【プロCFOが解説】監査法人の選び方

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監査法人の選び方について解説していきます。

上場を目指す場合はマスト、上場しなくても大きな会社は監査法人は必要ですし、上場後でも監査法人を変更する場合もありえますので、多くの方にご覧いただきたいテーマとなっています。

僕は、会計士として監査をやっていた経験と、CFOとして監査を受けていた経験の両方がありますので、監査法人を選ぶ際に気をつけることなどを説明しています。

まず、監査法人とは何なのかについてです。

ご存じの方が多いとは思いますが、監査法人は、会社の会計に関するあらゆることをチェックして、その正しさを保証する仕事をしている公認会計士の集まりのことを言います。

監査は、国が認めた公認会計士でないと出来ません。

では、監査法人を選んで契約をしないといけない会社とは、
会社の資本金が5億円以上ある会社
会社の負債が20億円以上ある会社
そして上場会社もしくは上場準備をしている会社
になります。
上の2つが会社法という法律で決められているもの、3が金融証券取引法で決められているものです。4は上場審査で必要になります。
上場準備会社の場合、証券取引所の審査が必要で、そのためには会社の数字が正しいことを監査法人に証明してもらうことが必須です。上場審査には過去2年の監査証明が必要になります。上場を目指す可能性がある場合は、早めに契約しておくことをオススメします。

次に、先ほど、会計に関するあらゆることをチェックすると言いましたが、具体的には、
会社が作成した会計に関する書類が間違っていないか、もしくは不正をしていないかを、領収証などの証憑と数字を照らし合わせて、分析や検証を行い、間違いや不正が無いことを確認した上で、正しいという証明書である監査証明を会社に提出するという仕事をやります。監査法人の名前で証明書を出している以上、もし間違いが後からわかったらそれは監査法人の責任が大きいということになります。

通常は、四半期、3ヶ月に1回、だいたい5人くらいで6日間くらい、合計30人日、会社にやってきて、ずっと資料を見て、会社の人にヒアリングして、間違いや不正が無いかを確認するという仕事をします。通常はその間、監査期間と呼んだりしますが、監査法人専用の部屋を用意して、そこにわんさか資料を運びます。最近は監査法人側もようやくITが進んで、あとコロナがあって、来社しないで、現物の資料というよりもデータで確認することの方が多いですが、一部まだ原本を確認したいという要請もあったりします。これは、電子データだと不正がやりやすいからです。

監査法人との契約ですが、監査法人の役割は、会社の数字が正しいかの証明ですので、本来は株主のために実施するものと言えますが、実際は会社との契約になります。ここが非常に難しいところで、契約当事者と契約による便益を享受する人が違うという点です。監査法人はその性質上、第三者としての独立性が要求されます。契約しているからといって無理を聞いてくれることはほぼありません。でも、人間なので良好な関係を構築すれば相談しつつ歩み寄ることは可能です。

監査報酬については、上場直後まではこんなところだと思います。もちろん会社の規模や監査範囲の広さによってはもっと高い場合もあります。
上から言うと、上場を目指していないけれども会社法で仕方なく監査を受けている場合は、600万から1000万くらいだと思います。
上場準備会社だと最低1000万、最近相場が上がってきていて平均で1500くらいだと思います。昔は上場前800、上場後1000くらいが相場だったんので、随分値上がりしてますね。
上場したての会社の場合は、ピンキリですが、まあ1500は最低必要です。
上場会社は、会計士協会調べだと5,700万が平均となっています。大きな会社、ビジネスモデルが複雑な会社、海外拠点がある会社などで報酬は高くなりますので、ここにはトヨタとかめちゃめちゃ高い報酬を払っている会社が含まれていますので、平均が高くなっています。

