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ストレートネック完全版 13秒で美しい首をつくる方法【脂肪首・ぽっこり】

「これを3か月やるだけで、ストレートネックの改善率が85.2%だったっていう論文なんです!」
今回の内容は、ストレートネックの原因と対策がテーマです。

※このnoteでは、整形外科医:歌島大輔が医学的根拠をもとに、わかりやく、かつ実践的な医療健康情報をお届けします。
ときどき出てくる「ふんぞり男」とは、その名の通り、ふんぞり返って態度がデカい患者さんです。

今回の「美しい首をつくる方法」というキーワードは
美容やアンチエイジングに興味がある方にも人気がありますし、首の痛みに悩む方にも関心が高いため、動画の視聴回数が伸びやすい傾向になります。

だからこそ、ご注意ください。
「医学的根拠がない・乏しい」
「非常に論理が飛躍している」
そんな動画がたくさんあります。

インターネットが普及し、YouTubeで動画情報も溢れるようになりました。
誰もが色々な情報に触れられることは素晴らしいことです。
しかし、その中から正確な情報を選び取ることは、想像以上に難しいものです。

私は医師なので、一般の方よりも人の身体について深く学んでおり、多くの論文を読んでいます。
その経験から、現在のYouTubeに流れる医学情報や人体に関する情報発信の不正確さには、驚かされることがありますし、厳しい状況だなとも思います。
(ものすごくオブラートに包んでますので、察していただければと思います・・・)

今回の論文ベースで紹介する内容が、偽医学に惑わされず情報の見分け方を養うことにつながれば良いとも思いますし、実際に効果が期待できる方法を身につけていただければとも思っています。(・・・言っちゃった・・・大丈夫?)

もちろん、私が提供する情報が全て正しいわけではありません。私自身も勉強が足りていないことを常々感じているからこそ、論文をたくさん漁って学び続けており、信頼できる情報を発信するよう努力しています。
それでは、始めていきましょう!

ストレートネックってそもそも何?

実は「ストレートネック」は和製英語です。
私も恥ずかしながら、初めて論文を調べたときは「ストレートネック」で探しました。
しかし英語では、そのような言葉はないため、論文を検索してもほとんどヒットしません。
英語では「text neck」と「loss of lordosis」の2つの表現が存在します。

text neckとloss of lordosis

「text neck」は、YouTubeなどでも一般的に見られるストレートネックを指し、横から見ると下のような姿勢です。

文字通り「テキストを打つときの首」という意味です。スマートフォンなどを使う際、しばしば見られる前かがみの姿勢が原因です。このため、日本で言われる「スマホ首」と似た状態を指します。これは基本的には姿勢の問題です。

もう一方の「loss of lordosis」は、何らかの原因で首の骨の並びが真っ直ぐ(ストレート)になっている状態をいいます。
整形外科医がストレートネックと表現するときは、こちらのことです。

通常、レントゲンに写っている首の骨は、体の前方向に凸のカーブを描いています。
しかし、何らかの原因で真っ直ぐ(ストレート)になっている状態が「loss of lordosis」です。

「lordosis」は前弯(前に凸を描くカーブ)の意味があります。
英語では言葉どおり、それぞれの違いは明確ですが、日本で言われているストレートネックは2つの状態が混ざっています。

脂肪首とは?

首の後ろにぽっこりした脂肪のかたまりのようなものが形成されることを「脂肪首」といいます。
これができる原因は「前方頭位」と呼ばれる頭が前にある状態です。
これは猫背に近く、結果的に首の後ろに脂肪が集まり、ぽっこりしたかたまりのようなものが形成されます。

脂肪首については、論文を調べる気すら起きないので簡単に片付けますが、この前方頭位などの不良姿勢の結果により盛り上がってるように見えているだけです。
間違っても、代謝やリンパが関わるなどという医学的根拠が薄すぎる話には惑わされないでください。

姿勢の問題のストレートネックが「text neck」で、レントゲンで首の骨の配列がストレートになっているのが「loss of lordosis」です。
これらは似ているようで、姿勢の問題と首の骨の配列の問題なので少し違います。
ここをまず整理しておいてください。

ストレートネックは改善しなければいけないの?太るって本当?

