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私の人生を変えた漫画「ハリガネサービス」の話を聞いてほしい。

私には生涯愛し続けるであろう、最高に好きな漫画がある。

週刊少年チャンピオンで連載されていた「ハリガネサービス」という漫画だ。

全24巻。

現在は「ハリガネサービスACE」に改題して続編が引き続き連載されている。

上記のリンクで試し読みができるので、是非第一話を読んでみて欲しい。



あらすじ


中学生の頃、バレー部でレギュラーになれなかった主人公・下平鉋(しもだいら かんな)は、都立の豊瀬高校へと進学。そこでレギュラーを目指す。
ところが一緒に入部してきた1年生たちはみんな中学の東京選抜に選ばれたほどの優秀なプレイヤーたちだった!
下手くそな下平は萎縮するが、実は彼には一つ、飛び抜けて優秀な能力があったのである。

それは、正確無比のサーブ能力だった。



ざっくり言うと、サーブ能力だけがすごい主人公が、癖のある仲間たちと切磋琢磨しながら成長していく物語である。

どれくらい下平のサーブ能力がすごいのかと言うと、「狙ってネットインが打てる」「何十本も完璧に同じ箇所へ打ち続けられる」など。

およそ人間業ではない。


だが主人公の下平も、成長していくにつれて「サーブだけではダメだ」とミドルブロッカーとしての能力をつけたり、サーブにも変化をつけたりと、仲間たちの助力も得て徐々に良い選手へと育っていく。

その過程はあらゆるドラマを描く。読者たちは彼を自然と応援していくことになるのだ。



ハリガネサービスの魅力


ハリガネサービスの魅力はストーリーだけではない。

個性の強いキャラクターたちだ。


まず主人公校である豊瀬高校のメンバー。

物怖じしない性格で、常に太陽のように明るいキャプテン・野々原
下平をミドルブロッカーとして育てる三年生・高代
筋肉大好き、チームの士気を上げる三年生アタッカー・五十嵐
高代の親友で、下平には厳しい態度を取るものの時折背中を押してくれる三年生ミドルブロッカー・久場

一年生に非常に厳しい態度を取る二年生エース・大船
「キモさ」を武器に戦う二年生セッター・家守
身長154cmの毒舌リベロ・猫田

姉御肌で面倒見の良い女子マネージャー・百合草

見た目がめちゃくちゃ怖いが優秀な監督・山縣先生

……などなど。豊瀬高校は決して多くない人数の学校だが、監督まで含めて先輩たちはみなキャラクターがよく立っている。


主人公と同時に入学してきた一年生も同様だ。

冷静な面の内に熱い闘志を燃やす真面目な頭脳派セッター・松方
直情的で、小柄な体を活かしスピードで勝負するアタッカー・間白
変人だが、真っ先に下平の能力を見抜いた天才リベロ・金田

ドジっ子だけど一生懸命頑張る女子マネージャー・ケイちゃん

特に一年生は、下平含め非常に良くバランスが取れている。
東京選抜に選ばれたことのあるほどの実力者である松方・間白・金田の三人が、へっぽこだがサーブだけはすごい下平と、徐々に「本当の仲間」になっていく様は素晴らしい。


キャラが立っているのは主人公側だけではない。

「ハリガネサービスの最大の魅力は、敵側にこそある」と私は考える。


2巻で登場する、常識はずれの高身長リベロ・三河

6巻で登場する、「アタックを一度もブロックされたことのない」ミドルブロッカー・

10巻で登場する、日本人離れした体格・火力で全てを薙ぎ払うアタッカー・雲類鷲(うるわし)。

同じく10巻で登場する、雲類鷲の従順な執事であり優秀なミドルブロッカー・上屋

……などなど。他にも魅力的なキャラクターたちが大勢登場する。


三河が所属しているのは、敵を翻弄し、大技も連発する「サーカスバレー」を得意とする桐城高校。

朧が所属しているのは、突然夏のIH東京予選に現れた無名のトリックスター・竜泉高校。

雲類鷲と上屋が所属しているのは、高身長のエース級ばかりを集めた名門校・王葉工業高校。


豊瀬高校は、主にこの三校と死闘を繰り広げる。

後述するが、その戦いは普通のバレー漫画ではありえない展開を見せてくれる。


そしてさらに、豊瀬高校含めこの全ての学校がライバルと見做す最強の学校がある。


毎年インターハイ東京予選を一位で通過する超強豪校・駿天堂学院


この駿天堂が、ハリガネサービスという物語のラスボスとなる。




その様は、まるで「カウンセリングバレー」


ファンの間で、ハリガネサービスは「カウンセリングバレーを行う」とよく言われている。

カウンセリングバレーとは何か?

