「白」原研哉展と、理論から演繹されたデザイン[2008・10]

10月×日

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銀座のクリエイションギャラリーG8で、植原亮輔・菊地敦己・平林奈緒美の3人のグラフィック・デザイナーによる「FASHION/GRAPHIC」を観る。3人がそれぞれに関わったファッション・ブランドのグラフィックの仕事をまとめたもの。菊地さん(ミナペルホネン、サリースコット)、平林さん(アーツ&サイエンス)の仕事はすでにあちこちで見ていたので驚きはなかったが、植原さんのシアタープロダクツ、ミハラヤスヒロのためのプロジェクトの徹底的な「壊しっぷり」に衝撃を受けた。発注から発想の段階も含めて、どうしたらこういう大胆なものがつくれるのだろう。

10月×日
中目黒へ。目黒川沿いの居心地のいいカフェで北村範史さんとミーティング。その後一緒に近くのギャラリーへ。終了間近の会田誠展『ワイはミヅマの岩鬼じゃーい!!』(ミヅマアートギャラリー)。ドローイングだけでなく、ニンテンドーDSに歴代の首相をモーフィングでループさせるインスタレーションや2ちゃんのスレッドをまるごと筆で巻物にしたためた作品など、会田さん自身が一歩引いてディレクター的立場で制作したものも多かった。最上階なんてまるごと学生の演習発表の場になってたし。渋谷方面に歩いて、ミームマシーンギャラリーのヨダヒロユキ個展「UNCHAIN」へ。何も考えずただまっすぐに、自分の芸術を爆発させていってほしい。

10月×日

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乃木坂で行われている中野正貴の個展に行く前に、駅からの階段を登ってすぐのところにTOTOの間ギャラリーを偶然発見。この日から始まる安藤忠雄建築展[挑戦─原点から─]を観ることができた。以前から安藤建築に興味はあったが、こうしてまとめて観る機会はなかった。“原点から”とタイトルにある通り、安藤忠雄の名を一躍有名にした出世作「住吉の長屋」の1/1展示など。「光の教会」やその他の仕事のエピソードを知り、安藤さんの歩みとかこだわりのポイントが自分の仕事にも通じるところがあることがわかって、ずいぶん親しみを感じた。

その後、初めて行くギャラリー・アートアンリミテッドで開かれている中野正貴「東京圧縮」へ。東京シリーズ(NOBODY、窓景、FLOAT)のオリジナルプリント。やっぱり同時開催のエプサイトのインクジェットとは仕上がりが格段に違う。写真の横に展示されていた、中野さんによる作品解説が面白かった。文章が上手く、ちゃんと考えて撮っていることも伝わってくる。写真集だけでなくエッセイも出したら人気が出そう。前からなぜか買わずにいた『TOKYO NOBODY』(サイン本)をこの日購入。

10月×日
神保町での打ち合わせの帰り、銀座のgggで「白」原研哉展を観る。原さんの仕事はこれまで関心外だったので、ちょうどいい機会だった。ぼくもデザインの背後に言葉や理屈を込めたくなるタイプだが、その多くは後付けであり、理論から演繹してデザインを導き出すような原さんの仕事や著作には、すごいと思う一方で難しそうな印象があった。展示されていた水滴を使ったスマートボールや雨樋は、素材の性質を十分踏まえつつ、見る人を楽しい気分にさせるアイデアがある。建築家に近いところがあるのかもしれない。今度著書をあたってみよう。

ギャラリーを出て資生堂ギャラリーに向かう途中、H&Mの前に長蛇の列。キムスージャ展「A Mirror Woman : The Sun & The Moon」。以前観た作品と同じく4面スクリーンに映し出されたアジアの海岸の日没の光景と、皆既日食の写真。単純に美しかったが、ギャラリーの説明にあった「縫う」というテーマはなんかこじつけぽい気もした。

10月×日
表参道。HBギャラリーで落合恵個展「こども文学ワールドツアー」をちらっと観てから、OPAギャラリーへ。恒例の河村ふうこ・毛利みきの二人展「私の部屋~お茶のじかん」のオープニング。河村さんとはそれぞれ別のおめでたい出来事があったので、互いに祝い合う。夜は久々に上京中の友人・市居みかさんの個展「いろ×iro×いろ」、を観るつもりが開場時間に間に合わず、ろくに作品を見られなくて残念。終了後、この日のために集まった友だちと市居さんをまじえておいしい蕎麦を食べに行く。

10月×日
来月以降(仕事以外の事情で)確実に忙しくなるので、動き回れるうちにあちこちへ。千駄ヶ谷のループウィラーで前からほしかったNIKE×LOOPWHEELERのハーフジップスウェットを手に入れた帰り、確かこの近くだと思いちょっと歩いて、GAギャラリーで開かれているオスカー・ニーマイヤー「形と空間」展へ。自分内建築ブーム。ここは最寄り駅としては副都心線の「北参道」が近い。新宿まで初めての副都心線に乗車。安藤忠雄による渋谷駅も見たかったがまた今度。

10月×日

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乃木坂のGALLERY TOKYO BAMBOOで、上田三根子個展“ALL OF MiNE”のオープニング。10年振りの個展。さとがえるコンサートで上田さんと初めて仕事することになったとき、打ち合わせの直前に観に行ったのをいまでも憶えている。エヴァーグリーン、というか、いつまでも変わらない新鮮なイラスト。最近はPhotoshopで色付けするようになった、などのお話を少しする。準備がうまくいけば近々、数年振りにお仕事がご一緒できるかも。がんばろうっと。

――2010秋以降の展覧会ツイートを、こちらのハッシュタグ #gbiyori に残しています。

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