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世界は僕と噛み合わない

 世界と僕はどこかずれている。僕が僕である事を表現すればするほど、世間は僕を異端視する。あ、ほらまた隣の席の親娘連れが胡散臭そうな顔をして席を変えた。この間の会社は「残念ですが当社の求める人材像は……」要するにお前は違う、と言って体よく蹴られた。これで何社めかもう忘れた。
 友達とやらは長続きした覚えがない。深い関係になると、僕の異端性を垣間見るのか次々離れていく。まるで付箋紙のように貼って剥がして跡形もなく居なくなる。だから僕には親友とかいうものがいた試しがない。
 缶ピースですらそうだ。もうアイコスなんかが主流になってしまった世間、こんな重い煙草は紙巻きの連中の間ですら嫌われる。僕がピースを吸い出すと、それとなく皆吸うのをやめて出て行く。中には睨んだり舌打ちしたりする奴もいる。だったら出て行かなきゃいい。吸うのは自由だ。
 死にたいなと思ったことはない。死ぬのは金も手間も掛かる。ただ、消えたい、誰の記憶からも、記録からも、存在から一切消えてしまいたいと思うことがある。氷が融けて無くなってしまうように、僕も融けて無くなってしまいたい。そんな絵本があったっけ。そんな憂鬱自体アイスコーヒーに溶けて消えてしまえばよかった。



シキウタヨシ

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