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よもやま語らいゼミ開催後記⑮「東大の良いところは?」

 よもやま語らいゼミ(以下「よゼミ」)とは、東大生を対象に、あるテーマについて自由で対等に語り合いをするイベントです。
 3月7日開催の今回は、念願の対面開催(3年ぶり)! 専門や出身地が様々な東大生とともに「東大の良いところとは?」をテーマに語り合いました。

 よゼミでは、最初に話題提供として、サポーターがテーマについて考えたことを簡単に話します。
 まずは、東大生ではない人からの「東大」のイメージ(頭がいい、赤門がある、みんな東大王くらい雑学知ってそう、東大王に会えそう等)をおさらいした上で、「東大の良いところ」を考えるヒントとなる以下の5つの視点が示されました。

①人:教授も学生も色んな人が居るところ
②学問の質:授業内で出来ることの“凄さ”・アカデミズムが“ちゃんと”あるところ
③設備:研究設備や蔵書も十分に揃い、様々な経験の機会が提供されているところ
④建物:内田ゴシックに彩られた文化財の中で学べるところ
⑤敷地・立地:都心のキャンパスは主要駅近郊にあるし、地方のキャンパス・施設は全国各地に用途に応じて適した場所に存在するところ

 これらを踏まえて、最初に話題となったのは「人」でした。色んな地域から来た学生や、多様な考え方・生き方をもつ人と出会うことができた、との意見が出ました。これに対し、別の大学の在籍経験がある学生からは「出会う人の幅が広がることは、東大ならではなのだろうか」との新たな問いが投げられました。大学一般に言えることで、必ずしも「東大の良さ」を意味するわけではないかもしれません。

 すると、地方出身者からは、地元にあった「勉強ができることが優秀さである。近場の有名大学に行くなど、安定を求めるのが良い生き方だ」という規範から抜け出た生き方が東大で印象的だった、という意見があがりました。そうした生き方を選ぶ人が多くいたこと、またそんな人たちに出会えたことが自分たちにとって大きかった、と実体験を話してくれました。学生起業をしたり……。確かに東大にいるとそういった生き方も普通にありだと思えることでも、一歩外から眺めてみると珍しいことかもしれません。ただ多様であるのみならず、その質の高さは、ほかの東京にある大学との違いであるようにも思います。「よゼミ」開催後にネットで調べてみると、大学発ベンチャー数では東大が1位のようですね(経済産業省)。こうした思考や人生を選ぶ人に出会う確率の高さは、東大ならではの良いところだといえるのかもしれません。

 ほかにも、学生だけでなく、様々な考え方や専門分野・経歴をもつ教授が存在する点、幅広い方面に向けた研究のための設備が整っている点を良さとして挙げる人もいました。入学してみると、アカデミアにまだ足を突っ込んでいない人でも知っている、日本のトップレベルの教授から直接学ぶ機会が保障されていました。図書館には多くの蔵書やデータベースがあり、学習を深めるのに役立ちます。本郷キャンパス・駒場キャンパス・柏キャンパスの充実した施設のほかにも、北海道に演習林があるなど、全国に観測所や研究所が点在しているのには驚きました。学問と実社会との結びつきを深めるため、大学は多くの企業や官公庁とコラボレーションし、学生に学びの場を提供しています。

 ひるがえって、ある学生から「自分にとって良いところは、他者にとっても良いところなのか」という問いが投げかけられました。たとえば、安田講堂・総合図書館・工学部4号館・法学部3号館・医学部1号館に代表される、内田祥三氏による建築(「内田ゴシック」と呼ばれています)を想像してください。私は正門をくぐったり、総合図書館で勉強したりしているだけで、分厚い歴史を感じ、歴史に名を遺した各先輩方に恥じぬよう精進せねば、と勉強に身が入ります。一方で、「各階に1カ所くらいしかトイレがないため混んだり、別の階に行く必要があったりする」「どの階段を上がれば教室にたどり着けるのか分からない」「文化財になっているからこそ、丁寧に利用しなければならない」など、不便だと感じている人もいるでしょう。教室がどこにあるか分からず、迷子になる体験は、どのキャンパスの東大生でも一度は覚えがあるのではないでしょうか。今回のよゼミでは、同じものに対する捉え方の違いも体感することができました。そのような違いを否定することなく過ごすことができる点も、東大の良いところのひとつかもしれませんね。

 そういえば、と思い出したように、ある参加者が「東大には校歌がない。大学のマスコットキャラクターがいない」と述べました。実は、東大の運動会には応援歌やマスコットがありますが、大学全体としての公式なものは存在しません(私も入学式で初めて知りました)。参加者間でその理由を考察すると、歌詞やマスコットのような目に見えるモノがなくとも、「東大」という言葉だけで連帯できるからではないか、との意見にまとまりました。東大に入るには様々なタイミングや方法があるけれど、大なり小なり「東大に入るために努力した」ことをもって、東大生や東大の卒業生としての良いpride(誇り)をもつことができるからだ、と収束しました。みなさんはどう考えますか?

 最後に東大の良いところとしてみんなで語り合ったのは「東大生の風習・価値観」でした。高校生のとき、友人がドラマやアイドル・ゲームなどにハマっているのと同じく、ある学生は趣味の一環で「勉強」が好きだったといいます。ただ好きでやっているだけなのに、周囲が「勉強してすごいね」と、させられていることを前提に褒めてくる状態だったことに、本人は嫌気がさしていたようです。しかし、東大に入ると「勉強する人を馬鹿にしない風潮」があったとか。息を吸うように哲学書を読もうと、自分の専門外の本を借りてきて学ぼうと、それが否定されることはなかった、と。もちろん、東大生だからといって、いわゆる“ガリ勉”や“意識高い系”ばかりではないと思います。羽目を外して遊んだりすることも、将来に悩んで停滞したりすることも往々にしてあります。東大には、あなたがどんな在り方であっても、他の学生や教授と接する際に、あなた自身がそのままで肯定される(否定されない)環境があるんでしょうか。

 さて、いかがでしたか?
 ある学生は「人生には様々な通過駅がある。その中で東大は、路線のたくさんある大きな駅となりうる」と述べていました。東大は何かを突き詰める人が多く、これまでもそうであったからこそ、他者から「東大」に対する信頼が生まれた。東大に居た先人たちによって築かれた信頼があるからこそ、現在の東大に優れた人やモノが集まり、国内随一の環境が整っている。その意味において、ひとつの優秀な駅として存在しているということだと思います。
 筆者はこの3月に大学院を修了してここを去りました。大学院から東大に来たので、帰属意識をもっていいものか悩んでいたところでしたが、この企画を通じて、私がこんなにも東大の良いところを知っていたんだと気づき、少しだけ「東大に通っていた者」として胸を張ってもいいのかもしれないと認識を改めました。
 これを読んでいるみなさんは、東大生なのか、それともこれから東大生になる人・なりたい人なのか分かりませんが、みなさんが東大に入って「東大の良いところ」をたくさん知って、それを活かせる生活が送れるように祈っています。

 今回の開催報告はこのあたりで終わりにしたいと思います。参加してくださった方々、ありがとうございました。
 次回の開催情報は各種SNSでお知らせします。お楽しみに! 「よゼミ」は、オンラインでは、チャットのみ参加・聞き専でも、ご飯を食べながらでも大丈夫です。今後は対面の機会も増えるかもしれません。ぜひお気軽にご参加ください。

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