そもそも「ストレートネックを改善する必要があるのか?」ということを、医学的に検証してみましょう。

はじめに、猫背によって起こる姿勢の問題としての「ストレートネック」です。
こちらの論文(*1)では、text neckと首の痛みの関係を調べると関連性はなかったとする研究です。

つまり「テキストネック姿勢をとりがちな人は、首の痛みの原因になるのでやめましょう」という指導は、根拠があやしいということです。
ですが、単純に姿勢としての前方頭位である猫背は自信がなさそうに見え、見た目が悪いですよね。
そのような見た目の問題を改善したいというのは、多くの人の共通点かもしれません。

次の「首の骨の配列がストレートになっている状態を改善しないとどうなるのか」については、いくつか研究されています。

この論文(*2)では、ストレートネックの患者さんでは、首の骨の間のクッションである椎間板が傷む傾向にあることが報告されています。
この結果「椎間板ヘルニア」という神経を圧迫してしまう状態や、もしかすると首の痛みとの関連も出てくるかも知れません。
その先までは研究されていませんが、考えられるデメリットの1つです。

こちらの調査(*3)では、40歳以下の首が痛い患者さんにおいて、頚椎の椎間板ヘルニアはストレートネックと密接な関係があることを報告しています。

さらに、こちらの研究(*4)では、首の骨の中を通り脳に繋がる「椎骨動脈」という動脈を調べています。
ストレートネックがあると、椎骨動脈の血管が細くなったり、流れが遅くなったりするという報告がされています。

ここで1つ注意して欲しいことがあります。
よく再生されている動画のなかで、血管の話をされたあと
「だから、代謝やリンパの流れも悪くなって太りやすくなるから注意して!」というようなことをおっしゃっているものがありました。
これは、論理の飛躍です。
この研究のとおり、椎骨動脈の問題があった場合に懸念されるのは、脳の血流が悪くなることです。

確かに「脳梗塞」や「椎骨動脈解離」などは血管の病気などですが、そこまでのリスクは証明されていません。
私の感覚でもそこまでのことはないでしょう。

少なくとも、椎骨動脈の流れが多少悪くなったとしても
「全身の代謝やリンパの流れが悪くなる」
「太りやすくなる」
ということは、医学的に理屈が通らず、当然エビデンスもありません。

実際に別の動画で肩甲骨はがしの検証動画をお出ししましたが、そちらで調べた経験ではエビデンスゼロです。

もし私が調べられてないだけでしたら、ぜひ教えていただきたいです。

痩せるためにレントゲン上のストレートネックを治そうと頑張る必要はないですし、時間の無駄になりかねないので、ご注意いただきたいです。

ただ、首の痛みやヘルニアの防止、脳血流に少しは関係あるかもしれないので、改善させられるならするに越したことはないです。
特に首が痛い、首のヘルニアがあるという人は整形外科医とご相談の上、改善策を考えてみてもいいかもしれません。

ストレートネックを改善させるにはどうしたらいいの?

こちらでも現状よく再生されているいくつかの動画について、警鐘を鳴らさせてください。
よく目にする
「ストレートネック改善の3分間ストレッチ」
のようなタイトルで、再生すると即エクササイズやストレッチが始まる動画は、見ながらできるから便利ですね。
そして何回も見ながら行うので、再生回数も伸びます。

しかし、そのような動画にはご注意ください。
なぜなら、そのエクササイズやストレッチがなぜ効果が出るのか説明がないのは危険だからです。
「ああ、この人の動画は再生回数がすごいし、専門家みたいだから大丈夫だろう」
「効果あるんだろうから、やってみよう!」
と思うかもしれません。

再生回数が多い動画を試しに最初から最後まで見ましたが、ストレートネック改善と謳っておきながら、最初から最後まで肩甲骨を動かす体操だけでした。
首はどうしたという感じです。

