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誰でもなりうるクライシスと入れないクラブについて【『pluː vol.01』刊行記念リレー企画】

東大純愛同好会は、同人誌『pluː vol.01』の刊行を記念して、サークルメンバーによるブログリレーの企画を行っています。
本記事は、その3本目になります。
執筆者は、青柳ぐりむ(同人誌の担当箇所:座談会、匿名コラム)です。


昔から27という数字が好きだ。
バイトの出勤時はできる限り27分にタイムカードを切っていたし、年齢についても27歳は特別な一年になるような気がしていた。

26歳の誕生日前後から急激にメンタルが落ち込んだ。去年のことだ。
社会人になってからめまぐるしく2年間が過ぎ、気が付くと20代前半が終わっていた。

20代中頃から陥る幸福の低迷期のことを指した「クオーターライフ・クライシス」という言葉があるらしい。人生の1/4あたりを経過し(100年も生きるのか?)、ライフステージも大きく変化する中で、他人との比較や理想と現実のギャップに焦ったり悩んだりすることをいう。(※1)

自分の場合は、個人的に抱えているちょっとしたトラブルと、青春ゾンビ的な後悔/感傷、それから長年執着している理想像がクライシスを引き起こしていると把握している。クライシスを患った当初はメンタルクリニックで薬をもらっていたが、クリニックの先生と話していても現実が変わるわけではないので「とにかく行動する」という方向に舵を切った。

大昔に告白しそびれた人に会いに行ったり(そしてそれは壊滅的な結果に終わる)、カラコンやブリーチに手を出したり、なじみないジャンルの音楽を聞いてみたり。自分の感覚や居場所を調整するための挑戦なので、痛々しいことについては触れないでいただきたい。手あたり次第に行動して自分を変えていくことで充実感が生まれたのか、だんだんクライシスからは目を背けられるようになってきた。

27歳になって半年が経過する頃、新たに「27歳じゃ死なないな」という感覚が生まれてきた。これは『27クラブ』を念頭においたもので、『27クラブ』というのは27歳で亡くなった著名なアーティストやミュージシャンたちをとりまとめ、享年の一致になんらかの共通性を感じさせるようなリストのことである。

アーティストやミュージシャンがカリスマ的な人気を誇るさなかに亡くなることで、ファンの記憶の中では永遠にその絶頂期の姿をとどめる、とかそういった意味合いもあるのだろうが、自分としては「27歳頃までに自分の才能を開花させた人たち」という点が気になっていた。27歳は自分にとってなんらかの〆切の意味を持っていたように思う。

ところが、いざ自分がその年齢に達してみても、現状は全く満足のいくものではなかった。
とりあえずこの先も生きていけそうというのもあるが、なによりもまだ死ねない。この感情が生じた瞬間から、唐突に先(将来)のことが頭に上り始めた。どうやらこれまでは無意識のうちに、「27歳よりも先のことは考えなくてもいいや、だって27クラブもあるし。」と思っていたようである。目下取り組みたいことはあるが、いつ価値観やライフスタイルが変わるともわからない中、お金と健康の重要性・必要性が増している。Money&Muscle、大事。

一方、クライシスに伴い若さ(特に女性の)に執着するような言動を多発した自分を見て、母親から「あんたはロリコンね。」というお叱り(?)を受けてもいる。(※2)今回のクライシスを経て、自分の中に年齢に対する偏見や固定観念(エイジズム)が根付いていることがあらわになった。現実の個人個人は異なる肉体、経験、思想を持っており、ステレオタイプに目を覆われるのはどう考えても賢明ではないのに。

クライシスの原因としてあげた「個人的に抱えているトラブル」にも関連することだが、自分の在り方、思想と対立するような社会通念に対して怒り、考えをめぐらすことがしばしばある。そんなとき、実際に言われたわけではない「他者の声」を頭の中で作り出しては、それに答えようとしてしまう。しかし、時間は無慈悲にも刻々とすぎ、私たちはきっと一瞬で棺桶にたどり着いてしまうのだろう。これもまた27歳になって生じた予想。そんな短い人生を生きているのに、架空のヘイタ―の声にこたえる必要があるのか、そんなことに時間を使っていいのだろうか。

Awichが「いらんこと囚われた馬鹿ばっか」(※3)と歌ったとき、この馬鹿は自分のことだ、と感じてどっきりした。一人一人見た目以上に違う中身をもって暮らしていて、一瞬のように過ぎる人生を生きている私たち。そんな日々の中で他者にかけるべき言葉とは?どのような関係を結ぶ?生業として何を生み出す?改めて思考をふるいにかけて、言動を見直す時が来たように感じる。

「クオーターライフ・クライシス」を発症しドタバタと日々を過ごす中で、なんとなく前に進んでいる感覚はある。もう人と比べない、いらんこと囚われない、自分の道を歩む。人と比べないと言いつつ、新卒入社の同期たちの話を聞くと、仕事にプライベートにいいことも悪いことも抱えまくっていて、みんなして原色の虹のように個性が強く出ている。「クオーターライフ・クライシス」という言葉があるくらいなのだから、どうせみんなおんなじくらいジタバタしているんだろう。

以上がクオーターライフ・クライシスを患ったけどなんとか乗り越えられたような気がしなくもない、という話。Awichに喝入れてもらってネガティブを脱したというのも一つのやり方として共有したい。最後に、一応純愛同好会のブログリレーとして一言付けたすと、会誌は会員各々の生き方や考え方、心配事や執着心が感じられる仕上がりで、内容も多岐にわたるため、楽しんでいただけるのではと期待している。(筆者は座談会と匿名コラムとに参加。)是非お手に取っていただければ幸い。以上、青柳ぐりむでした。


※1 “クォーターライフ・クライシスとは?心理学で言われている状態、解決のヒント”. マーケターの知りたいが詰まったMarkeTRUNK. 2022.07.26 
https://www.profuture.co.jp/mk/recruit/management/39512 (参照2022/12/25)

※2 ここでのロリコンは「若い女を特別視する」くらいの意味合いで使われている。

※3 ラップスタア誕生2021. AbemaTV.  SPECIAL CYPHER(2021/10/06Youtube公開)より


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