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一体感というもの

一体感とは、どんな時に感じるものだろうか?
今の時代、人によって違う。

私がぱっと思いつくものを挙げてみる。
まず音楽ライブ。
ライブの一体感はたまらない。
ただ音楽を楽しむだけでなく、同じ空間を共有しているという不思議な感覚が生まれる。
”ライブ感”とでもいうのだろうか。
ただ音だけを求めるなら当然家でヘッドホンで聴いていた方が快適なのだが、それでは絶対に得られない何かがライブ会場にはある。

同人誌即売会などのイベントも参加者同士の不思議な一体感がある。
大規模イベントで有名なコミックマーケットは、始まる時間と終わる時間に自然と拍手が生まれる。
サークル参加者、一般参加者、コミケスタッフの立場は関係ない。
参加者が一丸となってコミケというイベントを楽しもうというお祭り感が確かにある。

スポーツ観戦もそうだ。
私は野球が好きで、コロナ渦前はよく野球場へ行っていた。
応援しているチームが点をとれば当然ファン全体が沸く。
ホームランが出た瞬間、近くの席に座っていた見ず知らずの人たちとハイタッチを交わす。
そんな経験が何度もある。
現地観戦に限らず、Twitter実況でも点をとった瞬間はファンの歓声ツイートが大量に流れる。
同じチームを応援する者同士の一体感がそこにはある。

最近の10〜20代の若者はYouTuberやVtuberの生配信を見る人が多いだろう。
私はそこまで見た事があるわけではないのだが、そこでもやはり配信者とリスナー同士の一体感が存在していると思う。

もっと身近な例。
学生の部活動やサークル。文化祭や体育祭のイベントとか。

一体感とはあらゆるところに存在するし、人は多かれ少なかれ一体感を求める生き物なのだ。

日本人が一丸になる機会

なぜ突然”一体感”についての話を始めてタイトルでわざわざ”日本人”と書いたのか?
それは東京五輪の話に絡めるからである。

2020東京五輪は何年も前から推し進められたプロジェクトだが、その様子を眺めていて漠然と思っていた事がある。
「昭和の1964年東京五輪の幻影を追い求めすぎではないか?」と。

1964年の東京五輪は、国民が一丸となって盛り上がったと聞く。
メディアによる事実の捻じ曲げの可能性もあるのでどこまで正しいか定かではないが、ここではその話を信じるとしよう。

実際に1964年は、国民が五輪に注目しやすい時代だったといえる。環境が整っていたというか。
ちょうど戦後の高度経済成長期で一般家庭にTVが普及し始めた時代。
家族がお茶の間に集まって、一家団欒としてTVを見るのが当たり前だっただろう。
その時代に適切なキャンペーンを行えば、当然国民の関心はオリンピックに向く。

スポーツ観戦というのは、一体感を得るのに手頃なコンテンツである。
現在でも野球やサッカーを中心に、スポーツ観戦が好きな人というのは一定数存在する。

まだ記憶に新しい2019年のラグビーW杯も、国民の注目度は高かったのではないだろうか。
日本の快進撃とともに、だんだん注目されていったように思う。
開催当時は、会場やマスメディアを中心に盛り上がっていた。
日本の試合がある日に渋谷の繁華街を歩いていたら、近くのスポーツバーから大きな歓声が聞こえてきたりもした。

それだけスポーツとは人々に分かりやすく感動を与えられるものだし、老若男女構わず手軽に一体感を得やすいコンテンツなのである。

国民の関心は多様化しすぎて、国民一丸は不可能

ラグビーW杯について書いた。
確かに注目はされた。連日メディアで報道もされていた。
が、実を言うと私の観測範囲ではそこまで盛り上がっていなかった気がする。
30代以上の世代はまだTVを見ている人も多いので、注目している人も多かったように思う。
が、20代以下の世代は無関心な人が多かった。

現代日本、スポーツに全く興味が無い人間というのもたくさん存在する。
というか若者を中心に、TVも持っていない、見ない人間だってたくさんいるのである。
連日メディアで報道されていたとはいえ「あー、何か強いらしいね。興味ないけど」
こんな反応だった層も少なからず存在したのである。

ラグビーW杯は確かに盛り上がりはしたが、国民全体が一丸となって盛り上がったか?というと答えは否である。
TVを見る層の反応が良かったからといって「国民が一丸となりました!」というにはあまりにも乱暴ではないだろうか。
日本国民のごく一部しか見えていない。
学校の文化祭で、クラスの仲良しグループだけで盛り上がった後に「クラスが一つになりました!」と言っているのと同じようなものである。

このように、「今回のオリンピックは東京で開催します!」と言われたところで、「ふーん」としか思わない層だってたくさんいるのだ。
日本人選手が結果を残したところで、興味がない人はないままである。
やっぱり「あー、何か強いらしいね。興味ないけど」と言われるのがオチである。

