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10年スパンで音楽を育てる

めくれる譜面をとっさにおさえる

先週、私が模範演奏をしていると、
ある女の子、立てた譜面が閉じそうになるのをとっさにやってきて
そっと押さえて、演奏が途切れないようにしてくれたのでした。
なかなか、そういう子はいない。
彼女は譜面を見てさっと弾けたりするタイプではありません。
ひとつ、何かができたら二人でハイタッチして祝福しながら進んでいます。
私もできるだけ気長に見守っています。
吸収力に目を見張る子もいて、それはもちろん頼もしくて嬉しいのですが、
こんな子も、たくさんたくさん、います。
でも、自然に音楽が途切れないように譜面をおさえる仕草のできる子。

この子に一生の音楽を教えるとしたら、
どうしますか?
私はいつも自問します。
こんな子にこそ音楽を伝えたい。
こんな仕草を見たら、余計に思います。
諦めさせたくない。

幼稚園からグループレッスンで通っていて、3年生からピアノを始めた男の子がいて、彼は全然じっとできない子でした。乱暴にごちゃごちゃと弾くピアノはなかなか形にもならなかった、この子の特性はでもあるとき、とても静謐なのだと気づいた時があって、それはすこしづつ形になってきて、今彼の音は内面の彼がそのままうつされるようなよい音を奏でます。
その彼が、倍率も高い難関の高校へ入学して私をびっくりさせ、そして何事もないかのように今もレッスンに通ってきています。

10年スパンで音楽の成長を見守ることができるのが音楽教室のよいところ。
それぞれの音楽を構築していくのに今何ができるか、と考えます。
伝わらないのは、スポンジのように吸収してくれない生徒が悪いのではなく、自分にまだまだ足りないところがあるのだと、考えます。
今日できなくても、もう少し待ってみよう。ちゃんと気長につきあおう。

菖蒲

音楽室の前のあやめが咲き始めました。
上の写真はピアノの蓋に映った庭。
日差しがきつくなってきたので、いくつかの鉢物をここの日陰に移動してきています。


愛媛の片田舎でがんばってます。いつかまた、東京やどこかの街でワークショップできる日のために、とっておきます。その日が楽しみです!