【読書】『銀行屋と小間使い猫』~誰かに頼るのも大変です~
十年屋シリーズの特別編。十年屋と魔法街の住人たち4。『銀行屋と小間使い猫』です。
本編、十年屋シリーズ6で出てきたかわいらしい子猫のミツ。ミルクティー色の毛並みにはちみつ色の目をした子猫は、めだたく銀行屋のギラトという主人を得ました。
銀行屋のギラトは、はかりの魔法で価値をはかり、ふさわしい値段をつけてお金に換えるのがお仕事です。魔法使いもお金がなくては、日々、生活することができません。ギラトは魔法使いたちにとって、なくてはならない存在です。
このギラトは、見た目はいかつくありますが、かわいいものが大好きな魔法使い。子猫ミツの愛らしさに毎日めろめろです。ギラトのことをダーリンと呼ばせ、あまりにかわいらしいのでミツにお仕事はさせません。毎日、毎日、どんな贈り物をしてミツを喜ばせようかとそればかり考えています。ミツのためなら散財するようです。
一方、ミツは落ち込んでばかりの毎日です。主人ができたらお仕事をするのだとはりきっていたのに、まったくお仕事をさせてもらえないのですから。悩んでいると、いろどり屋の魔法使いテンと使い魔でカメレオンのパレットに声をかけられます。すっかり落ち込んでしまったミツは相談にのってもらうことにしました。
もちろん、ギラトだって悩んでいました。ミツがちっとも喜ばないので、どうすれば良いのかもんもんとしていたのです。知り合いの魔法使い、十年屋に話を聞いてもらうことにしました。
ギラトは今まで、すべて自分でやるようにと教育を受けてきました。誰かに頼るという発想がないんです。しかも何もかも完璧にこなすので、なかなか手が出せません。ミツが落ち込むのは無理もないというありさまです。ギラトは十年屋と使い魔猫のカラシから、ミツに頼っていけるよう助言を受けました。
ギラトは本編ではちょっぴりしか出てきませんが、それでも印象的なキャラクターです。できれば、ギラトのお話を読んでみたいと思っていたので、この本がでたとき喜び勇んで本を手に取りました。
しかも、ギラトとミツのその後です。あまりにも、ギラトがギラトらしく、ミツがミツらしいので思わず笑ってしまいました。
最初は、どこか遠慮している風なミツが、だんだんたくましくなっていく様子も、見ていてほほえましいです。
十年屋シリーズは、本編も楽しみですが、他の魔法使いが出てくる特別編も魅力があります。