イライラを撒き散らす
一人暮らしを始めた次男がどのように暮らしていたかは分からない。
寮の近くをわざと通り、干されている洗濯物から生活を想像するしかなかった。
夫は次男のことに触れなかった。
自分が追い出したという責任を感じてないわけではなかったと思うが、夫の心もかたくなだった。
以前被害届を出された事件について家裁から呼び出しの手紙が届いた。
保護司の助言もあり、事件についてしっかり反省し、真面目に働く意思を示す予定でいた。
被害者に対して謝罪が済んでいたこともあり、反省の気持ちを話し、用紙に記入して提出するれば帰れる予定だった。
呼び出しの日、次男の準備が遅く私たちは遅刻した。
元々イライラしていた次男は聞かれることにも横着な態度で答えていた。
何を尋ねられてもいい加減な返事をした。
そして、
「どうしてこのようなことを起こしましたか。」
と問われた用紙に、
「知らん」
と大きく殴り書きした。
そういうイライラを撒き散らして周りを不愉快にした。
家族や先生以外の全くの他人にこんな態度をとる姿を目の当たりにし、何かが進んでいるような感じがした。
そして次男はそのまま鑑別所に送られた。
保護観察中でありながら、こんな反抗的な態度を繰り返し大人をバカにするようなぐ犯行為は、致命的だったのかもしれない。
鑑別所では、
「父さんの怒ることは分かる、でもやり方が嫌だ。
父さんが叩くから俺も叩いてしまうのかも…」と話していたと聞いた。
鑑別結果では、脳に問題はないが衝動性や飽きっぽさで開発不足なところがあり、感情統制が不良で思い通りにならないとイライラし、感情のまま動いてしまう所があると聞いた。
褒めて応援をする、こちらの嬉しい気持ちを伝えるといった関わりが必要だという説明だった。
次男は小さな頃から思いついたら我慢できずにすぐ行動していた。
わんぱくで元気がよくジャイアンみたいな子だった。子どもらしかったが、誰よりもよく叱られていた。
審判の結果は少年院送致だった。
少年院にだけは行って欲しくなかった。
人生が終わる、青春が終わってしまう。
まだ私はそんな気持ちだった。
夫は「1度行った方がいいと思う」と言った。
…我が子が少年院へ行くということ。
行くだけの理由はあったとしても。
あの思いを誰と共有できたろう。
情報を発信している人も少なく孤独だった。
同じような思いをしてる人が今もいると思う。
どうかそれでもこの時期を過ごしてほしい。
全部必要だったと思える日が来るよ。
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