見出し画像

「UXデザイン」とは言うけれど、具体的になにをデザインしているのか

「UXデザインってなにをすればいいと思いますか?」
初学者向けの勉強会で、こんな質問をすると「UI?」「カスタマージャーニーマップとかペルソナ をつくること?」「ユーザーテスト?」なんて回答が、疑問符付きで返って来て、最終的に「なにをするとUXデザインをやったことになるんですか?」と言う質問が出てきたりします。

今日はそのあたりのお話をしようと思います。

1.「UXデザイン」と聞いて、思い浮かぶのは?

「UXデザインと聞いて思い浮かぶものはなんでしょうか?」こういう質問をしてよく回答で上がるのが、下の7つです。

・ペルソナ
・カスタマージャーニーマップ
・Adobe XD
・Sketch
・ユーザー調査
・ユーザーテスト
・プロトタイピング

この7つをカテゴリーごとに分けるとこうなります。

「ペルソナ」「カスタマージャーニーマップ」
ユーザー像を可視化したもの。認識合わせのツールのひとつ。
「Adobe XD」「Sketch」
ユーザー体験を触れるように具現化するためのツール(ソフト)のひとつ。
※実は他にも使い道があります。
「ユーザー調査」「ユーザーテスト」「プロトタイピング」
UXデザインを行う上で必要なプロセスの一部。

「なにをするとUXデザインをやったことになるんですか?」に沿って述べると、

上の2カテゴリーは、あくまでもツールなので、目的が果たせれば他のツールや手段でも代替可能です。

一番下はUXデザインのプロセスなので、行う必要があります。そういった意味では「UXデザインをやったことになる」に近いです。
ですが、プロセスの一部なので、単体では厳密にはやったことにはならないのではないかな、と思います。

ただ、チームでUXデザインを行っていて、ユーザー調査なり、プロトタイピングなり、1パートだけ主担当としてやり、他のパートをチームメンバーの誰かが行うのであれば、結果、チームとしてはUXデザインを行っているので、「UXデザインをやったことになる」と思います。

もちろん、各パートが連携されていないと、ユーザー調査結果が紐づかないものが生まれてしまいますので、連携が必要です。

「うちのチームは分業制なので、他の職種のパートの時、自分はなにをしていたら良いのか」という質問を受けることがありますが、デザイナーやエンジニアなどカタチにする職種の人は、ユーザー調査・評価時はモニタールームに同席する、リサーチャーや狭義のUXデザイナーなど無形のものを扱う職種の人はカタチにされたものを確認する、分析はできるだけ関わる全員で行うことが重要です。

2. UXデザインのフローは大きく2つ

画像2

UXデザインのフローですが、大きく分けるとユーザーリサーチのパートとユーザー体験(UX)デザイン(&評価)パートの2つに分かれます。(ここでいう"デザイン"は"ビジュアルデザイン"ではなく、"設計"の意味のデザインです。)

UXほにゃららという職種のうち、ユーザーリサーチのパートを担当するのが、リサーチャーやUXデザイナーです。

そして、ユーザー体験(UX)デザインのうち、
"価値""行動(行為)"のデザインをUXデザイナーが、
"インターフェースデザイン"UIデザイナーが、
行動とインターフェースの間の"操作"のデザインは、UXデザイナーUIデザイナーが行います。

"操作"のデザインをどちらが行うかは、チームのやり方やメンバーのスキルのレベル感に左右されます。

3.「UXデザイン」とは言うけれど、具体的になにをデザインしているのか

UIデザインは、名前の通りですので、非常に判りやすく、ユーザーリサーチの結果をふまえて行ったのであれば、「UXデザインをした」と言えると思います。

判りにくいのが、「UIデザイナーではないUXデザイナーは、なにをデザインしているのか」です。

画像2

上は、構造化シナリオ法を使った例です。体験設計の手法はいくつかありますが、段階を追って具体化していくフローになっているので、体験設計の考え方を知る上でも、とてもわかりやすい手法だと思います。(丸善出版から"エビの本"こと、「エクスペリエンス・ビジョン: ユーザーを見つめてうれしい体験を企画するビジョン提案型デザイン手法 」という本が出ています。表紙をとるとエビが居ます。)

それぞれ、ユーザー(ペルソナ )の、価値、行動(インタラクションに頼らないもの)、操作をデザインしています。シナリオとして各場合の具体性の粒度としては、上図にある通りになります。

行動のデザインまではインタラクションを考慮しない(むしろしてはいけない)ので、分業制のチームの場合、非デザイナー出身の方がUXデザイナーとして行うケースが多いようです。

非デザイナー出身のUXデザイナーの場合、「UXデザインをした」と言えるのは、ユーザーリサーチのフェーズ後に、ここを行った場合と言えます。

対して、操作のデザインは、情報アーキテクチャなどの構造レイヤーのデザインが入ってきます。

4. "行動"と "UI"の間。"操作"のデザイン

画像3

先ほど、「"操作"のデザインは、UXデザイナーかUIデザイナーが行います。"操作"のデザインをどちらが行うかは、チームのやり方やメンバーのスキルのレベル感に左右されます。」と述べましたが、同じ非デザイナー出身のUXデザイナーであっても、普段、構造や骨格部分を業務で扱うWebディレクターなどの職種の方が操作のデザインを行うのは、既に持っている知識を使えるので難しくないと思います。

ただ、企画職やマーケターなど、非デザイナー出身のUXデザイナーが"操作"のデザインを行う場合、構造レイヤーをデザインするために、人によっては、多少お勉強が必要になってくるかもしれません。もちろん、普段ユーザーとしてさまざまなサービスに触れる機会があるので、シナリオ形式で書くのであれば、ある程度書けるでしょう。ですが、建築で言えば、骨組みを組み立てる前の重要な土台を作る基礎工事部分になります。先の工程に進んでから、構造の検討をやり直すことになると、手戻りの工数が増えてしまうので注意が必要です。各デザインごとにユーザー評価にかけたり、ウォークスルーをチームメンバーで行うのが理想ではありますが、期間・コスト的に難しいケースが多いと思います。粗々で書いてUIデザイナーに投げるという手もありますが、その場合、UIデザイナーさんの工数はその分を考慮して多めにとっておく必要があります。

また、UIデザイナーが不在で、ビジュアル畑のデザイナーさんがUIデザインを担当することもあるでしょう。その場合も、同様にお勉強が必要になって来ることがあります。

5. まとめ

「なにをするとUXデザインをやったことになるんですか?」の答えですが、ユーザー調査を行い、ユーザーの利用文脈とインサイトに沿って、なにかをつくること、になります。(UXデザインは、体験価値が再生産できるのが条件になりますが、観点が今回のテーマと異なるので省いています。)

実務では、ベテランの方などは、ショートカットしている方もいらっしゃるかもしれませんが、Webにしろ、アプリにしろ、長期に渡って運用していくもののUXデザインなのであれば、数年後の後任が見ても、経緯や内容を把握できるようにある程度はしておくのが良いかと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?