肩甲骨も大事ですよ。
しかし「ストレートネックなら最低限首を動かしましょうよ・・」と、思わず動画を見ながら突っ込んでしまいました。

最初にもお伝えしましたが、医師の目から見て医学的根拠がなく、時には完全に間違ってるような情報がたくさんあります。
ですから、なぜ効果があるのか説明をしている動画やこちらのように論文など医学的根拠を示したチャンネルを選んで欲しいと思います。
大切なあなたの身体なので、お節介極まりないのは重々承知でお伝えしています。

ふんぞり男「じゃあ、医学的根拠があるエクササイズってあるのか?」

エビデンスレベルが高いわけではないですが、ちゃんと研究されたエクサイズはあります。
いずれも単なる姿勢としてのストレートネックではなく、レントゲン上のストレートネックを改善させるエクササイズです。

この研究(*5)はシンプルなエクササイズの効果を検証しています。
「等尺性頚椎伸展訓練」というもので、カンタンです。
「頸椎伸展」というのは首を反らすように上を向くという動きですね。

そして「等尺性」というのは、筋肉の尺が変わらないという意味です。
要は動かない筋トレになります。
例えば、両手をついて押しあいっこするトレーニングは大胸筋の等尺性訓練として有名ですね。

等尺性頸椎伸展訓練というのはこちらです。
後頭部で手を組み、その手で後ろから前に押します。
それに抵抗するように首に力を入れます。

もし手を離したらこのようになりますので、急に離さないようにしましょう。

この動作を「10秒」「休む」「10秒」と繰り返すシンプルな訓練です。
これを3ヶ月やるだけで、ストレートネックの改善率が85.2%だった結果がでています。

そのほかのエクササイズを試したい方は、こちらの論文(*6)を紹介します。

レントゲンで角度を測って改善を調べていますが、エクササイズ後1.5〜2か月で改善が見られ、首の痛みも改善したと報告されています。
やり方は次のとおりです。

1)痛みがでない範囲でアゴをうしろに押します。

2)このときにうつむいてしまうことがあるので、少し斜め上を向きます。

3)この状態を3秒キープします。

4)肩甲骨を背骨に寄せるようなイメージで、両肘を後ろに引きます。

5)胸が張り、肩甲骨が背中に寄った状態にし、痛みがでない範囲で首を反らし上を向きます。

6)これを10秒キープします。

この1〜5までの工程13秒を1日10回以上やるというのが、この研究でやられたエクササイズです。

10回以上はなかなか大変ですが、2ヶ月くらいで改善するなら試す価値はありますよね。
ぜひ、お悩みの方はお試しください。
ただし、痛みが出ない範囲で行うようにしましょう。
すでに首の病気や怪我を診断されている人は主治医と相談することも忘れずにお願いします。

まとめ|本日の一言

ストレートネックは2つの意味がある。

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参考論文

(*1)Association Between Text Neck and Neck Pain in Adults
Igor Macedo Tavares Correia et al. Spine (Phila Pa 1976). 2021

(*2)Masashi Miyazaki et al. Spine (Phila Pa 1976). 2008
Kinematic analysis of the relationship between sagittal alignment and disc degeneration in the cervical spine

(*3)Xue-Jun He et al. Zhongguo Gu Shang. 2021
Correlation between cervical curvature and cervical disc bulging in young patients with neck pain

(*4)Mehmet Deniz Bulut et al. Med Sci Monit. 2016
Decreased Vertebral Artery Hemodynamics in Patients with Loss of Cervical Lordosis

(*5)Isometric Exercise for the Cervical Extensors Can Help Restore Physiological Lordosis and Reduce Neck Pain: A Randomized Controlled Trial
Mahmut Alpayci et al. Am J Phys Med Rehabil. 2017 Sep.

(*6)Efficacy of Modified Cervical and Shoulder Retraction Exercise in Patients With Loss of Cervical Lordosis and Neck Pain
Min Yong Lee et al. Ann Rehabil Med. 2020 Jun.

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