続いて、監査法人を選ぶために、監査法人の種類について説明します。

まず、聞き覚えのある名前が並んでいると思いますが、ビッグ4と呼ばれる4大監査法人です。どこも世界中に事務所があるグローバルな法人です。昔はビッグ6とかだったのですが、統廃合が進んで今は4です。
契約企業数で言うと、新日本とトーマツが25%ずつ、あずさが20%、あらたは5%です。たくさん契約企業があるから良いという訳ではありませんが、その分経験値が多いので、的確なアドバイアスや指摘がもらえるというメリットはあります。
でもコストは高いです。下手すると中堅の倍くらいになることもあります。ただ、今時点では、上場したいという会社が増えすぎていて人手が足りないので、どこも新規契約お断りになっています。強いコネクションがあればなんとかなるのですが、そうでない場合は、中堅以下から選ぶしかありません。

中堅ですが、かなり数が多いので、メジャーなところをピックアップしました。監査会社数でいくと太陽が多いですね。個人的なおすすめは、A&Aパートナーズです。昔、私がCFOをやっていた会社の上場の時に監査をしてくれていたのがA&Aさんです。もともとは青山中央監査法人というビッグ6だった法人が、解散して、いくつかの法人になった1つです。なので、監査のクオリティは高いです。にも関わらず、かなり良心的な価格でやってくれて、所属している会計士も良い方が多くて、会社に寄り添ってくれる監査法人なので、迷っているなら一度A&Aに声をかけてみることをおすすめします。

あとは中小監査法人が山のようにありますが、中小というのは、代表者の会計士が5人ちょっとで作ったものが多いです。監査法人を名乗るには最低5人必要なんです。それでも良い法人というか会計士はいますが、ぶっちゃけ上場審査の観点でいうと、かなり厳しいです。ネームバリューで審査される訳ではありませんが、実績に基づく信頼感があるのと無いのでは、やはり見られ方が異なります。なので、上場を目指すのであれば、中堅以上と契約するのがベターです。会社法で仕方なく監査を受ける会社であれば中小でも全く問題ありません。

契約の流れとしては、初回面談からです。通常は代表社員という偉い人と担当になるであろう会計士の2名によって、何故監査するのか、会社の体制がどうなっているのかなどの質疑応答があります。そこでお互いに良い感触を得られれば、次に予備調査というものに入ります。いわゆる内部統制というのがどこまで効いているのか、監査に耐えうる管理体制なのかを先に審査して、それで問題なければ監査契約という流れです。だいたい3人で3日から5日くらいです。これは無料です。
続いて、予備調査の結果を監査法人から会社に説明する報告会があります。ここで会社は自社に足りないことが何かを客観的に把握して、上場準備のためには何が必要なのかがわかります。その後、監査法人内で審査があってクリアすると、報酬等の提案があり、問題無ければ監査契約締結となります。

契約のポイントとしては、品質面は、周りの経営層や経理系の人に評判を聞いてみるのもいいですし、知り合いの会計士さんに聞いてみるのもいいです。通常は人づての紹介が多いですが、知り合いがいない場合は直接問い合わせしても大丈夫です。
あと、やはり報酬ですよね安かろう悪かろうではダメですが、中堅以上であれば問題は無いと思います。
最後、一番大事と書いていますが、担当者によって監査のクオリティも会社の手間も全然違います。ダメな担当者に当たると、正直会社側の労力で言うと、2,3倍くらいは無駄な時間を取られたりします。特に今20代前半の会計士が担当についた場合は、かなり要注意です。これは僕らの世代では常識なのですが、今の20代前半会計士は試験制度の変更とかもあって、レベルが低いなと思う人が多い傾向にあります。誤解を恐れずに言うと、そもそも会計士って数字とか知識とか以外はダメな人間が多い世界なんですけど、今の世代は知識すら危うい人がいっぱいいます。先月話したことを忘れてまた聞いてきたり、前回指摘した内容と違うこと言ってきたり、ちょっと上に聞いてみないとーと判断できなかったり、審査がうるさくてこれじゃダメなんですよとか言って審査をクリアする方法を考えてくれなかったりと色々言いたいことはありますが、こういう人が担当だと最悪です。もしそういう人が担当者になりそうであれば、早めに変えてもらうことを強くおすすめします。でないと、経理チームは本当に苦労します。

今回は以上となります。


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