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【2デリ・2024夏研修】竹富町長との交流(8/6)

竹富町とは、八重山諸島のうち石垣島の周辺にある島々からなる日本最南の町で、人口が合わせて4,000人程となります。西表島を始めとする極めて豊かな生態系に囲まれ、島々独自の文化も根ざしている極めて固有な価値を有する地域です。

今回は、前泊竹富町長との交流の機会を設けていただき、「一町多島」の竹富町ならではの行政についてお伺いすることができました。


1. 島での暮らしを眺めて

町長との交流は小浜島という人口800名の小さな島にて行われました。島を巡るだけで現れてくる豊かな自然に少年のような弾ける笑顔を浮かべて、改めてこの地域に宿る守り続けたい価値を感じたものでした。

カバマダラ

公民館にて竹富町長との交流会は行われました。前泊町長は2022年に44歳の若さで竹富町長選に当選されてから、現在まで島の人々に寄り添い続けて来られました。今回は子育て世代に焦点を置きつつ、竹富町での行政についてお聞きすることができました。現場には竹富町役場の役員様方もご同席なさっていました。

まずお話して見えてきたのは、島での暮らしの困難な面です。物質的豊かさが当たり前となった都会での生活に対して、島での生活は物流の不整備などが残っています。小浜島にはコンビニもありませんし、店の数も非常に少ないです。東京で知っているようなチェーン店も一つもありません。特に子育て世代の若い島人は、食材や生活必需品を手に入れるために月に2回は石垣島まで船で買い出しに行くなども行くそうです。なお、小浜島に船で運ばれてきた荷物は、島の人たちで協力して下ろします。1人では大変なので、島人で協力して助け合う「ゆいまーる」の精神で暖かなコミュニティーのもと日々を過ごします。
都会から比べると大変なことなのではないかと感じたので、島の若い方に率直に質問してみました。「そのような島での暮らしに苦労するという感覚はありますか?」

答えは、「そうだと思いますけれど、もう慣れちゃったので大丈夫です。」というものでした。島を選んで暮らしている若い方は、便利さを求めてここにいるわけではないのだなとお話を聞いていて強く納得できました。純粋に、この自然豊かな島での、悠久に時の流れる穏やかな毎日が、そして、島人で協力する温かな人情感じる毎日が嬉しいと感じているのだろうと思えました。僕も5歳までを奄美大島、その後を鹿児島の田舎で過ごしたのでその穏やかな精神性に共感できました。

円に椅子を並べて座り、対話をしました

2. 対話からボトムアップの行政を

竹富町には9つの有人島がございますが、島での暮らしや文化についてお聞きしていると、それぞれの島で全く違った文化や問題があるのだということがよく分かってきました。その点で、竹富町での行政はとても特殊なものになります。一つ一つの島の抱える問題に独自に対応していかないといけないので、トップダウン的指示では問題を解消できません。前泊町長は、そういうわけでそれぞれの島民との対話を非常に重視して、実際何を問題に思っているのかを直に聞き、それに応じて対策を講じるという島民からのボトムアップの行政をなさっていました。

具体的には、毎年必ず9つの島全てに赴いて、島民との意見交流会を広く募集して行なっていらっしゃるそうです。なお、衝撃だったのは町長は自身の予定を職員に全て共有し、いつでも自分がどこにいるかわかるようにすることで職員が相談したい時に話に来れるようにしているということでした。そこまで対話を通して町民にも職員にも寄り添った行動が行えるというのは、ボトムアップでの行政が重要となる竹富町では非常に素晴らしいことだと感激しました。

3. 八重山諸島ならではの課題

八重山諸島は日本一豊かな生態系を誇るまさに自然の宝庫です。そのかけがえのない自然環境を守るのも行政の重要な役目となります。例えば、西表島ではイリオモテヤマネコの保護が最大級の重要課題でしょう。ロードキル防止標識、アンダーパス、島民への必死の呼びかけなど長年続けてきた徹底した保全策をしっかり引き継いで更なる万全策を講じる必要があります。
その他にも、島では医療が発達していないため、医療や出産支援などの設備が不十分であるという問題なども抱えています。自然を壊さないために開発を行なっていない島で生じる問題に、自然保護とのバランスを損なわない範囲で如何に取り組んでいくか。島の行政の難しさと重要性を深く実感することができました。

町長や町役場の方々には、お忙しい中お時間いただき大変お世話になりました。ありがとうございました。

前泊町長と並んで

文責:田渕辰樹


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