とにかくぎりぎりを生きている その①
珍しく早めに(といっても10分くらいの話だけれど)朝ごはんを食べ終えた。
今朝は夫が息子の相手をしながら洗濯物を干してくれるから、自分の身支度に集中できる。
きっと出発時間より少し早めに準備を終えられる。
…はずもなく。
今日はとーちゃんはお仕事でないと察した息子は、全力でとーちゃん構ってモード。そして夫は仕事ではないけれど健康診断を受診するために、保育園に行くよりも早く家を出なければならない。
結果。行ってらっしゃい♪と息子を抱っこして夫を見送った私の背後には、あえなく未達に終わった洗濯物たちが、カゴに入ったまま元の2/3ほどの量で控えている。
息子はというと、おうちいやや、ろうかさんぽ。
残っていると思っていた時間の貯金は、毎朝いつの間にかなかったことになる。廊下を一往復しながら息子を宥め、家に戻って「せんたくものやや~」と私が干そうとつかんだ洗濯物たちをカゴに戻す息子を宥め、ずぼんやや~と足をばたつかせる息子を宥め(おむつを替える関係でここに来るまでちゃんとズボンを着用していないのが我が家の常)、ほいくえんおやすみ!!とストライキして布団に寝転がる息子を宥め…る時間はもうなく。
がんばれがんばれ、ほいくえんにいったらせんせいにあえるよ、どろんこあそびもできるよ、●●ちゃんにもあえるよ、きょうのきゅうしょくはちゃーはんだよ、かーちゃんもたべたいよ
とかなんとか文字にすれば穏やかなことを言いながら、半ば力ずくでズボンを履かせて泣き叫ぶ息子を抱えた。紐が切れたまま修復していない布団袋に入れたお昼寝布団を抱え、保育園のかばんを持ち、自分の荷物を持ち、くついやや、と言う息子の靴を片手にもち、これじゃ玄関の施錠ができない、と気付いて靴底を上にして仕事カバンの中に突っ込み、玄関のカギをかけて何とかエレベータに乗ってしまえばこちらのもの。
…なはずもなく。
玄関のタッチ式自動ドアを私が条件反射的に押してしまったら、息子の大激怒が待っていた。あえなく自動ドアのセンサーから外れるくらい後ろに戻り、ドアが閉まるのを確かめて息子に再度開けてもらう。自転車置き場まで荷物と息子を抱えたまま走り、息子を乗せてヘルメットを彼の頭にすぽっとかぶせた。あとベルトを着ければ出発できる。
…はずもなく。
息子は、ヘルメットに付いているナイロン製の紐を引っ張り、ちょうど顎の下に来るようにセットされている留め具の「カッチン」を自分でできるはずだ!と諦めずに何度も何度も粘り強く取り組んでいる。その粘り、他のところでも頂戴ね。
私が手を出すと振り払われるのはわかっているから、カッチンよ!その特徴的な、誰にでも音を聞けば器具ととめた時の「かっちん」のすっきりとした手の感触がわかるその仕組みで、一世を風靡…とは言わない。息子を満足させて私たちをマッハで保育園に連れてって!と念じた。かっちん、の音がした。よかった。息子よ、達成したぞ。
いくつもの信号という壁を如何に早く潜り抜けるかに全神経を集中させて、やっとやっと、息子の保育園に到着した。
多くの園児がすでにお外遊びに興じているから、教室はがらんとしている。そこで着替えやおむつ、布団なんかを所定の場所に押し込んで、私のミッションは無事に完了した。
ちょっと待て。あと5分で始業時間だ。
行かないで~~と泣く間も与えないくらいのスピードで私は保育園の玄関を開け、誰のもとに行くでもなく突っ立ったままの息子に「バイバイ」を言って自転車に跨った。
5分後。職場で同僚と同じ空気を吸っていた。はずだ。挨拶も終えていたかわからないけれど。
今日は、まだ始まったばかりである。
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