うとQ世話し 「まるで違う」

2021/6/10
(うとQ世話し 「まるで違う」 )
本日、SNSでの投稿記事を見ていて、自分の書き物のお師匠様が小学校4年の時の学校の絵画の時間に「自由画題」で描かれた「松の木の絵」の話をされておられました。
ちょうど自分も同じ小学校4年の時に、学校での話ではないのですが、当時大好きだった絵をもう少し上手くなりたいという思いから親にねだって絵の教室に入れて貰う事にしました。
その入塾の初日、
絵の先生が、お師匠様の時と同じ様に
「何でも良いからスキな絵を描いてご覧」
と課題を出されたので自分は
「濃い灰青色の空をバックに、同じく極めて濃い焦げ茶色に太い黒で縁取りした大木がスケッチブックを所狭し、と埋め尽くす様な」絵を描きました。
それ迄周りから結構褒められ、幼いながらに絵には多少自信があったので、生意気にも
「ちょっと脅かしてやろう」
という気配から描いたのでした。
それを見た絵の先生は、案の定
「君、面白い絵を描くね。この歳でこんな絵を描く子には初めて会ったよ」
と、仰いました。
自分は内心「我が意を得し」とばかりに、心の中でこっそりと得意げに笑みを浮かべました。
ところがその後、絵の先生は
「面白い着想だが、この絵には救いがないね。見る者が暗い気分になってしまう」
そう言った後先生は、パレットの上に明るいレモンイエローの絵の具をチューブからたっぷりとしぼり出し、その真ん中に細めの絵筆を突っ込むと、水で薄めもせず、水彩で描いた絵の黒々とした木の枝の数カ所に、固まるとレモンイエローの絵の具が立体になる程盛り付けました。
ランダムな間隔で、多すぎず少な過ぎず、に。
「こうすると、もっといいかも、な」
葉っぱのない樹木に実がなる筈もなく、かてて加えて、この木はレモンの成る木ではない。
詰まり現実にはあり得ない絵なのです。
それは小学四年の自分のつたない知識でも分かりました。
しかし…
この瞬間に自分は、将来絵描きになる夢を諦めました。
「まるで違う」
そう思ったからでした。

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