今の日本の一体感

最初に書いたとおり、今の時代は趣味・関心が多様化している。
インターネットが台頭してきてから特に顕著になった。

TVが全盛期だった時代は、国民誰しも知っているようなヒット曲がたくさんあったが、最近はそんなものも生まれなくなった。
前は注目度の高かったサッカー日本代表も、昔ほど注目されていないように思う。
大晦日はみんなTVをつけて紅白歌合戦を見ていた時代もあったが、「大晦日といえば紅白だよね!」という層も昔よりだいぶ減ったと思う。

TVを中心としたマスメディアからしたら”ブーム”というものを作りづらいので、嘆かわしいことなのかもしれない。
だが、単純に人々の関心が多様化しただけだ。そういう時代なのである。
インターネットが主流になった今は、各自が好きな時にコンテンツを享受しに行くのだ。
TVCMではなくインターネット広告が幅を利かせる、そんな時代。

昔は家で享受出来るコンテンツといえばTVが主流だった。
今では「Netflixやアマプラで映画見る」「サブスクで音楽聴く」「ゲームする」「ネットサーフィンする」「SNSやる」「Youtubeで動画見る」など人それぞれなのである。
1人の時間を大切にする人だって増えた。

個人個人が重視されるこの時代に「みんなで一丸となって頑張ろう!」なんてのは流行らない。ナンセンスだ。
会社だってそうだ。
「利益を得る為に社員一丸となって頑張ろう!社員旅行します!飲み会も強制参加!」なんてのは時代錯誤もいいところだ。
仕事は仕事、プライベートはプライベートと分けて同僚でもほぼ干渉し合わない。そういう考えの人も増えた。

そんな時代に「日本国民が再び一体感を取り戻すには?やっぱり東京でオリンピックしかないよね!おもてなし!」なんて言われても、「はぁ?」としかならないのである。
それこそ「昭和の幻影に囚われすぎだろう」という感想しか浮かばない。

コロナ以前にも、五輪の影響で数多の文化系イベントや企業イベントが日程変更などを余儀なくされていた。
学校の文化祭に例えると、文化祭のクラス委員が体育館を一方的におさえたようなものだろうか。
「文化祭の準備があるから体育館は我々がおさえました!体育館で部活はしばらく出来ません!でも文化祭の為だからみんな協力してください!共に準備頑張って盛り上げましょう!」と言っているようなものだ。
まあ横暴である。当然反感を買うだろう。
「五輪なんて興味ないのに何でこっちばかり割りを食わなきゃならないんだ?」
こう感じた人は多いはずだ。

最近の東京の緊急事態宣言下でも、「他のエンタメ系イベントはたくさん中止になったのに何で五輪だけ開催するんだ?」と眉をひそめた人は多いだろう。
そりゃ五輪に対していい印象を持たない人も多いよねって話。

炎上で得る一体感

なぜこんな記事を書き始めたのかというと、実はTwitterの連日の五輪炎上騒動がきっかけである。
五輪に限らず、積極的に有名人のあら捜しをしたり炎上させようと狙っている人は存在する。
こういった悪意の塊みたいな人はなぜそんな事をしているのか?暇なのか?

ぼんやりと思ったのは、こういった人々もまた”一体感”を求めているのではないかという事だ。
本人達は自警団に近い感覚でやっているのだろう。
「いけない事をしている奴がいる!こいつは殴っていい奴だ!みんなかかれ!やっつけろ!」
「よしやっつけた!やっぱり声を上げて戦う事が大事なんだ!我々が正しいんだ!」
こういうメンタリティだろうか。

本当に悪だと思って攻撃している人もいるだろうが、対象が本当に悪かどうかなどもはやどうでも良い人だって多いのだろう。
こちらが悪と認定したらそれは敵。”共通の敵を倒す俺たち”の構図である。ゲーム感覚。
ゲーム感覚で人生壊される方はたまったもんじゃないだろうが。
昭和の時代の学生運動も案外似たようなノリだったんじゃないかなと思う。
フランス革命とかも実はそうなのかも。

こんな事より、他の趣味でも探して一体感を得た方がよっぽど健全なんじゃないかと個人的には思うんだけどね。
最近はお金がほぼかからない手軽な趣味も増えたし。

そんな感じで一体感について考えたのが始まり。
そこからなぜか五輪による日本国民全体の一体感まで考えが及び、この文が出来上がったわけである。

最後に

少し前までは「コロナもあるんだし五輪中止にならんかー?」とやんわり思っていた。
が、ここまできたらもうとっとと終わらせてしまうのが得策だと思う。
来月の今頃はもう話題にもなっていなさそうだなと思ったり思わなかったり。

五輪そのものに対しては、まあ普通に競技は見ると思う。
もともとスポーツ観戦好きなのもあるし、運営がガバガバでも選手たちに罪があるわけではない。
野球と男子バスケ、サッカーはそこそこ楽しみにしている。

早く終わるといいね。

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