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闘病記 (前編)



生きていなければ
味わえない物語がある

いたずらに日々は過ぎない

これからも
生きる時間だけ
わたしは人と出逢う


背中の痛み酷く呼吸が難しくなる。救急車到着。車内にて誰かがノイローゼかもしれないと言う。遠ざかる意識の中、ふざけるなとおもう。目を覚ますと寝台にいる。その後のその夜の記憶はなし。

病室にて。最近気に入りのドラマを観る。私絶対失敗しないので。米倉涼子扮するドクターが言う。同室の女が「よくそんなのみれるねぇ」と呆れ顔。ここは4人部屋。みんな手術を控えている。


同室の女が手術を終える。
深夜、同室の女の容態が急変。



今日は青空だ。
早く外に行きたいな。
病室は3人になった。


今日もドラマを必死に観る
噛みすぎた唇から血が滲む
鉄の味がする
生きていると感じる


手術前、臍の掃除をする。看護師が綿棒にオイルをつけたもので私の臍を拭う。誰かに臍を掃除されるなんて初体験。

目が覚める。激痛。

看護師に今何時かわかりますか?と問われる。
眼鏡もかけていないし窓もないし昼か夜かもわからない。大体、質問されても口に管が入っているから声が出せないのですよ。

ICUは機械音がうるさい。
痛いしうるさくて眠れない。窓はなし。
お日さまが見たい。はやく外に出たい。

ICUを出る。
すぐにインフルエンザにかかる。
ただでさえ免疫力が落ちているのにと先生は困り顔。私は外に出られて御満悦。

インフルエンザの為、隔離される。
広い部屋にひとりきり。本来は個室料金で高額だが今回は本人希望ではなく仕方なしの隔離のため、部屋代は大部屋のまま。ふふん。

床擦れが痛い。自分で寝返りがうてない。
空が青い。早く外に出たい。

日に日に身体中の管が抜けていく。

少し歩く練習。
ドレーンをずるずる引きずる。

嗚呼、冷蔵庫が遠い。
たった数歩の距離なのに
冷蔵庫までがブエノスアイレス。

毎日冷凍みかんを食べている。
味覚が冴えている。
高熱が続いている。
氷がうまい。

ドレーンが2本になった。
インフルエンザ治る。
隔離が解かれ大部屋へ。

初めて入院していることを友人たちに伝える。
実はなかなかの手術を受けたと察した友人たちからお叱りを受ける。もちろん愛情たっぷり。

翌日、友人たちがやってくる。
お見舞いに蜜柑とコーヒーを戴く。
好物ばかり。るんるん。

待合室でワイワイする。
私は喉の管を抜いたばかりで
声が小さく掠れている。

私が入院する病棟は心臓血管外科なのでご高齢の方ばかり。おじいおばあが待合室でワイワイする私たちを目を細めて眺める。

「久しぶりに若い子たちの笑い声を聞いた」
「元気がでるわ」と言われる。



これからも
生きる時間だけ
わたしは人と出逢う

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