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実践 顧客起点マーケティング(N1分析/顧客ピラミッド/心理データの定量化)

1人の顧客分析から得られるアイデアがいかに重要か

これまで10年弱、まだまだ未熟ながらデジタルマーケティングを実務で実践する中で、あたりまえに行っていた、「全体の数値傾向を捉え、その中から傾向と改善策を考察する」といった考え方が覆り、まったく新しい気づきを得られた内容でした。

・量的調査から得られたアイデアよりも1人の顧客から得られたニッチなアイデアを
・ネット調査の具体的活用方法(実際、得られた結果を戦略にまで結び付けられている会社は少ないのでは、、特に小売)
・顧客起点にないマーケティングは、部分最適化の連続で縮小均衡に陥る可能性

また、本書籍はいくつかのフレームワークを提示しつつ、それを現場でどのように活用し運用するかを、実体験や数値を交えて書かれており、そのまま実践で試せるような内容になっている点も特に参考になった点です。

顧客ピラミッドと9セグマップ

本書では、フレームワークとしてこの2つが度々登場します。

よく目にする顧客の状態を表すピラミッドについては、これまで概念では理解していても、それを数値に落とし込んで活用したことがなかったですし、ざっくりとした分析であれば、ネット調査で以下の設問をとることで、外部からでも競合サービス・ブランドの比較分析も可能であることを示しています。

①そのブランドを知っているどうか
②これまでに買ったことがあるかどうか
③どれくらいの頻度で購買しているか

9セグマップに関しては、上記顧客ピラミッドをさらにブランドへの選好度合いで細分化する方法が提示されていました。
上記が定量化されることで、これまで販促活動と結びついていなかったブランディングとの関連性が出てきたことは、まったく新しい手法だと感じました。そしてそれは、以下の設問を追加するだけということです。

④このカテゴリーにおいて、次も使用したいブランドはどれか

N1分析からのアイデア創出

名前の見えない複数の誰かではなく、実在する一人のお客様に会って、ブランドとの初めての出会いからこれまでの経験に丁寧に耳を傾ければ、購買行動とその行動を左右する深層心理の関係が有機的に繋がります。その深い理解と共感を通じて、ビジネスを成長させる「アイデア」が必ず見つかるのです。

顧客ピラミッドや9セグマップを通じて、深掘りする1人の顧客がどのセグメントにあたるのかを理解し、その顧客に耳を傾けることで、よりそのセグメントが上位のセグメントへ移動するためのきっかけや、下位のセグメントがそのセグメントへ押し上げられるアイデアの発見に繋がるということです。

また本書によく出てくる「プロダクトアイデア」(便益と独自性を兼ね備えた新しい価値)は、グループインタビューや全体の傾向からは得られず、アイデアそのものが平均的になりがちであるとしています。

手技手段からの開放

デジタルマーケティングでは、新しい手法や手段が入れ代わり立ち代わり出てきて、日々そこに捕らわれてしまいますが、それに対して警鐘を鳴らされているかのように感じました。

ECサイトへの活用方法を考えてみると、

1. 顧客ピラミッド・9セグマップを活用して、自社・競合分析
 1-1. 自社・競合サイトのネット調査
 1-2. 自社・競合サイトの各セグメント化と、それに対するN1分析
 1-3. 各セグメント毎のアイデア整理・マーケティング戦略企画
 1-4. アイデアをクリエイティブ化して発信
2-1. 顧客ピラミッド・9セグマップを活用して、変化を捉える
 └1.1-4の実行

というイメージだろうか。。
対象サイトの規模が小さければ、競合分析にウェイトが置かれ、顧客ピラミッドのみを使うでしょうし、成熟したサイトでは自社および競合サイト両方に重きをおいた分析からアイデアを創出することになるのではと思います。

その辺りは打数を重ねて調整を行う必要があるのだと思います。
ここまでのノウハウを世の中に公開して頂いた筆者には謝意を表します。

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