み合わせで正しいものはどれでしょう (難易度★★☆☆☆)
JNTO 日本の観光統計データによる
※メール受信環境の問題で、画像が閲覧できない方はお答えいただけません。申し訳ございません。

選択肢:
1. A中国 B台湾 C韓国 D香港
2. A中国 B韓国 C台湾 D香港
3. A中国 B韓国 C香港 D台湾
4. A台湾 B香港 C中国 D韓国

↓こちらに回答すると、他の人の回答割合がわかります!↓
http://www.benchmarkemail.com/Poll/Vote?g=8182&id=1073498&w=220

-------------------------------先週の答え----------------------------------
さて、先週の答え合わせをしてみましょう!
質問:2018年の訪日客の内、昨年度比の増加率が最も大きかった国はどこでしょう (難易度★★★☆☆)
という問題に対し、答えは……

3.ベトナム」でした!!

2018年のベトナムからの訪日客数は約38万9000人と、2017年の約30万9000人に比べて約25.9%増とすべての国の中で1位でした。

その他の選択肢の国の増加率は以下の通りです。

1.中国:8,380,034人 13.9%増
2.タイ:1,132,160人 14.7%増
3.ベトナム:389,005人 25.9%増
4.ロシア:4,810人 22.7%増

ビザの緩和と経済成長などを理由にベトナムからの旅行者は凄まじいスピードで伸びています。またベトナム人旅行者は旅行消費額が多いことでも知られており、数年後には訪日マーケットの中でも大きな存在感を示すものと推測されます。

ただし、2019年の増加率は今の所そこまで大きくはありません。

ちなみに今回は、回答された方の約半数が正解されていました。おめでとうこございます。

↓こちらに回答すると、他の人の回答割合がわかります!↓
http://www.benchmarkemail.com/Poll/Vote?g=8167&id=1073498&w=220

あとがき

今週は最後に決済手段にまつわるお話をいたしました。

以前ある飲料関係の方にお話を伺ったところ、一部の自販機に海外で一般的な決済方法を導入したところ、明らかに特定国の訪日客の利用が増えたそうです。

自動販売機が日本ほど設置されていないことから、両者が伸びない理由は文化の違いとも推測していたそうですが、蓋を開いてみると決済方法のミスマッチが使用のハードルになっていたのです。

このようにインバウンドマーケットでは、訪日客のインサイトを把握しづらいことから、このようなミスマッチ、機会損失が往々にして発生します。

2020年のオリンピックに向け、政府の方でもキャッシュレス決済の導入や、各種環境整備のための支援を始めています。

インバウンドでどのような環境を整備すべきなのか、お悩みの方はぜひMATCHAにご相談ください。

お問い合わせはこちら!

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