見出し画像

自分の「人生の原点」になったフランスでの留学

「私を変えたあの時、あの場所」

~ Vol.58 フランス/パリ政治学院

東京大学の先生方から海外経験談をお聞きし、紹介する本コーナー。

今回は飯田 美樹先生に、大学時代のフランス留学体験についてお伺いしました。取り上げた場所については こちら から。


憧れからフランス留学へ。授業では大きな衝撃と発見が

——学生時代にフランスに行かれた体験についてお伺いします。はじめに渡航のきっかけからお聞かせください。

飯田先生: 小さい頃からフランスに憧れ、中学3年生の時に『ベルサイユのばら』を読んで衝撃を受け、将来フランスに住みたいと強く思いました。高校時代からフランス語の勉強を始め、大学では留学しようと決めていました。


——高校時代から勉強されていたのですね。実際に行かれてどんなことを感じられましたか。

飯田先生: 在学していた大学では当時、交換留学協定先が少なく、大学はリヨンだけでした。リヨンの大学に行けるのは主に仏文科の人で、私は第二希望でどんな学校かもよく知らずにパリ政治学院に行くことになりました。私は商学部で、パリ政治学院は国際政治のエリート養成学校だったため、授業内容が全然わからず苦労しました。当時はフランス語での授業のみで、与えられたテーマに対し、一人30分原稿を見ずに発表するというのがこの学校のメイン課題で本当に大変でした(「2000年以降EUの農業政策はどう変わったか?」「限界効用学派とは?」等)。初めの半年はフランス語がわからないのだと思っていましたが、その後フランス語よりもフランスならではの外交思想があまりに日本と異なっているためにわからないのだと気づいて衝撃的でした。世界のエリートたちと自分との圧倒的な知的格差に大きな衝撃と挫折を味わいました。


留学時の悔しさがその後の活動のバネになる

——言語以上に考え方の点で違いがあったと気づかれたのは「衝撃的」とのことですが、それからどのようにされたのでしょう。

飯田先生: 当時は挫折感がすごかったものの、当時の悔しさをもとに、いつか彼らに負けないようになりたいと思いました。当時の私は日本のことも世界のことも知らず、反論したくても反論できる語学力と中身がありませんでした。その後、日本文化の重要性にも気づいて勉強を重ね、今では富裕層向けの通訳ガイドとして国内外の旅行会社から指名されるようになりました。また、当時の私の挫折は私個人の勉強不足というよりも、数多くの日本人が経験してきた共通経験であり、日本の教育やジャーナリズムに問題があるとのちに理解し、今では外国語の本や新聞を原文で読み、世界への知見を広げる World News Café という会を4年間開催しています。この会の原点はまさに留学時代の悔しさにあります。


「避難所」としてのカフェがその後の研究の対象に

——なるほど、留学時代の悔しさがその後の活躍に結びついたのですね。留学先で他にも印象的だったことがあれば教えてください。

飯田先生: 学校はパリのサン・ジェルマンデプレというカフェ文化の中心地にあり、厳しすぎてついていけない学校の避難所として1日3回くらいカフェに通っていました。その中でカフェは単なる私の趣味だけでなく、実は社会変革の場であり、新しい文化を形作る中心地であったと知り、研究をするようになり、のちに『カフェから時代は創られる』(初版:いなほ書房、2009年|増補改訂版:クルミド出版、2020年)という本を出版するきっかけとなりました。この本はその後、カフェ研究の決定版、参考書のように扱われるようになりました。


したい人は絶対にするべき。人生の原点となった留学

——現地での体験がその後の研究や著作に結びついたとのことですが、他にも海外に行った体験が帰国後も活かされていると感じることがあれば教えてください。

飯田先生: パリのカフェ文化について研究し、カフェの社会的役割について訴えていること。また、World News Café を通じて、世界の情報に原文でダイレクトに触れる重要性を伝えていること。通訳案内士としてヨーロッパの文化と日本文化を比較しながらお客さんに日本について語れること。とにかくこのフランス留学は私の人生の原点となりました。今ではこうしたカフェ文化をもっと世界に増やしたいという想いで活動しています。


——最後になりますが、これから留学や国際交流がしたいと考えている学生へ、メッセージをお願いします。

飯田先生: 留学したい方は絶対にしてください。おすすめはヨーロッパです。なぜなら西洋文化の起源はアメリカではなくヨーロッパにあるからです。

——ありがとうございました!

飯田先生より新刊のお知らせです
飯田先生: 2024年5月、特にフランスやイタリアに多い、街中でリラックスして自分らしく過ごせる場所とオープンカフェの重要性を説いた『インフォーマル・パブリック・ライフ〜人が惹かれる街のルール〜』(ミラツク)が発売され、発売後1週間でアマゾンの政治部門で8位を獲得しました。よかったらぜひお手にとっていただけると嬉しいです。


📚 他の「私を変えたあの時、あの場所」の記事は こちら から!

最後までお読みいただき、ありがとうございました! よろしければ「スキ」を押していただけると励みになります。

次回の記事も引き続き、お読みいただけるとうれしいです^^


リンク

🌎 Global駒場(駒場キャンパスの国際関係総合サイトです)

🌏 GO公式X(Twitter(GOからのお知らせなどを日々更新しています)

🌍 学生留学アドバイザーX(Twitter(留学アドバイスを行っています)

🌏 GO Tutor(留学生向けにチュートリアルを行っています)