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戦後の日本を支えた人工甘味料「ズルチン」とは?


先日食品添加物の話をしました。スキが0でなかったので需要はあると判断したのもありますが、一番は自分が語りたいので、今回は前の記事にも登場した人工甘味料「ズルチン」についてご紹介。
まだの方は前回の記事も読んでみてください。


ズルチンとは

ズルチンという名前、いかにもおどろおどろしいですが、戦後まもない日本では大衆に広く受け入れられている甘味料でした。砂糖の250倍甘く、比較的簡単な構造を取るため安価で製造も容易いことから、ぜんざいなどの和菓子や飲み物なんかに当たり前のように使われていました。その甘さは砂糖によく似ており、苦味などもほとんどなかったとのこと。その上非糖質系の甘味料ですからカロリーも0。
唯一の弱点として水には溶けにくかったようなので、ズルチンが使えないものに対してはサッカリン (現在も認可されている甘味料です) が使用されていたようです。

ズルチンの構造式。学生でも化学薬品から簡単に作れてしまうくらいだったらしい
化学を学んだ人なら、それぞれどんな構造か説明できるんじゃないだろうか?

人工であることを除けばいいことずくめですよね。カロリーもないし、甘さも自然。ではなぜ現在は使用されていないのか。そう、毒性があるからです。

ズルチンの毒性

ズルチンには明らかな毒性があるとされています。ヒトが経口摂取することで肝機能障害を引き起こす他、発がん性もあると認められています。科学の力で自然のものを代用しようとしても限界があると教えられる例です。

こういった事実の多くはマウスなどの動物実験で明らかになることが多いのですが、ズルチンに関しては実際にヒトでの事故例もあり、ネットの海に転がっていたので見つけてしまいました。下にリンクを貼っておきます。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/shokueishi1960/10/2/10_2_112/_pdf

ズルチンが大量に含まれたあんつけ餅を食べたことによって女性が亡くなってしまったという悲しい事故です。他の患者についてもズルチンの中毒量ないし致死量を摂取した可能性が示唆されているので、最悪の場合死者は1人ではなかったかもしれません。

程なくしてズルチンは全面的に使用が禁止されます。それより前から他の先進国では危険性が露見し使用が禁止されていたようです。日本の対応が遅いのは、今も昔も大して変わらないみたいですね。

ズルチンの本当の危険

ズルチンの恐ろしいところは、その「都合の良さ」と「知られてなさ」だと個人的に思っています。

特に人工甘味料は甘味のほかに苦味を呈するなど、甘すぎるゆえの弊害を持つものが多いのですが、ズルチンにはそれがほとんどないのです。この使う側にとっての都合の良さが、先述のような事故を引き起こしてしまったのだと思います。しかも一説では、ズルチンは少量で甘味の限界に達しそれ以上加えても大して甘さは変わらないとのこと。つまり大量にズルチンを入れても、知らないまま過剰摂取なんてことがあり得るわけです。恐ろしいですね。

しかもわかりやすい構造式で簡単に製造できるため、作る側にとっても都合が良い。Wikiには当たり前のように作り方が載っていました。食品衛生法に引っかかるのは確実なので市販の商品に含まれていることはないにしても、裏社会では製造・販売が未だになされている可能性も否定できません。

その上人並み以上に食品添加物に触れてきた私ですら、この名前を聞いたのはつい最近のことです。メディアに取り上げられていないわけです。世間的な認知度がかなり低いように感じます。
まずは今一度この事実を知ることが、私たちにできる第一歩であると思います。

いかがでしたか?
ご好評ならまたテーマを変えて食品添加物のお話をするかもしれません。
それではこのへんで。

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