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『セロ弾きのゴーシュ』

*2021年7月朗読教室テキスト① ビギナーコース
*著者 宮沢賢治

ゴーシュはぼんやりしてしばらくゆふべのこはれたガラスからはひってくる風を吸っていましたが、町へ出て行くまで睡って元気を取り戻さうと急いでねどこへもぐりこみました。

活動写真館でセロを弾く係のゴーシュは、仲間の楽手のなかで一番下手だという理由で楽長にいつも叱られています。みんなが帰った後も、壁の方を向いてぼろぼろ涙をこぼしながら、一人残って練習をします。家に帰ってもやっぱり気になって夜中もとうにすぎてしまってもまだ弾き続けます。そこへ、とんとんと扉を叩いてやってきたのは、なんと一匹の三毛猫でしたーーー。

宮沢賢治の童話には、動物たちがよく登場します。主人公が困っている時、道に迷った時、何かを教えてくれるのは動物だったり、あるいは人であっても子供の場合が多いようです。でも、彼らは「すぐ役に立つわかりやすい答え」を伝えてくれるどころか、「それって・・・どういうこと???」とますます謎が増えていくような、一見「答え」とわからないような言葉ばかり残していきます。でも、そういえば私も自分の人生を振り返ってみると、「すぐにはよくわからないもの」で、だけれども捨てたり忘れたりせずにずっと心に残していたものが、あるとき自分を助けてくれることがあります。
学生時代に学んだアートやシュルレアリスムもその一つ。決して「これこれこういうことだよ」とわかりやすく説明してくれるものではないけれど、自分の心の中にアートの領域が育っていることで心が救われることがあるのです。

今月のビギナーコースは『セロ弾きのゴーシュ』です。辛い思いをしていたゴーシュの元に動物たちが代わる代わるやってきて、何か不可解な言葉を残していきます。それらはゴーシュだけではなく、読み手にも何かを授けてくれるに違いありません。

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*底本 『宮沢賢治全集7』株式会社筑摩書房
 1985年12月4日 第1刷発行/2018年10月25日 第32刷発行
*文中の太字は本文より抜粋


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