これには、6巻から始まる竜泉高校戦と、10巻から始まる王葉工業高校戦が大きく関わってくる。


先ほど名を挙げてきたキャラクターたち、その一部には実は非常に重たい過去・事情を抱えたキャラクターが存在する。


竜泉高校の朧は、シングルマザーの母親に虐待されて育った。

王葉工業の雲類鷲は、その強すぎる力故に周りを傷つけ、同時に己も傷つけながら生きてきた。

同じく王葉工業の上屋は、とある事情から雲類鷲家に引き取られ、家の次期当主である雲類鷲の執事として育てられた。


彼らの心に巣食う闇や、今まで変わらなかった理不尽な人生の問題が、

なんと豊瀬高校との試合中に全て解決してしまうのである。


「被虐待児の問題がバレーの試合中に解決だって??」
「訳あり主従の問題がバレーの試合中に解決ってどういうこと??」

と、誰もが思うことだろう。


しかしこの漫画ではその巧妙なストーリー展開によって、本当に問題が解決してしまう。

時が止まっていた子供たちの時間が、豊瀬高校との試合の中で大きく動き出す。そして前へ進む一歩を手に入れる。


その物語に、私は強く感動した。

そしてその、戦った相手の内面的な問題を解決していく姿から「カウンセリングバレー」というファン間のあだ名がつけられたのである。

(※注意。あくまでもファン間で呼ばれる名称であり、公式の名称ではありません。それだけはお気をつけください。)


この辺りは、語れば語るほどネタバレになっていってしまうので、実際に読んでもらう他ない。

まずは、竜泉高校が登場する6巻まで一気に読んでみてほしい。

そこから物語の潮流が大きく変わる。

ハリガネサービスという物語が一気に「化ける」のである。


その様を、ぜひ目撃して欲しい。



最大のライバル・羽座川 扇

前述の通り、心に闇を抱えたまま生きてきたキャラクターたちが何人も存在するハリガネサービスだが、実は最も暗いものを抱えてここまで来たキャラクターの名は既に登場している。

下平だ。

主人公の闇が一番深いという徹底ぶり。

しかしこれは取ってつけたような設定ではない。

駿天堂学院の超人リベロ・羽座川扇(はざかわ おうぎ)が4巻で登場し、扇こそが下平をバレーの世界へと導いた恩人であることが明かされた時点で、過去の悲劇の片鱗が見えている。

下平と扇の間に何があったのか。それが明かされるのは物語の終盤、駿天堂学院との戦いの直前である。

そこではひどく悲しく、理不尽な物語が展開される。


最終盤、下平は扇と直接対決することになる。

そうして戦った先に、一体何が待ち受けているのか。

ハリガネサービスという物語の、美しいラストは必見だ。



ハリガネサービスのテーマ


ハリガネサービスは、「バレーボールは最高に楽しいものである」というテーマがブレることなく描かれる。

楽しく、最高に夢中になれるものだからこそ、ありとあらゆるしがらみを超越し得る。

豊瀬高校による「楽しいバレー」によって、多くのキャラクターたちの心が救われていく物語だ。


それだけではない。

これは私のフォロワーさんが仰っているのを見て「その通りだ!」と思ったもう一つのテーマ。


「人生は何度でもやり直せる」ということ。


ハリガネサービスは「どれだけ失敗しても、どれだけ心が折れても、決して途切れないハリガネのような意志」を描いてくれる。


我が子を虐待した朧の母親も。何度アプローチしても己の望むものが得られない雲類鷲も。道を間違えてしまった上屋も。

辛い過去を抱えながら今を乗り越えようとする下平と扇も。

どれだけ間違えようとも、どれだけ失敗しようとも、どれだけ心が折れようとも、前へ進んだ先に何かがあることを語りかけてくれる。

読んでいる我々まで、心を救われてしまうのだ。


もちろん私も、心を救われた一人。

私には出来なかったこと、出来ないと思っていたことをやり遂げてくれるハリガネサービスのキャラクターたちに、私は人生を救われたような気持ちになった。

特に、6巻で登場する朧くん。彼の物語は私に大きな衝撃を与え、これ以上ない幸福を与えてくれた。

幸せになってくれた朧くんの姿に、己の姿を重ねたのである。


私も、諦めずに歩んでいれば、いつか光明が見えるのだろうか。

そんな希望を持たせてくれた作品だ。




あとがき

ここまで説明してきた「ハリガネサービス」だが、前述の通り全24巻であり、非常に長い話なので、まずは6巻まで読んでみることをオススメする。

6巻という序盤でいきなりチート級の強敵が現れる衝撃を味わってみて頂きたい。



私はずっとこのnoteに、ハリガネサービスのことを書いてみたいと思い続けていた。

けれど、ハリガネサービスへの思いが強すぎて、どうにもまとめることが出来なかった。うまく説明することもできず、だからと言って私自身の感想に偏りすぎてはいけないジレンマ。

それでも、下手くそでもいいから情熱を持って書こうと腹を括って書いたのがこの記事である。

きっと、作品の良さが伝わりきる文章にはなっていないだろう。私自身も手探りで、だけどどうにかハリガネサービスという作品を多くの人に知って欲しくて書いた文章だ。


私がハリガネサービスに出会ったのは5年前。週刊少年チャンピオンの誌面で松方くんを見つけた日から、ずっとこの漫画に狂わされている。

それはとても幸せなことだ。これ以上ない幸福なことだ。

それだけ好きな作品と出会えた自分を誇りに思う。

そして、私と出会ってくれた「ハリガネサービス」に心からの感謝を伝えたい。


「ハリガネサービス」。この世界に生まれて来てくれてありがとう。

これからもずっと愛し続けます。

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