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うつ患者が語る「うつの世界」~後編~

はじめに

ツレとツレがうつになった夫婦の夫、うつ兄さんです。
かれこれ2年ほど、うつと付き合っています。
うつになるまでは、ベンチャーで2年間エンジニアとして普通に働いていました。

現在日本では精神疾患を持つ患者数は増加傾向にあり、2017年の患者調査で約420万人いるとされています。この患者数は、4大疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)よりも多い状況です。しかし、何らかの精神疾患ないしメンタルヘルス不調を抱えている潜在的な人数を有病率から試算すると、日本国内だけでも1,386万人にも登ると言われております。
我々は自分たちの経験した辛い「うつ病」に罹る人を一人でも減らしたいと思い、うつに関する情報発信を行っています。

前回に引き続き、皆さんにうつ患者の世界がどういったものなのかをお伝えしようと思います。

前編はこちらをご覧ください。

心が…

うつの世界_4

心の変化は主に3つあります。
①何もないのに悲しい気持ちに襲われる
②自分の無力感などから絶望的な気持ちに襲われる
③何も感じない無の状態になる

どの状態になっても辛いです。
特に①の「何もないのに悲しい気持ちに襲われる」状態になると、何もなくても悲しみに襲われて何も考えられなくなります。
何故悲しいかもわからないのに、悲しくて悲しくて仕方がないのです。
根拠のない悲しみに終わりはありません。
原因がないからこそ終わりが無いとも言えます。

また、③の「何も感じない無の状態になる」と、心が空っぽになり、干からびたような状態になります。
意欲低下にも繋がり、自分が何のために存在しているのかがわからなくなります。
あと、今まで楽しいと思っていたことが楽しめなくなります。
心が空っぽになってしまっているのです。
何かをして楽しもうとして、楽しめない。
その失敗体験が重なり、何をするのも無駄だと諦めの心が大きくなってしまいます。

涙が…

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何もないのに涙が出てきます。
気丈に振る舞っていても、トイレに座ったタイミングなんかに、涙が出てくるのです。
ふとした拍子に涙が出るこの現象は、うつ状態が進行するほど頻度が増えていきます。
最初は理由もなく涙が出ていて、本人は泣いている間ボーッとしています。
私の場合、それが進行していき、最終的には毎日複数回泣くようになり、泣いている間は猛烈な悲しみに襲われました。
理由もなくただただ涙が溢れてくるので、涙が枯れるまで泣くしか対処法は有りませんでした。

ヤツが来た…

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うつ状態でも調子の波はあります。
比較的穏やかな日もあれば、すこぶる調子が悪い日もあります。
調子の波が底を打ったとき、上記で挙げた症状が、複合的に、一気に襲いかかってきます。
私はそれを「ヤツが来た」と呼んでいました。
ヤツが来ると、この世の全てが絶望で覆い尽くされて、生きているのが辛くなります。
何をしていなくても、ただただ辛いのです。
その苦しみから逃れることはできません。
非常時に飲む頓服の薬を飲んでも、ベッドで横になっていても、絶望の淵から這い上がることはできません。
ただただ身を押し殺して、ヤツが過ぎ去るのを待つしか無いのです。
この待っている時間が、永遠に感じられるのです。

ヤツが去った後、安堵していると、またヤツがやってきます。
絶望と安堵の繰り返しの中で、私は疲弊していきました。

まとめ:うつ患者から見える世界

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今まではうつの症状について述べてきましたが、実際にはそれらが複合的に発現します。
そして、うつになると、世界の見え方が変わってしまうのです。
詳しい話はしないのですが、脳の機能が低下している状態になっているので、うつ状態という歪んだフィルターを通してしか世界を見ることができません。
人によってそのフィルターが違うので、世界の見え方は違うことでしょう。
ここでは私のうつ状態だったときの世界の見え方を紹介いたします。

まず、日常風景が眩しく感じます。
比喩などではなく、物理的に眩しいと感じるのです。
太陽の光、街頭、スマホの画面、部屋の電気。
ありとあらゆるものが眩しくて、苦しくなるのです。
そうして暗い場所を好み、心も暗くなっていきます。
夜行性になり、生活リズムが破綻し、自律神経も大いに乱れていきます。

そして、人の視線が怖くなります。
すれ違う人々全員から睨まれているような、そんな感覚に陥ります。
「自分が存在しているだけで、他人に迷惑をかけている」とさえ思いました。
人の目が怖くなり、うつむいてしか外を歩けなくなります。

また、他人の言動全てが悪意に満ちたものに感じられます。
うつ状態のときはネガティブなフィルターを通してしか世界を見れないので、他人の何気ない一言でも、「その発言には裏があるんじゃないか」、「それは上辺だけで、本当はこう思っているんじゃないか」という被害妄想が膨らんでいきます。
世界の全てが悪意に満ちており、その悪意が自分を攻撃している、そんな感覚に支配されていきます。
そして、いつしか他人との距離を取るようになり、孤独になっていきます。

更に、いつもインフルエンザにかかったような状態で生活を強いられます。
身体の倦怠感。頭がボーッとする。身体の痛み。
それらを引き連れながら、上述したネガティブな世界を生き抜かなくてはなりません。

調子が悪いときは、あまりの辛さに生きようという意思が揺らいでしまいます。
うつは終わりが見えない病気です。
特にうつ状態に陥っているとき、その苦しみが永遠に続くような錯覚を覚えます。
生きながらにして拷問をされ続けているような感覚です。
これ以上の苦しみはないと思っても、次の日には更に深い苦しみに苛まれたりします。
どうしてこれほどまで苦しみながら生きなければいけないのか。
自分は欠落品で、日常生活を難なく送れている健康な人にはもう戻れないのではないのか。
自分は壊れてしまって、この先ずっとこの状態が続くのではないか。
そんな考えに取り憑かれ、自殺を考えるようになります。

最後に

本記事ではうつ患者の世界を実体験ベースで紹介させていただきました。
書こうと思えばいくらでもかけます。
うつの苦しみは、実際にうつになった人しかわからないかも知れません。
でも、うつになったことがない人でも、うつの苦しみをなんとなく知ることは可能だと思っています。
上述した世界の見え方で、少しでもうつの苦しみがイメージできることを願っています。
そして、健康な皆さんがうつにならないように、少しでも自分のメンタルについて考え、自分に優しくなれることを願っています。

うつは皆さんが思っているよりも身近な病気です。
「自分は大丈夫」と思っていても、急にやってきます。
不用意に危機感を煽りたくはないのですが、この記事が少しでも自分のメンタルについて考えるきっかけになれば幸いです。

今うつと戦っているひとへ

私はうつの苦しみが理解されない苦しみと孤独感を知っています。
あなたが苦しんでいる症状が、もし1つでも本記事で紹介されていたら、「同じ経験をした人がいるんだ」とホッとできるかも知れません。
私が発達障害やうつで感じた理解されない苦しみや孤独感は、同じ体験をしたことのある人の体験談を読む中で緩和されていました。
あなたは独りではありません。
辛い日々もいつかは終わりが来ると信じて、生きてください。

Twitterでもうつ病でも気持ちやうつヌケの学びを発信しています。まだまだうつと私たちは向き合っています。辛いこともわかります。一緒に今日を迎えられることの幸せもともに分かち合いたいです。


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