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心を鷲摑まれた作品


#読書感想文

 阿部智里著『烏に単は似合わない』。通称『八咫烏シリーズ』。

 この作品は世界観が独特で面白い。最初は難しい漢字の読み方に苦戦するが、それを踏まえた上で読む価値がある。

 実はこの作品は数年前に読んで、今また読んでいる。結末や人物がどう変化していくかをなんとなく覚えているが、やはり結末に驚きすぎて全て記憶が最後の展開に持って行かれる。そのため、それまでの物語の進行をあまり覚えていなかった。

 初めて読む時と、二回目ではまた違って見える。初めて読んだときは主人公に自己投影して読むが、今回は物語の全体図を俯瞰して読むことが出来た。

 私はこの本が話題作として本屋に陳列されているとき、「女性たちの激しいバトルが繰り広げられる後宮物語」というキャッチフレーズにあまり惹かれなかった。後宮ものは苦手なのだ。人間の持つドロドロした感情剥き出しで、壮絶ないじめなどが描かれた後宮ものを読んだことがあるので。

 しかし、手に取った自分に「よくやった!」と言いたい。これほど度肝を抜かれた作品に出会ったのは初めてだからだ。

 後宮ものではあるが、今まで読んだことのある後宮ものより上品だと感じた。更に松本清張賞を取っただけあって、あまり意識していなかったところに伏線があったり、全て謎が解けたときの驚愕は生涯心に残り続ける。

 第1巻は是非とも読んで欲しいが、ページをがんがん捲りたくなるのは2巻以降だ。

 主人公が変わるのだが、私の好きなタイプだった。私は基本的に男性主人公だと感情移入できないことが多いのだが、この本に出てくる主人公は男の子なのに感情移入が出来た。私にとっては驚くべきことである。

 あと題名の付け方。これもまた、読んだ後に「あ、この題名そういう意味!?」となるので、そのストンと納得のいく感じを味わってもらいたい。

 2巻以降は1巻と違ってわりとコミカルなイメージ。面白いし、相変わらず登場人物の魅力がすごい。推しが結構見つかる。

 今現在、2巻の『烏は主を選ばない』を読んでいる。結末を知っているので、最初に読んだときほど早く!早く!といった疾走感のあるドキドキがない分、冷静に精読できていい。面白い本はやっぱり数年経った後でまた読むべし。

 こういう作品を書いてみたいが、ミステリー系は得意分野ではないので、ただ読んで楽しむだけに徹したいと思う。これだから読書はやめられない!

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