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短編作品リスト

徐々にではありますが、発表済みの作品が増えてきましたので、リストを作成してみました。いずれも短編で、アンソロジーや文芸誌に収録されています。個人の短編集はありません、まだ。うん、まだ……。

何か一作お読みになってご興味を持ってくださった方が他の作にも手を伸ばしてくださったら嬉しい限りです。嬉しいな(嬉しいね)

なお、「執筆中、作品の内容に引っ張られたかのような体調不良を起こす、または災難にみまわれる」という、とてもとても嫌なジンクスがあるので、あわせて、執筆当時に起きた嫌なできごとを添えておきます(誰が得をするのかは不明ですが)


繭の見る夢

東京創元社『原色の想像力2』に収録。
(2012年3月23日発売 ※2020年現在、版元在庫なし)

醍醐天皇の治世、京に住む按察使の大納言の邸には一人の風変わりな姫君が居た。世の大方の姫君が花を愛で、鳥を好み、男君との恋を楽しむ中にあって、この姫君は気味の悪い虫ばかりを可愛がって暮らしている。故に、人呼んで "虫愛づる姫君"。ある日、その姫君のもとに、新たな「珍しい虫」が献上された。姫君はその虫に "多宝丸" という名をつけ寵愛するが……
一方、姫君に仕える男の童の一人 "雨彦" は決して叶う事のない恋に煩悶する。それぞれを待つ、数奇な運命とは――

商業媒体デビュー作です。第二回創元SF短編賞にて佳作に選ばれました。

収録された『原色の想像力2』は同賞の最終選考に残った作品を集めたアンソロジーとなっており、つまりは、同期デビューの方がいっぱいです。本作発表後、自身は己の力不足により後に続くものを書けませんでしたが、目覚ましい活躍をなさっている方々の初期作品が多数収録されています。空木は置いていかれました(勝手に)。

王朝文学×SFというテーマで、平安時代の短編物語集『堤中納言物語』の一編「虫愛づる姫君」を下敷きにしつつ、「物語についての物語」として仕上げました。

当時のできごと:栄養失調、脱水


感応グラン=ギニョル

東京創元社『ミステリーズ vol.96』に掲載
(2019年8月9日発売)

とりどりの"瑕"を持つ少女達が血塗れの残酷劇を演じる劇場「浅草グラン=ギニョル」――浅草六区にひしめく見世物のひとつに過ぎなかった一座の興行は、人形のような容姿を具え、己の心を持たぬ代わりに他人の心を映し出す能力を持った少女 "無花果" の登場によって思わぬ変貌を遂げてゆく。団員のひとり、「千の瑕を持つ娘」と呼ばれる "千草" の密やかな愉しみ。「鼻の無い」花形役者 "蘭子" の激情。そして、心を持たぬ "無花果" の瞳に映るもの。それらが溶け合い、交じり合った末に生まれるモノとは――

特集「怪奇・幻想小説の新しい地平」における読切短編として掲載されました。デビュー作から約七年半ぶりの新作です。と言いつつ、実は初出は文学フリマで頒布した同人誌でして、その後、全面的に大幅な改稿(本当にめちゃめちゃ手を入れたよ!)を加えたものとなります。七年のあいだにはいろいろと大変なこともありました。主に私生活の面で……。

関東大震災の爪痕が残る戦前の浅草を舞台とした怪奇SFです。SFとしてのメインモチーフはテレパス……ということになるのでしょうか。

「グラン・ギニョル」とは19世紀末頃からフランスで流行した恐怖劇・残酷劇の総称です(すごくざっくりとした説明)。また、そもそもの語源となった「ギニョル(ギニョール)」は指人形によって演じるフランスの人形芝居のことも指しています。

当時のできごと:熱中症、ボヤ騒ぎ


終景累ヶ辻(しゅうけいかさねがつじ)

東京創元社『時を歩く 書き下ろし時間SFアンソロジー』に収録
(2019年10月31日発売)

「幽霊の辻」――死後、その辻に辿り着いた魂は、三つの道から一つを選ぶこととなる。すなわち、未来、現世、過去のいずれかを。非業の死を遂げた女性たちの御魂は、自らが選んだ道の先に何を見るか。世に、人に、虐げられてきた者たちの運命が時空を超えて交錯する物語。

『時を歩く 書き下ろし時間SFアンソロジー』は前述の創元SF短編賞の歴代受賞者、および、優秀賞(佳作)受賞者が「時間SF」をテーマとして競作したアンソロジーとなっています。なお姉妹アンソロジー(?)として、同時発売の『宙を数える 書き下ろし宇宙SFアンソロジー』があります。

古典怪談×時間SFです。タイトルからもおわかりの通り、モチーフのひとつは三遊亭圓朝『真景累ヶ淵』なのですが、他にも「おばけ」がわんさか出てきます。誰が出るかは、読んでみてのお楽しみ。

カラン……コロン……

当時のできごと:インフルエンザによる高熱、右目の上を強打してめちゃめちゃ腫れた


地獄を縫い取る

東京創元社『Genesis 白昼夢通信』に収録
(2019年12月20日発売)
のち、竹書房『ベストSF 2020』に再録
(2020年07月30日発売)

