虚光-kyokou-

読書記録 夢日記 写真 短歌

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『異端の鳥』(2020)感想

※以下ネタバレありの感想 本作品は映像を観ることに意味があると思うため、事前に大まかに把握しておきたい方は見ても差し支えないと思います。また、作品中では性的描写、暴力描写が続くためその点ご留意ください。 この映画において語るのは顔だ。 人々の顔、顔がポートレートのように語りかけてくる。フィクションに登場するキャラクターではなく、”人間”を映像に収めたかったのがよくわかる。そんな人も、木も空も鳥も等しく、映像の中の白と黒の世界に存在している。映像美と語られることもあ

    • 『オオカミの家』感想 2023/09/09

      美しい山々に囲まれたチリ南部のドイツ人集落。”助け合って幸せに”をモットーとするその集落に、動物が大好きなマリアという美しい娘が暮らしていた。ある日、豚を逃がしてしまったマリアは、きびしい罰に耐えられず集落から脱走してしまう。逃げ込んだ一軒家で出会った2匹の子豚に「ペドロ」「アナ」と名付け、世話をすることにしたマリア。だが、安心したのもつかの間、森の奥から彼女を探すオオカミの声が聞こえ始める。怯えるマリアに呼応するように、子豚は恐ろしい姿に形を変え、家は悪夢のようなまがまがし

      • 虚光日記

        みなさんがあまりご覧にならないほうが良いだろう私のお話。 あまりにも窮屈だったので、ビリビリって指を外に向けて突っ込んでみたんです。楽しそうに話す声も私の興味を掻き立てたもので。そうしたら、指の先からさらさらと消えていきました。そっと穴から外を覗くと真っ暗闇で、急いで私の服を使って穴を塞ぎます。あの声は何だったのでしょう。私の頭の中の声を勘違いしたのでしょうか(そんなものした覚えはありませんが)。 いずれにしても、このまま中にいるのが安全と思われました。今はあの声も止んで

        • 2023年1月31日の夢

          髪を梳かしているのは長い黒髪の少女。 あどけなさが残る彼女に見えぬ私は、そっと洗面台から這い出しました。まだ夜、薄明かりの照明だけの部屋では、半透明の私は目につかないのですーというより彼女が夢うつつだからだったのでしょう。 見つからないように逃げているものの、窓を半分程度開けて屋敷を抜け出します。私が逃げたとわかるように! * 外は太陽に照らされて明るいはずなのに、 薄暗いままのその部屋で、貴方は資産家と言葉を交わしています。「何億出す?」 なんて、 逆光の中で訊くものです

        『異端の鳥』(2020)感想

          2023年1月23日(月)の夢

          その街の人たちは、皆ゾンビに変わってしまいました。 彼らに糾弾されているように思えた私もいつしかゾンビに変わりました。 いくつかの場面が切り替わり、私は路地にいます。 咳をする土気色の顔をした高齢のご夫婦の横をすり抜けると、そこは駅。私は間違った駅で降りてしまっていたことを思い出します。ただ、どこ行きの電車に乗ればよいのかわからず、特急の線路に止まっている電車の運転手さんに聞くことにします。電車は2両編成でした。後ろが貨物になっており、数人のおじちゃんが座っています。そのお

          2023年1月23日(月)の夢

          皆川博子(2020)『愛と髑髏と』を読んで

          ※内容に触れているため、未読の方は閲覧注意。 はじめに 皆川博子さん初読書。今回読んだのは皆川幻想小説の原点というべき作品集。私のお気に入りは、「人それぞれに噴火獣」と「舟唄」。 私自身がこの世界に異物として紛れ込んだような感覚を常に持って生きているのだが、それが尽く表現されており、ひたすら驚嘆するしかない。どの短編も毒がじわじわと体を蝕むようで、とても一気に読むことはできなかった。 生の希薄さ~「軀」という表現~ この一冊に通底するののが「生の希薄さ」だろうか。 例え

          皆川博子(2020)『愛と髑髏と』を読んで