【#3】ネタバレを色々避けていくと、最終的におっぱいボールの話をするしかない【殺戮にいたる病】
たまには超有名作も紹介したい。
そしていつもとの反応の差を見てみたい。
そんなわけでどうもこんにちはー。うつぶせくんだよー。
ニッチ本Vtuberという名前を捨てたので有名作も紹介できるようになったぜ。まあ別にニッチっていうのは有名無名売れている売れていない関係なく、こう……その……ああいう感じのフィーリングなんだけどな。察してくれ。あと、ニッチ本Vtuberに代わる僕の冠は随時募集してるのでこういうのどう? ってあったら教えてくれよな。
さて。
今回紹介する本はミステリーの傑作として名が知られている小説だ。
本を読み始めて間もない僕だが、本を読み始める前から、この本のタイトルはどこかで聞いていたぐらいには有名かもな。お前らもないか? 読んでないけどタイトルはどっかで聞いたことある本。今回はそんな本。
我孫子武丸作『殺戮にいたる病』だ。
上の表紙は新装版の表紙。
こっちは旧版。
旧版も結構好き。
新装版が出た頃だったかな。殺戮にいたる病っていう傑作ミステリがあるというのは耳にしていて、ミステリにはまりだしていた頃の僕は、ちょうどいい。と読むことにしたんだ。ちなみに、新装版の方が少し高い。
一体どんな話なんだろうなあ。とあらすじを読む。
永遠の愛をつかみたいと男は願った―。東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は、蒲生稔!くり返される凌辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。(公式サイト あらすじより)
……ホラー?
(目をこする音)
衝撃のホラーって書いてある……。
何度見てもホラーって書いてある。
あっれえ。ミステリじゃあなかったのか?
もしかして、僕が噂に聞いたのは別の似たようなタイトルの本だったのか?
そんな疑問を抱きながら読み始めるわけだ。
蒲生稔は、逮捕の際まったく抵抗しなかった。
(文庫本P8)
冒頭一行目で犯人が逮捕されていた。
万事解決ハッピーエンドだ。
ページの差し込みかなにかのミスを疑う人も多いだろうが、これで正しい。この小説はエピローグから始まるからだ。
連続殺人鬼・蒲生稔は逮捕された。
この小説は、その連続殺人鬼がいかにして犯罪を重ねていったかを殺人鬼本人、刑事、疑る家族などの視点から追いかける話なんだ。
だから結構時系列が前後するし、なんなら視点もころころ変わるから「一人称小説の視点変更など言語道断!」みたいな、ちょっと前のネット小説の「side〇〇」が嫌いだった人は要注意だな。この小説も『1 二月・雅子』『2 前年・稔』みたいに視点が変わっていくからな。
さて。
この小説はミステリーの傑作として名高いと同時に、あらすじでは思いっきり「ホラー」とされているんだが、どういった部分が「ホラー」なのかと言えば、蒲生が「サイコキラー」であるところだ。
彼はずっと、自分には性欲がないものだと思っていた。人並みに性に対する好奇心はあった。女性の裸に何も感じないわけではないし、インポテッツでもなかった。実際、これまでに何度も女性を抱いたことはある。
(文庫版:P20)
いい女は死んだ女だけ。
どこかで聞いたようなジョークだと思いながら、稔は笑いをこらえることができなかった。くすくすと笑いながら、首の下を通して黒い革のベルトを彼女の首に巻き付け、両手でそれぞれの端を握り締めた。もう一度歌がサビにかかった時、彼は力をこめてそれを引っ張った。
(文庫版:P103)
稔は彼女の胸に頬を埋め、切ないほど安らかな気持ちで呟いた。
「……愛してるよ」
彼女もきっとそう感じているに違いないことが分かった。
(文庫版:P104)
急いで左の乳房にとりかかる。今度は五分とかからなかった。手の中からくずれて流れていきそうになる二つの乳房を、切り口を合わせるように重ねたところで、はたと入れるものがないことに気づいた。ついでにと買ってきたキャベツに思い当たり、キャベツのラップを剝がすと、それで乳房を丁寧に包んでビニール袋に入れた。
(文庫版:P127~128)
うまく膣ごと切り取ることができれば、風呂場での自慰などではなく、セックスだってできるかもしれない!
(文庫版:P164)
おっぱいボールだ!!
この小説は言ってしまえば「サイコキラーが人を殺す!」って感じの小説なんだが、なんていうか、湿度がすごい! 六月だってここまですごくないぞってぐらい。
同じように「サイコキラーが人を殺すぜ!」って感じの小説だと『殺人鬼 覚醒篇』とかもあるんだけど。
こっちは湿度0%。
さくっと人を殺す。まあ、生きてる人の腹を掻っ捌いて、腸を食べさせたりする超絶サドではあるんだが、それでも湿度はない。化物じみた殺人鬼が人を殺す。なんていうか、海外的だ。ジェイソンとか、レザーフェイスとか。
対して『殺戮にいたる病』は湿度100%。じっとりとねっとりと罪を重ね、愛を味わう。なんというか、日本的な殺人鬼だ。
殺しに派手さはなく、まるで背後から濡れ手でそっと首を撫でられるようなねっとりさがある。しかも濡れ手がなかなか離れることなく、ずっと首を撫でてくるし、なんなら途中で締めてくる。風呂の中で持ち帰ったおっぱいで興奮して絶頂する殺人鬼とか、結構じめじめしてるよな。
そのじめっとした感じが、とても心地よいのである。斧を振りかぶって殺す殺人鬼もいいけど、音楽を聴きながらベルトで首を絞める殺人鬼もいいよね!
そんなわけで『殺戮にいたる病』
じめっとしたサイコホラーが好きな人。
小説のシステムを悪用したトリックが大好きな人。
岡本孝子が好きな人におススメだ。
夢を、あきらめないで
ネタバレしないようにするのを、あきらめないで
ちなみにこれ。
やっぱりミステリでしたよ。
どんなミステリか説明するともうネタバレって感じだから、それ以上は買って読め!
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