人の体性感覚や感情を情報化し、他者と共有する技術――〈エンパス〉が普及した近未来。〈エンパス〉とVRを介した児童買春を摘発するための囮AI "JD" の開発を進めるジェーンとクロエには、ある秘密があった……。JDの開発に魂を削るジェーンと、執拗にジェーンを蹂躙するクロエ、そして、遊郭の一室で正体不明の "御坊" と対面する伝説の傾城 "地獄太夫"。それぞれの思惑と欲望が絡み合ったとき、真の地獄が立ち現れる――

『Genesis』は2018年に刊行がスタートした東京創元社による「オール書き下ろし」のSFアンソロジーシリーズとなっており、『Genesis 白昼夢通信』はその第二弾です。

その後、光栄なことに、前年に発表されたSF短編を対象として大森望さんが作品を選定された『ベストSF2020』に再録されました。同書は前年まで東京創元社から刊行されていた『年刊日本SF傑作選』を引き継ぐ企画として刊行がスタートしたアンソロジーです。

「いつか年刊傑作選に載るんだい!」という目標を果たせなかったわたくしですが(それ以前に、刊行中に一作も新作を発表できずに終わりました)、後継たる「ベストSF」に収録されたことで、念願が(やや形は変わりつつも)叶いました。

主なモチーフとしたのは地獄太夫と自ら名乗った室町時代の伝説的な傾城(遊女)です。絶世の美貌と才知を併せ持ち、あの一休さんとも師弟関係にあったといわれる伝説的な人物です。月岡芳年、歌川国芳、河鍋暁斎等々、絵師達が好んで画題としたことでも有名ですね。

当時のできごと:原因不明の高熱、PCの故障


メタモルフォシスの龍

東京創元社『Genesis されど星は流れる』に収録
(2020年8月28日発売)

恋に破れることで発症し、女性を蛇に、男性を蛙にと変容させてしまう〈病〉が蔓延した近未来。〈病〉を発症し、半人半蛇の身となったルイとテルミは、「恋」が禁じられた世界で奇妙な共同生活を始めた。半人半蛇、半人半蛙の "生成り" 達が集った〈街〉と、自らを喰らおうとする半蛇たちから逃れた男たちが暮らす〈島〉。〈島〉に渡り、自身を捨てた男を喰らうということに異様な執着を見せるテルミには、しかし、ある秘密があった――

『Genesis されど星は流れる』は、上述の『Genesis 白昼夢通信』に続く「オール書き下ろし」SFアンソロジーシリーズの第三弾です。前巻から続けての参加となりました。

現時点での最新作です。タイトルの通り、「変身」「変容」がテーマとなったお話です。義太夫節の『日高川』や能の『道成寺』で知られる「安珍・清姫伝説」をモチーフに据えました。

当時のできごと:爪甲剥離、親知らずの抜歯(両下顎)、貧血


おまけ

過去に同人誌で発表した作品の一覧です。主に東京開催の文学フリマで頒布していました。

既にサークル在庫もない状態なので、お手に取っていただくということはなかなか難しいと思うのですが、何かの機会で巡り合った際には、お読みいただけると嬉しい限りです。

「これ読んでみたい!」といったお声をいただけたら、電子書籍化等するかもしれません(しないかもしれません)

女郎花織る蛛将(ソウブンドウ、2011年11月)

平安時代を舞台とした伝奇。蜘蛛の巣を使って絵を描く風変わりな絵師と、方々の廃墟を巡り歩いている「蜈蚣が憑いている」姫君のお話。

The Indiscipline Engine(ソウブンドウ、2013年11月)

物語の「解釈」から多様性が奪われた世界を描く近未来SF。教育機関に認められていない「解釈」は残らず「是正」されるのだ! 光源氏とアリスと明智小五郎が手に手を取って大暴れ!(何のこっちゃと思われそうですが)

揺籃ラテルナ=マギカ(ソウブンドウ、2014年5月)

湖の底に横たわる少女姿の結晶 "紅玉の姫君" を崇拝するひとりの娘と、肉体を持たずに生まれてきた "黒鉄姫" のお話。肉体性への忌避と執着みたいなテーマです。多分、過去に書いたものの中で唯一のハイファンタジー。

樹想夢記(ソウブンドウ、2014年11月)

『トリフィドの日』オマージュ。文明崩壊後、地上を制覇したのはヒトの形をした植物「人樹」だった。少女姿の人樹 "樹月" と、ヒトでありながら「植物のお医者さん」として生きている "私" の不思議な毎日。変な植物がいっぱい。

Rampo Sicks(ソウブンドウ、2015年5月)

乱歩オマージュ。人の美醜が数値化された街〈Asakusa Six〉を舞台に、「最も醜い」と判定された少女 "不見世" と、数値化できない美しさを持つ女賊 "皓蜥蜴" が、 "美醜探偵団" 相手に大立ち回り! "諸妬姫" をやっつけろ!

その他、いくつかのサークルさんの合同誌に参加させていただきましたが、在庫状況等が不明なので割愛。

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